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最判昭和31年6月26日

二重譲渡の事情を知りつつ代物弁済で不動産を取得しても横領の共犯ではないとし、抵当権設定で横領既遂とした判例

刑法横領・背任罪共同正犯公訴の提起・起訴便宜主義本試験で 2 問(短答 2・論文 0)

出題:司法H30・司法R2

裁判所
最高裁判所第三小法廷
事件番号
昭和29(あ)1447 横領、たばこ専売法違反
裁判
判決・破棄差戻
判例集
刑集 第10巻6号874頁
参照法条
刑法252条1項,刑法60条,民法177条

判示事項・裁判要旨

裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)

判示事項

一 他に所有権移転後未だその旨の登記を経ざる不動産を、悪意にて代物弁済として所有権を取得する行為と横領罪共犯の成否 二 いわゆる事後処分として横領罪を構成しない一事例

裁判要旨

一 甲がその所有にかかる不動産を第三者に売却し所有権を移転したるも未だその旨の登記を了しない場合において、乙がその情を知りながら甲に対する債権の代物弁済として右不動産の所有権を取得しその旨の登記をしたとしても、乙は適法に所有権を取得したものであるから、甲の不動産横領罪の共犯とはならない。 二 甲がその所有にかかる不動産を第三者に売却し所有権を移転したるも未だその旨の登記を了しないことを奇貨とし、乙に対し右不動産につき抵当権を設定しその旨の登記をするときは横領罪が成立する。従つて、甲がその後更に乙に対し右不動産の所有権を移転してその旨の登記をした場合には前記抵当権設定登記をした時に横領罪が成立し右所有権移転契約後登記の直前に抵当権設定登記を抹消したとしても、更に横領罪を構成するものではない。

判決全文(裁判所ウェブサイト)

解説

事案

被告人Bは、自己所有の本件不動産をCに売却して所有権を移転したが、登記はB名義のまま残っていた。Bに元金2万8000円の債権を有する被告人Aは、その事実をよく知っていた。Bは、不動産所有権がCにあることを知りながら、昭和23年9月6日、この債権の担保としてAのために二番抵当権を設定し、登記をした。その後、昭和24年2月4日に二番抵当権登記を抹消し、翌5日、代物弁済としてAに所有権移転登記をした。

原審(広島高裁)は、次の2点を認めた。

  • Aは事情を知りながらBと共謀して自己に所有権移転登記をしたから、Aにも共謀による横領罪が成立する。
  • Bは抵当権登記の抹消により2月4日に再びCのため占有を始めたので、その後の所有権移転登記はまた横領罪に当たる。

最高裁は職権で調査し、原判決を破棄して差し戻した。

争点

  • 二重譲渡の事情を知りながら代物弁済として不動産の所有権を取得し登記を受けた者に、売主の横領罪の共犯が成立するか
  • 登記未了を奇貨とした抵当権設定登記と、その後の所有権移転登記との関係(横領罪の成立時期と後行行為の可罰性)

判旨

第1点(取得者の共犯性)

  • 結論:Aに横領罪の共犯は成立しない。
  • 理由:Aは代物弁済という民法上の原因によって所有権を適法に取得した。これはBの横領行為とは法律上別個独立の関係にある。
  • 規範:第三者が二重譲渡の情を知りながら所有権移転登記を受けたというだけでは、直ちに横領の共犯とは認められない。

第2点(横領罪の成立時期)

  • 規範:所有権がCにあると知りながら、登記名義を保持する売主が第三者のために抵当権を設定し登記をすれば、それだけで横領罪が成立する。
  • 結論:本件の抵当権登記の抹消は所有権移転登記の準備にすぎない。したがって、抹消後の所有権移転登記の時に改めて横領罪が成立するとした原判決は、刑法の解釈を誤ったものである。

以上により、刑訴法411条1号で原判決を破棄し、差し戻した。

判決文から

「代物弁済という民法上の原因によつて本件不動産所有権を適法に取得したのであつて、被告人Bの横領行為とは法律上別個独立の関係である。」

取得者の共犯否定の中核的理由

「たとい被告人Aが「前記の事実を良く知りながら」右所有権の移転登記を受けたとしても、これをもつて直ちに横領の共犯と認めることはできないのである。」

単なる悪意では共犯にならないとの規範

「被告人Bにおいて不動産所有権がCにあることを知りながら、被告人Aのために二番抵当権を設定することは、それだけで横領罪が成立するものと認めなければならない。」

抵当権設定で横領既遂となる点

「右二番抵当権登記の抹消は所有権移転登記の準備たるに過ぎなかつたことを認めるに十分である。」

抹消で新たな占有が始まるとの構成を否定

この解説は AI が作成しています。判決全文に基づいて書き、別の AI が全文と照合して確認していますが、誤りが残っている可能性があります。 判決文の引用は全文と一字一句照合したものだけを載せています。大事な点は判決全文で確かめてください。