最判昭和31年5月10日
共有者の一人は持分権に基づき、無権利の登記名義人に対し単独で登記全部の抹消を請求できるとした判例
出題:司法H26・司法R1・司法R8・予備H24・予備H26・予備R3・予備R7
- 裁判所
- 最高裁判所第一小法廷
- 事件番号
- 昭和29(オ)4 不動産所有権移転登記抹消登記手続請求
- 裁判
- 判決・棄却
- 判例集
- 民集 第10巻5号487頁
- 参照法条
- 民法252条,民訴法62条
判示事項・裁判要旨
裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)
判示事項
不動産共有者の一人のみによる登記簿上の所有名義人に対する登記抹消請求の許否
裁判要旨
不動産共有者の一人はその持分権に基き、単独で当該不動産につき登記簿上所有名義を有する者に対しその登記の抹消を請求することができる。
解説
事案
被上告人らは、ある不動産を共同相続したと主張していた。この不動産には、Dが実弟である上告人の名義を仮装して所有権移転登記をしていた。共同相続人の一人が単独で、上告人を相手に、この所有権移転登記の全部の抹消登記手続を請求した。
第一審は共同相続の事実を認めなかった。これに対し原審(東京高裁)は、共同相続の主張を認め、仮装登記であるとも認定した。そのうえで、共同相続人の一人が単独で登記全部の抹消を求めることができるとして、請求を認めた。
上告人は次の点を争って上告した。
- 共有者の一人による単独請求は許されない。
- 審理不尽がある。
- 民法708条(不法原因給付)の解釈を誤っている。
争点
- 不動産の共有者の一人が、登記簿上の所有名義人(無権利者)に対し、単独で登記の抹消を請求できるか
- 単独で請求できる場合、抹消の範囲は登記の全部に及ぶか
- その法的性質(持分権に基づく妨害排除請求・保存行為)
判旨
上告棄却。
規範:不動産の共有者の一人が、その持分に基づき、登記簿上の所有名義人に対して登記の抹消を求めることは、妨害排除の請求にほかならず、いわゆる保存行為(民法252条、現252条5項)に属する。
したがって、共有者(共同相続人)の一人は、単独で、当該不動産についての所有権移転登記の全部の抹消を請求できる。
答案ではこう書ける:「共有者の一人は、持分権に基づく妨害排除請求として、また保存行為として、単独で無権利者名義の登記全部の抹消を請求できる(最判昭和31年5月10日)」。
なお、上告人の不法原因給付(民法708条)の主張は、原審で主張されていなかったとして排斥された。
判決文から
「ある不動産の共有権者の一人がその持分に基ずき当該不動産につき登記簿上所有名義者たるものに対してその登記の抹消を求めることは、妨害排除の請求に外ならずいわゆる保存行為に属するものというべく」
持分権に基づく妨害排除=保存行為という性質決定
「共同相続人の一人が単独で本件不動産に対する所有権移転登記の全部の抹消を求めうる旨の原判示は正当であると認められる」
単独で「全部」の抹消を請求できるとした結論
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