最判昭和30年10月20日
名義書換未了でも会社側から譲受人を株主と扱える。決議取消訴訟では結果に影響がない違法について請求を棄却できる。
出題:司法H24・司法H25
- 裁判所
- 最高裁判所第一小法廷
- 事件番号
- 昭和28(オ)1430 株主総会決議取消請求
- 裁判
- 判決・棄却
- 判例集
- 民集 第9巻11号1657頁
- 参照法条
- 商法旧206条,商法247条,商法旧251条
判示事項・裁判要旨
裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)
判示事項
一 株式の譲渡につき名義書換が未了の場合会社はその譲渡を認めることができるか 二 株主総会決議取消の訴と裁判所の裁量権
裁判要旨
一 商法旧第二〇六条(昭和二五年法律第一六七号による改正前のもの)の施行当時、記名株式の譲渡があつたにかかわらず株主名簿の名義書換が会社の都合でおくれていても、会社が右譲渡を認め譲受人を株主として取り扱うことは妨げないと解するのが相当である。 二 株主総会決議取消の訴において、当該決議に取消の原因となるべき違法の点があつても、その違法が決議の結果に異動を及ぼすと推測されるような事情が認められない場合には、裁判所は原告の請求を棄却するべきもの解するのが相当である。
解説
事案
被上告会社の株主総会決議について、決議取消しの訴え(商法247条)が提起された事案である。
- 訴外Dは、昭和18年12月1日に訴外Eから被上告会社の株式10株を譲り受け、その頃会社に名義書換を請求した。しかし、株主名簿への記載はされていなかった。
- 会社はDを株主と認めて株主総会の招集通知を発し、Dは総会に出頭した。上告人は、会社が株主名簿の記載によりDを500株の株主と認めて通知した、とも主張した。
- 上告人は、上記のほか、決議事項に特別の利害関係を有する株主の株式を表決から除外しなかったこと、株主でない者に招集通知を発したことなどの違法を主張した。
- 原審は、Dは少なくとも10株の株主であったと認めた。そのうえで、仮に違法があったとしても、それがなければ決議の結果が違ったかもしれないと推測される事情は存在しないと認定し、請求を退けた。上告人が上告した。
争点
- 株主名簿の名義書換が未了の株式譲受人を、会社の側から株主として取り扱うことができるか(商法旧206条1項)
- 決議取消事由となる違法があっても、裁判所は取消請求を棄却できるか(商法旧251条削除後の裁量棄却の可否)
判旨
上告棄却。
- 名義書換未了の譲受人の扱い:記名株式の移転は、株主名簿に記載しなければ会社に対抗できない。しかし、会社の側から移転を主張することは妨げられない。したがって、名義書換が会社の何らかの都合で遅れていても、会社は譲渡を認めて譲受人を株主として扱うことができる。本件で、会社がDを株主と認めて招集通知を発し、Dが出頭したこと自体は違法ではない。
- 裁量棄却:商法旧251条の削除後も、裁判所は合理的な判断の下で取消請求を認容するか否かを決めることができる。株主総会の招集手続や決議方法が違法であっても、議事の経過その他から判断して、その違法が決議の結果に異動を及ぼすと推測される事情が認められない場合には、請求を棄却すべきである。
判決文から
「記名株式の移転は、取得者の氏名及び住所を株主名簿に記載しなければ会社には対抗できないが、会社からは右移転のあつたことを主張することは妨げない法意と解するを相当とする。」
名義書換は会社に対する対抗要件にとどまるという規範
「会社側においては、株主名簿の書換が何らかの都合でおくれていても、右株式の譲渡を認めて譲受人Dを株主として取り扱うことを妨げるものではない。」
会社側から書換未了者を株主と扱える旨の結論
「裁判所が合理的な判断の下に右取消請求を認容するか否かを決しうることまでも否定しようとする趣旨と解すべきではなく」
旧251条削除後も裁量棄却が残ることの根拠
「株主総会における議事の経過その他から判断して、その違法が決議の結果に異動を及ぼすと推測されるような事情の存在は認められない」
裁量棄却の判断基準(結果への影響)
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