最判昭和29年1月22日
自創法15条1項2号による宅地買収は、売渡しを受けるのが特定の耕作者でも「公共のため」に当たり、憲法29条3項に反しない。
出題:司法H23・司法R2
- 裁判所
- 最高裁判所第二小法廷
- 事件番号
- 昭和27(オ)679 宅地買収計画取消請求
- 裁判
- 判決・棄却
- 判例集
- 民集 第8巻1号225頁
- 参照法条
- 自作農創設特別措置法15条1項,憲法29条3項
判示事項・裁判要旨
裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)
判示事項
自作農創設特別措置法第一五条第一項第二号による宅地の買収と憲法第二九条第三項
裁判要旨
自作農創設特別措置法第一五条第一項第二号による宅地の買収は、公共のためであつて、憲法第二九条第三項に違反しない。
解説
事案
本件宅地について、買収申請人E・F・Gは賃借権を、Hは使用貸借による権利を持っていた。4名はいずれもこの宅地上に住家・納屋・牛小屋等を建てていた。そして、住家から20間ないし8丁余の距離にある、自作農創設特別措置法(自創法)によって解放された農地を耕作していた。
本件宅地は自創法15条1項2号により買収されることになり、宅地所有者(上告人)は宅地買収計画の取消しを求めて訴えた。原審(大阪高裁)は、本件宅地は農地経営上必要なものとして買収適格を備えるとして、買収を適法とした。
上告人は次の2点を主張して上告した。
- 原審の買収適格の判断は、先行の最高裁判例を誤解し、自創法15条1項2号の解釈を誤っている。
- 本件宅地は耕作者4名が住家の敷地等に使っているので、買収しても結局この4名に売り渡すほかない。買収の目的は特定個人の利益を図ることにあり、公共性がないから憲法29条3項に違反する。
争点
- 耕作者が住家等の敷地として使う宅地が、自創法15条1項2号の買収適格を備えるか
- 買収した宅地等が特定の私人(買収申請人)に売り渡される場合でも、憲法29条3項の「公共のために用ひる」に当たるか
判旨
上告棄却(裁判官全員一致)。
結論:自創法15条1項2号による宅地の買収は公共のためであり、憲法29条3項に違反しない。
規範:
- 自創法による農地改革は、同法1条が目的として掲げるとおり、公共の福祉のための必要に基づくものである。その目的は、耕作者の地位を安定させ、その労働の成果を公正に享受させるため自作農を急速かつ広く創設し、土地の農業上の利用を増進して、農業生産力の発展と農村の民主的傾向の促進を図ることにある。
- したがって、買収された農地・宅地・建物等が買収申請人である特定の者に売り渡されても、それは法の運用による当然の結果にすぎない。
- その一事をもって買収の公共性は否定されない。
答案用の形:収用・買収の直接の受益者が特定の私人であっても、制度全体が公共の福祉のための目的に基づくものであれば、「公共のために用ひる」に当たる。
買収適格について:本件宅地は農地経営上必要なものとして買収適格を備えるとした原審判断を正当とした。
判決文から
「耕作者の地位を安定し、その労働の成果を公正に享受させるため自作農を急速且つ広汎に創設し、又、土地の農業上の利用を増進し」
自創法の目的=公共の福祉の内容を示す部分
「自創法により買収された農地、宅地、建物等が買収申請人である特定の者に売渡されるとしても、それは農地改革を目的とする公共の福祉の為の必要に基いて制定された自創法の運用による当然の結果に外ならない」
特定私人の受益でも公共性を失わないとする核心
「この事象のみを捉えて本件買収の公共性を否定する論旨は自創法の目的を正解しないに出た独自の見解であつて採用できない」
受益者が特定人という一事で公共性は否定されない
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