最判昭和28年1月30日
業務妨害罪の「妨害」に結果の発生は不要とし、「威力」は客観的に自由意思を制圧するに足る勢力で足りるとした判例
出題:司法R4・予備R4・予備R8
- 裁判所
- 最高裁判所第二小法廷
- 事件番号
- 昭和25(れ)1864 住居侵入、業務妨害
- 裁判
- 判決・破棄差戻
- 判例集
- 刑集 第7巻1号128頁
- 参照法条
- 刑法234条,刑法233条
判示事項・裁判要旨
裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)
判示事項
一 刑法第二三四条にいう「業務ヲ妨害シタル」ことの意義 二 同条にいう「威力」の意義
裁判要旨
一 刑法第二三四条の業務妨害罪にいう「業務ヲ妨害シタル」こととは、具体的な個々の現実に執行している業務の執行を妨害する行為のみならず、被害者の当該業務における地位にかんがみ、その遂行すべき業務の経営を阻害するにたる一切の行為を指称する。 二 同条にいう「威力」とは、犯人の威勢、人数および四囲の状勢よりみて被害者の自由意思を制圧するにたる勢力を指称する。
解説
事案
被告人Bら6名は「H労働組合退職者同盟」を結成していた。被告人らは会社の工場事務所に立ち入り、2階の専務室に入った。工場長Kは経理課長L・専務秘書Nらとともに最初の侵入を極力阻止したが、効果がなかった。Kはやむなく会見を決意して着席し、入室者の一団と対席して、彼らが立ち去るまでその質問に応じた。
第1審は、建造物侵入罪と業務妨害罪をいずれも有罪とし、両罪を牽連犯とした。
原審(名古屋高裁金沢支部)の判断は次のとおりである。
- Bら6名:建造物侵入罪を有罪とし、業務妨害罪は無罪とした。
- Aら3名:建造物侵入罪も無罪とした。
- 業務妨害罪を否定した理由は2つである。第一に、Kが専務室で現実に執務していたか、それを被告人らが認識していたかだけを判断した。第二に、着席後のKの立場は自らの自由な意思決定に基づくものであり、団体側の態度も普通の交渉とほとんど変わらなかったとして、「威力」に当たらないとした。
弁護人と検事の双方が上告した。
争点
- 刑法234条の「業務を妨害した」というために、現実に業務妨害の結果が発生したことを要するか
- 妨害の対象となる「業務」は、現実に執行中の業務に限られるか
- 「威力」の意義と、その有無を被害者の主観(現実に意思を制圧されたか)で判断すべきか
- 労働団体の団体行動として行われた建造物侵入等が、正当行為として免責されるか
判旨
原判決を全部破棄し、名古屋高裁に差し戻した。
- 妨害:業務妨害罪にいう業務の「妨害」は、現に業務妨害の結果が発生したことを必要としない。業務を妨害するに足る行為があれば足りる。
- 業務:具体的・個々の現実に執行している業務に限られない。広く被害者の当該業務における地位に照らし、その任として遂行すべき業務も含む。
- 威力:犯人の威勢、人数及び四囲の状勢からみて、被害者の自由意思を制圧するに足る犯人側の勢力をいう。この勢力は客観的にみて被害者の自由意思を制圧するに足るものであればよく、現実に被害者が自由意思を制圧されたことは要しない。威力の有無は被害者の主観的条件によって左右されない。
- 団体行動による免責:憲法28条の団体行動権も無制限ではない。本件の建造物侵入は正当な団体交渉・団体行動の範囲を逸脱しており、刑事免責は認められない。自救行為・正当防衛・緊急避難も成立しない。
判決文から
「業務の「妨害」とは現に業務妨害の結果の発生を必要とせず、業務を妨害するに足る行為あるをもつて足るものであり」
妨害結果の発生は不要とした部分
「「業務」とは具体的個々の現実に執行している業務のみに止まらず、広く被害者の当該業務における地位に鑑みその任として遂行すべき業務をも指称するものと解するを相当とするのである」
業務を地位に基づく任務まで広げた部分
「同条の「威力」とは犯人の威勢、人数及び四囲の状勢よりみて、被害者の自由意思を制圧するに足る犯人側の勢力と解するを相当とするもの」
威力の定義(答案の規範)
「右勢力は客観的にみて被害者の自由意思を制圧するに足るものであればよいのであつて、現実に被害者が自由意思を制圧されたことを要するものではないと解すベきものである」
客観的判断で足り、現実の制圧は不要
「業務妨害罪の威力の有無は被害者の主観的条件の如何によつて左右されるべきものではないといわなければならないのである」
被害者の主観を基準にしないことの明示
この解説は AI が作成しています。判決全文に基づいて書き、別の AI が全文と照合して確認していますが、誤りが残っている可能性があります。 判決文の引用は全文と一字一句照合したものだけを載せています。大事な点は判決全文で確かめてください。
