最判昭和27年12月25日
非公務員が虚偽の申立てで情を知らない公務員に虚偽の公文書を作らせても、157条の場合を除き156条の間接正犯は成立しない
出題:司法H28・司法R3・司法R5・予備R7
- 裁判所
- 最高裁判所第一小法廷
- 事件番号
- 昭和24(れ)1496 虚偽公文書作成、同行使、詐欺
- 裁判
- 判決・破棄自判
- 判例集
- 刑集 第6巻12号1387頁
- 参照法条
- 旧刑断法12条,旧刑断法60条1項2項,旧刑断法410条1号,裁判所法47条,刑法155条,刑法156条,刑法157条,刑法158条,刑法246条,刑法7条
判示事項・裁判要旨
裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)
判示事項
一 その裁判所の事件を審判する権限のない裁判官を構成してした公判手続及び公判調書の効力と旧刑訴法第一二条の決意 二 公務員の身分を有しない者が虚偽の申立をなし情を知らない公務員をして虚偽の証明書を作成させた行為と刑法第一五六条の間接正犯 三 公務員の身分を有しない者が虚偽の申立をなし情を知らない公務員をして作成させた虚偽の証明書を行使した行為と虚偽公文書行使罪の成否 四 係員を欺罔して旅券の下附を受ける行為と詐欺罪の成否 五 アメリカ領事館員と刑法にいわゆる「公務員」
裁判要旨
一 その裁判所の事件を審判する権限のない裁判官がその裁判所を構成してした公判手段は、無効であつてその公判調書を事実認定の資料とすることは違法である。旧刑訴法第一二条には「訴訟手続は管轄違ひの理由に因り其の効力を後はず」と規定されているのであるがこの規定は本来裁判権を有する裁判所に事件を分配することを目的とする事物及び土地の管轄に関する規定の違背があつても、唯それだけの事由では訴訟手続を無効たらしめるものでないこと明らかにしたに過ぎないものであつて管轄権ある裁判所を構成する裁判官その人がその裁判所に繋属ずる事件を審判する権限のなかつたような場合にまで拡張解釈して準用すべきものではないのである。 二 公務員の身分を有しない者が、虚偽の内容を記載した証明願を村役場の係員に提出し、情を知らない同係員をして村長名義の虚偽の証明書を作成させた行為は、刑法第一五六条の間接正犯として処罰すべきではない。 三 公務員の自分を有しない者が虚偽の内容を記載した証明願を村役場の係員に提出し、情を知らない同係員をして作成させた村長名義の虚偽の証明書を行使しても、虚偽公文書行使罪にあたらない。 四 係員を欺罔して旅券の下附を受ける行為は詐欺罪にあたらない。 五 アメリカ領事館員は刑法にいわゆる「公務員」にあたらない。
解説
事案
被告人(公務員の身分なし)は、昭和22年8月25日、本籍地の大原村役場で、日本で兵役に服したことがない旨と選挙で投票したことがない旨の、虚偽の内容を記載した証明願2通を係員Aに提出した。情を知らないAは、村長Bから委任を受けていたこの種の証明書発行の職務として、2通に村長B名義の証明文の奥書をし、村長職印を押した。こうして内容が事実に相違ない旨を証明する村長名義の虚偽の証明書2通が作成された。被告人は同年9月19日、米国領事館で同館係員に対し、これらを真実の内容であるかのように装い、旅券下附申請書と一括して提出した。旅券の下付を受けようとしたが、占領軍官憲の調査で虚偽が発覚し、目的を遂げなかった。原判決は、刑法156条・155条(虚偽公文書作成)、158条1項(同行使)、246条1項・250条(詐欺未遂)を適用して有罪とした。最高裁は職権で原判決を破棄し、無罪を言い渡した。
争点
- 公務員の身分のない者が、虚偽の申立てにより情を知らない公務員に虚偽の証明書を作成させた行為に、刑法156条の間接正犯が成立するか
- そのようにして作成させた証明書を行使した行為に、虚偽公文書行使罪(158条1項)が成立するか
- 係員を欺いて旅券の下付を受ける行為に、詐欺罪(246条)が成立するか
- アメリカ領事館員は刑法7条・157条2項にいう「公務員」に当たるか
- (手続)事件を審判する権限のない裁判官が構成した公判手続・公判調書の効力
判旨
原判決破棄、被告人無罪。
- 規範(156条の間接正犯):刑法は無形偽造を公文書に限って処罰し、非公務員の虚偽申立て類型は157条の場合に限り、しかも156条より著しく軽く処罰している。したがって、公務員でない者が虚偽公文書作成の間接正犯となる場合は、157条に当たるときのほかは処罰しない趣旨と解する。本件証明書は、権利義務に関する公正証書の原本、免状、鑑札、旅券のいずれにも当たらないので、不可罰である。
- 行使罪:作成された証明書は「虚偽の公文書」とはいえないから、行使しても158条1項(156条・155条1項)の罪に当たらない。
- 旅券の下付:免状・鑑札・旅券の下付を受ける行為は、詐欺罪に問うべきではなく、157条2項だけを適用すべきである。
- 公務員性:米国領事館員は刑法7条、したがって157条2項にいう公務員ではない。よって157条2項の未遂罪にも当たらない。
判決文から
「公務員でない者が虚偽の公文書偽造の間接正犯であるときは同法一五七条の場合の外これを処罰しない趣旨と解するのを相当とする。」
非公務員による156条間接正犯を否定する規範
「前記各証明書は虚偽の公文書とはいえないから」
作成罪の否定が行使罪の否定に連動する点
「免状、鑑札、旅券の下付を受ける行為のごときものは、刑法二四六条の詐欺罪に問擬すべきではなく、右刑法一五七条二項だけを適用すべきものと解するを相当とする。」
旅券等の下付について詐欺罪を排除した部分
「判示の米国領事館員のごときは、刑法七条、従つて同法一五七条二項にいわゆる公務員とはいえない」
外国公館職員は刑法上の公務員でない
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