SaySayLaw

最判昭和26年7月13日

乗り捨て目的で他人の船を漕ぎ出した事案で、不正領得の意思の定義を示し、永久的保持の意思は不要とした判例

刑法窃盗罪本試験で 3 問(短答 3・論文 0)

出題:司法H25・司法H29・司法R8

裁判所
最高裁判所第二小法廷
事件番号
昭和26(れ)347 強盗傷人、窃盗
裁判
判決・棄却
判例集
刑集 第5巻8号1437頁
参照法条
刑法235条,刑法236条

判示事項・裁判要旨

裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)

判示事項

一 窃盗罪の成立に必要な不正領得の意思 二 窃盗犯人に不正領得の意思が認められる一事例 三 強盗傷人と窃盗の二罪を構成する例

裁判要旨

一 そもそも、刑法上窃盗罪の成立に必要な不法領得の意思とは、権利者を排除し他人の物を自己の所有物と同様にその経済的用法に従いこれを利用し又は処分する意思をいうのであつて、永久的にその物の経済的利益を保持する意思であることを必要としないのであるから、被告人等が対岸に該船を乗り捨てる意思で前記肥料船に対するAの所持を奪つた以上、一時的にも該船の権利を排除し終局的に自ら該船に対する完全な支配を取得して所有者と同様の実を挙げる意思即ち右にいわゆる不正領得の意思がなかつたという訳にはゆかない。 二 被告人等が本件強盗傷人の罪を犯す当時には未だ本件窃盗を犯す意思は全然なく、右強盗傷人が既遂となり逃走の途中偶然の機会において新たに本件窃盗の犯意を生じたものであることは原判決挙示の証拠上疑いのないところであるばかりでなく、それらの行為自体からみても、はた又被害法益の点からみても、本件強盗傷人と窃盗の二罪を構成し、所論のように単一の犯罪を構成するものと認めるべきでないことは多言を要しないところである。

判決全文(裁判所ウェブサイト)

解説

事案

窃盗犯人である被告人Bは、相被告人Cと共に、逮捕を免れるためDに暴行を加え、全治約5日間の打撲症兼擦過症を負わせた。原審はこれに刑法240条前段(238条)・60条を適用し、強盗傷人罪とした。

その後、被告人らは追跡され、いったん陸に上がって逃走した。さらに陸地から船で逃げようと企て、判示の場所に繋留してあったA所有の肥料船1艘に乗り込み、岸から約半丁ほどの海上まで漕ぎ出した。被告人らは、船が対岸に着けばその場に乗り捨てるつもりであった。

原審は、強盗傷人罪と窃盗罪の二罪の成立を認め、併合罪(刑法45条前段)として処断した。弁護人は上告し、①窃盗罪に必要な不正領得の意思がない、②強盗傷人と窃盗は短時間内に相前後して行われたもので単一の犯罪である、などと主張した。

争点

  • 窃盗罪(刑法235条)の成立に必要な不正領得の意思の内容
  • 逃走のため他人の船を対岸で乗り捨てる意思で漕ぎ出した場合に不正領得の意思が認められるか
  • 強盗傷人罪の既遂後、逃走中に新たに生じた犯意による窃盗は、強盗傷人と別罪(併合罪)となるか

判旨

上告棄却。

規範:窃盗罪の成立に必要な不正領得の意思とは、権利者を排除し、他人の物を自己の所有物と同様にその経済的用法に従いこれを利用し又は処分する意思をいう。永久的にその物の経済的利益を保持する意思であることは必要としない。

あてはめ:被告人らは、対岸で乗り捨てる意思で肥料船に対するAの所持を奪った。そうである以上、一時的にも権利者を排除し、終局的に自ら船に対する完全な支配を取得して所有者と同様の実を挙げる意思、すなわち不正領得の意思がなかったとはいえない。

罪数:強盗傷人の当時には窃盗の意思は全くなく、強盗傷人が既遂となった後、逃走の途中に偶然の機会から新たに窃盗の犯意を生じた。行為自体からみても被害法益の点からみても、強盗傷人と窃盗の二罪が成立し、両者は併合罪となる。

判決文から

「刑法上窃盗罪の成立に必要な不正領得の意思とは、権利者を排除し他人の物を自己の所有物と同様にその経済的用法に従いこれを利用し又は処分する意思をいうのであつて、永久的にその物の経済的利益を保持する意思であることを必要としない」

不正領得の意思の定義と、永久的保持意思が不要であること

「被告人等が対岸に該船を乗り捨てる意思で前記肥料船に対するAの所持を奪つた以上、一時的にも該船の権利者を排除し終局的に自ら該船に対する完全な支配を取得して所有者と同様の実を挙げる意思」

乗り捨て目的でも不正領得の意思を肯定したあてはめ

「たとえ短時間であつても、被告人等が右肥料船に対するAの所持を侵し該船を自己の所持に移したものであることは明白」

短時間の占有移転でも窃取にあたるとした点

「被告人等が本件強盗傷人の罪を犯す当時には未だ本件窃盗罪を犯す意思は全然なく、右強盗傷人罪が既遂となり逃走の途中偶然の機会において新たに本件窃盗の犯意を生じたもの」

新たな犯意の発生を理由に二罪とした罪数判断の根拠

この解説は AI が作成しています。判決全文に基づいて書き、別の AI が全文と照合して確認していますが、誤りが残っている可能性があります。 判決文の引用は全文と一字一句照合したものだけを載せています。大事な点は判決全文で確かめてください。