最判昭和26年1月30日
違法の認識は犯意成立の要件ではない。公布と同時に施行された法令の不知も犯罪の成立を妨げない。
出題:司法H26・司法R8
- 裁判所
- 最高裁判所第三小法廷
- 事件番号
- 昭和24(れ)2006 麻薬取締法違反、麻薬取締規則違反
- 裁判
- 判決・棄却
- 判例集
- 刑集 第5巻2号374頁
- 参照法条
- 刑法38條,麻薬取締規則(昭和21年6月19日厚生省令25号)42條
判示事項・裁判要旨
裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)
判示事項
犯罪の成立と違法の認識
裁判要旨
新憲法施行後においても当裁判所は、有毒飲食物等取締令違反被告事件につき、犯罪の構成に必要な事実の認識に欠くるところがなければその事実が法律上禁ぜられていることを知らなかつたとしても、犯意の成立を妨げるものでない旨説示して従前の判例を維持したのである(昭和二三年(れ)第二〇二号同年七月一四日大法廷判決)。そしてその後当裁判所は右判例の趣旨に従つて判決をしているのであつて(昭和二四年(れ)第三一六五号同年二五年四月一八日第三小法廷判決、昭和二四年新(れ)第一五〇号同二五年六月六日第三小法廷判決、昭和二四年(れ)二二七六号同二五年一一月二八日第三小法廷判決昭和二五年(れ)第一三三九号同年一二月二六日第三小法廷判決)、今にわかに右判例を変更しなければならない理由を見出すことはできない。刑罰法令が公布と同時に施行されてその法令に規定された行為の違法を認識する暇がなかつたとしても犯罪の成立を妨げるものではない。
解説
事案
被告人は、麻薬取締法違反・麻薬取締規則違反で起訴された。麻薬取締規則(昭和21年6月19日厚生省令25号)は、昭和21年6月19日に公布され、同日から施行されていた。被告人は、同日以降に判示の行為をしたとして、原審で同規則を適用されて処断された。
弁護人は上告し、次のように主張した。
- 犯意の成立には違法の認識が必要であり、被告人は規則の公布・施行を知らなかった。それなのに罪とならない行為を罰した原判決は、憲法31条に違反し、擬律錯誤・理由不備の違法がある。
- 慢性麻薬中毒の被告人について、鑑定をせずに心神喪失・心神耗弱を否定したのは違法である。
- 注射筒・注射針の没収について、法定要件と所有関係の認定理由の説明がない。
争点
- 違法の認識(違法性の意識)は犯意(故意)成立の要件か
- 刑罰法令が公布と同時に施行され、違法を認識する暇がなかった場合でも犯罪は成立するか
- 被告人の責任能力の判断に専門家の鑑定は必須か
- 没収の要件・所有関係について判決で理由を説明する必要があるか
判旨
上告棄却。
- 規範:違法の認識は犯意成立の要件ではない。犯罪の構成に必要な事実の認識に欠けるところがなければ、その事実が法律上禁じられていることを知らなかったとしても、犯意の成立は妨げられない。この理は新憲法下の解釈としても変わらない。
- あてはめ:刑罰法令が公布と同時に施行され、規定された行為の違法を認識する暇がなかったとしても、犯罪の成立は妨げられない。被告人が麻薬取締規則の公布・施行を知らなかったとしても、法令の不知は犯意の成立を妨げない。したがって、同規則を適用した原判決は正当である。
- 責任能力:精神状態の判断に常に鑑定が必要なわけではなく、他の証拠で認定してよい。慢性麻薬中毒患者でも、常に心神喪失・耗弱となるわけではない。
- 没収:刑法19条の要件該当性や所有関係を、証拠によって認めた理由を判決で説明する必要はない。
判決文から
「犯罪の構成に必要な事実の認識に欠くるところがなければその事実が法律上禁ぜられていることを知らなかつたとしても、犯意の成立を妨げるものでない」
違法性の意識不要説の基本規範
「違法の認識は犯意成立の要件ではないのであるから、刑罰法令が公布と同時に施行されてその法令に規定された行爲の違法を認識する暇がなかつたとしても犯罪の成立を妨げるものではない。」
即日施行で認識の暇がなくても犯罪成立とした点
「かかる法令の不知は未だ犯意の成立を妨げるものではない」
法令の不知と故意の関係についての結論
「裁判所が被告人の精神状態を判断するに際しては、必ずしも常に特別の知識経験ある者の鑑定を必要とせず、他の証拠によつてこれを認定しても差支えないものである。」
責任能力判断に鑑定は必須でない
この解説は AI が作成しています。判決全文に基づいて書き、別の AI が全文と照合して確認していますが、誤りが残っている可能性があります。 判決文の引用は全文と一字一句照合したものだけを載せています。大事な点は判決全文で確かめてください。
