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脳梅毒事件

最判昭和25年3月31日

被害者の脳梅毒という特殊事情を行為者が知らず予測もできなくても、暴行と相まって死亡させた以上、因果関係を肯定した判例

刑法構成要件該当性・因果関係生命・身体に対する罪本試験で 5 問(短答 5・論文 0)

出題:司法H27・司法R1・司法R8・予備H27・予備H28

裁判所
最高裁判所第二小法廷
事件番号
昭和24(れ)2831 常習賭博、傷害致死
裁判
判決・棄却
判例集
刑集 第4巻3号469頁
参照法条
刑法205条,舊刑訴法336條

判示事項・裁判要旨

裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)

判示事項

被告人の行爲と當時豫測し得なかつた特殊事情とによる致死の結果と因果関係

裁判要旨

原判決の確定した事實によると被告人は被害者の左眼の部分を右足で蹴付けたのである。そして原審が證據として採用した鑑定人の鑑定書中死亡登龍の屍体の外傷として左側上下眼瞼は直經約五糎の部分が腫傷し暗紫色を呈し左眼の瞳孔の左方角膜に直經〇、五糎の鮮紅色の溢血があると記載されているから、その左眼の傷が被告人の足蹴によつたものであることは明かである。ところで被告人の暴行もその興えた傷創もそのものだけでは致命的なものではないが(醫師は傷は一〇日位で癒るものだと述べている)被害者は豫て脳梅毒にかかつて居り脳に高度の病的變化があつたので顔面に激しい外傷を受けたため脳の組織を一定度崩壊せしめその結果死亡するに至つたものであることは原判決舉示の鑑定書の記載から十分に認められるのである。而して右鑑定により被告人の行爲によつて脳組織の崩壊を來したものであること、從つて被告人の行爲と被害者の死亡との間に因果關係を認めることができるのであつて、かゝる判斷は毫も經驗則に反するものではない。又被告人の行爲が被害者の脳梅毒による脳の高度の病的變化という特殊の事情さえなかつたならば致死の結果を生じなかつたであろうと認められる場合で被告人が行爲當時その特殊事情と相まつて致死の結果を生ぜしめたときはその行爲と結果との間に因果關係を認めることができるのである。

判決全文(裁判所ウェブサイト)

解説

事案

被告人Aは、被害者Bの左眼の部分を右足で蹴り付けた。Bの屍体には、左側上下眼瞼の直径約5cmの部分に腫脹・暗紫色化があり、左眼角膜にも溢血があった。この左眼の傷はAの足蹴りによるものと認定された。

Aの暴行も、それによる傷そのものも、それだけでは致命的なものではなかった(医師は約10日で治る傷と述べている)。しかし、Bはかねて脳梅毒にかかっており、脳に高度の病的変化があった。そのため、顔面に激しい外傷を受けたことで脳の組織が一定程度崩壊し、Bは死亡した。

Aは傷害致死罪(刑法205条)で有罪とされた(他の被告人とともに常習賭博の点も争われた)。弁護人は、鑑定によってもAの行為による脳組織崩壊という因果関係を断定することは経験則上不可能であると主張し、上告した。

争点

  • 暴行それ自体は致命的でないが、被害者の特殊事情(脳梅毒による脳の高度の病的変化)と相まって死亡した場合に、暴行と死亡との間に因果関係が認められるか
  • 行為者が行為当時その特殊事情を知らず、予測もできなかったことが因果関係の判断に影響するか

判旨

上告棄却。傷害致死罪の成立を認めた原判決を維持した。

規範:被告人の行為が、被害者の特殊の事情(本件では脳梅毒による脳の高度の病的変化)さえなかったならば致死の結果を生じなかったであろうと認められる場合でも、次のとおりとなる。

  • 被告人が行為当時その特殊事情のあることを知らず、また予測もできなかったとしても、
  • その行為がその特殊事情と相まって致死の結果を生じさせたときは、
  • その行為と結果との間に因果関係を認めることができる。

本件では、鑑定によりAの行為によって脳組織の崩壊が生じたことが認められる。したがって、行為と死亡との間に因果関係が認められ、この判断は経験則に反しない。

判決文から

「被告人の暴行もその与えた傷創もそのものだけでは致命的なものではないが」

暴行自体の非致命性を前提としている点

「被告人が行為当時その特殊事情のあることを知らずまた予測もできなかつたとしてもその行為がその特殊事情と相まつて致死の結果を生ぜしめたときはその行為と結果との間に因果関係を認めることができるのである。」

本判決の規範。予見可能性は不要とした核心部分

この解説は AI が作成しています。判決全文に基づいて書き、別の AI が全文と照合して確認していますが、誤りが残っている可能性があります。 判決文の引用は全文と一字一句照合したものだけを載せています。大事な点は判決全文で確かめてください。