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食糧管理法違反事件

最大判昭和25年2月1日

憲法81条は下級裁判所の違憲審査権を否定せず、すべての裁判官が具体的事件で法令の合憲性を判断できるとした大法廷判決

憲法違憲審査制・憲法訴訟裁判所・司法権本試験で 2 問(短答 2・論文 0)

出題:司法R5・予備H23

裁判所
最高裁判所大法廷
事件番号
昭和23(れ)141 食糧管理法違反
裁判
判決・棄却
判例集
刑集 第4巻2号73頁
参照法条
憲法38條,憲法11條,憲法76條3項,憲法81條,憲法98條1項,ポツダム宣言10號,食糧管理法1條

判示事項・裁判要旨

裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)

判示事項

一 ポツダム宣言の受諾による基本的人權の尊重確立と憲法第三八條 二 下級裁判所の違憲審査權と憲法第八一條 三 食糧管理法の意義 四 憲法第九八條第一項の法意と食糧管理法

裁判要旨

一 ポツダム宣言の受諾によつて、わが國が「基本的人權の尊重は確立せらるべし」との同宣言の條項を誠實に履行すべき責務を負擔たことは、まさに所論のとおりである。しかしながら、右條項は、わが國が立法その他の國政の上において、人權尊重の原則を確立すべき旨の原理を宣言たものに過ぎないのであつてこの原理に準據して基本的人權をいかに具体的現、實的に保障していくべきかは、ポツダム宣言の受諾後におけるわが國の責務の履行として順次に遂行實現せらるべき事柄に屬するわけである。そして日本國憲法の制定に依て、ポツダム宣言の趣旨に從い、基本的人權が具体的、現實的に保障され、その尊重が確立されるに至つた。所論の自白に關する證據上の制限も、憲法第三八條によつて初めて基本的人權の一つとして保障されるに至つたものである。されは、憲法の施行前すでにポツダム宣言の受諾によつて直ちにかかる證據上の制限に關する國民の權利が確立したとの所論には、賛同することを得ない。 二 憲法は國の最高法規であつてその條規に反する法律命令等はその効力を有せず、裁判官は憲法及び法律に拘束せられ、また憲法を尊重し擁護する義務を負うことは憲法の明定するところである。從つて、裁判官が。具体的訴訟事件に法令を適用するに當り、その法令が憲法に適合するか否かを判斷することは、憲法によつて裁判官に課せられた職務と職權であつて、このことは最高裁判所の裁判官であると下級裁判所の裁判官であることを問わない。憲法第八一條は、最高裁判所が違憲審査權を有する終審裁判所であることを明らかにした規定であつて下級裁判所が違憲審査權を有することを否定する趣旨をもつているものではない。それ故、原審が所論の憲法適否の判斷をしたことはもとより適法であるのみでなく、原審は憲法適否の判斷を受くるために最高裁判所に移送すべきであるとの所論は、全く獨斷と云うの外はない。 三 食糧管理法は戰時の制定にかゝること所論のとおりであるが、同法は國家總動員法のごとく戰時に際して國防目的を達成する爲に國の全力を最も有効に發揮せしむるよう人的及び物的資源を統制運用するための法規ではなく、國民食糧の確保と國民經濟の安定とを図るため、食糧を管理してその需給と價格との調停並に配給の統制を行うことを目的として制定せられたものであつて、國内における食糧絶對量の不足に當面する國民の主要食糧の獲得について、一般民衆ができるだけ平等な機會をもつことを確保せしめんとするものである。 四 憲法第九八條は憲法の條規に反する法律等の効力を有しないことを規定しているが、同條は憲法施行の前後にかゝわらず制定せられた法律等の有効であるか否かを決定する基準を示す規定であると解すべきであるから、前記のような性格を有する食糧管理法は、特に經過規定を必要とせず、新憲法の施行後においてもその効力を持續すること、同條の規定によつて明らかであると云わねばならない。(昭和二三年(れ)第二〇五號同年九月二九日大法廷判決參照)。

判決全文(裁判所ウェブサイト)

解説

事案

被告人は食糧管理法違反で起訴された。第二審判決は憲法施行前の昭和22年3月8日に言い渡された。これに対する上告は、裁判所法施行令1条により東京高等裁判所が上告審として審理し、棄却した。被告人側はさらに最高裁判所へ再上告し、主に次の点を主張した。

  • ポツダム宣言の受諾によって、自白に関する証拠上の制限を含む基本的人権が直ちに確立していた。
  • 憲法81条は違憲審査権を最高裁判所に限っているから、原審(東京高裁)は憲法適否の判断を受けるため事件を最高裁に移送すべきであった。
  • 裁判所法施行令1条は違憲である。
  • 食糧管理法は戦時立法であり、経過規定もないから新憲法下では効力を失った。
  • 同法31条・9条・10条が犯罪構成要件の決定を命令に委任しているのは違憲である。

争点

  • 下級裁判所は違憲審査権を有するか(憲法81条の趣旨)
  • ポツダム宣言の受諾により、憲法施行前に基本的人権(自白に関する証拠上の制限)が直ちに確立したか
  • 憲法施行前に制定された法律(食糧管理法)は、経過規定なしに新憲法下でも効力を持続するか(憲法98条1項)
  • 法律が罰則の制定を政令に委任することは許されるか(憲法73条6号但書)

判旨

再上告棄却。

  • 下級裁判所の違憲審査権:憲法は最高法規であり(98条1項)、裁判官は憲法・法律に拘束され(76条3項)、憲法尊重擁護義務を負う(99条)。したがって、具体的訴訟事件に法令を適用して裁判する際にその法令の合憲性を判断することは、憲法が裁判官に課した職務と職権である。これは最高裁判所の裁判官か下級裁判所の裁判官かを問わない。憲法81条は、最高裁判所が違憲審査権を有する終審裁判所であることを明らかにした規定にすぎず、下級裁判所の違憲審査権を否定する趣旨ではない。下級裁判所が最高裁に移送すべきだという主張は独断である。
  • ポツダム宣言:同宣言は人権尊重の原則を確立すべき旨の原理を宣言したにすぎない。自白に関する証拠上の制限は、憲法38条によって初めて保障された。
  • 憲法98条:同条は、憲法施行の前後を問わず、制定された法律等が有効かどうかを決める基準である。食糧管理法は新憲法に反しないから、経過規定なしに効力を持続する。
  • 罰則の委任:憲法73条6号但書の反対解釈により、法律の委任があれば政令で罰則を設けることができる。

判決文から

「裁判官が、具体的訴訟事件に法令を適用して裁判するに当り、その法令が憲法に適合するか否かを判断することは、憲法によつて裁判官に課せられた職務と職権であつて、このことは最高裁判所の裁判官であると下級裁判所の裁判官であることを問はない。」

違憲審査権がすべての裁判官の職務・職権であるとした核心部分

「憲法八一条は、最高裁判所が違憲審査権を有する終審裁判所であることを明らかにした規定であつて、下級裁判所が違憲審査権を有することを否定する趣旨をもつているものではない。」

81条の意味を「終審」性の明示に限定した解釈

「右条項は、わが国が立法その他の国政の上において、人権尊重の原則を確立すべき旨の原理を宣言したものに過ぎない」

ポツダム宣言から直接に具体的権利は生じないとした点

「同条は憲法施行の前後にかゝわらず制定せられた法律等の有効であるか否かを決定する基準を示す規定であると解すべきである」

憲法施行前の法令にも98条が基準として及ぶとした点

「特に法律の委任がある場合においては、政令で罰則(すなわち犯罪構成要件及び刑を定める法規)を設けることができること及び法律は罰則を設けることを政令に委任することができることの趣旨を表明している」

73条6号但書の反対解釈で罰則の委任を認めた点

この解説は AI が作成しています。判決全文に基づいて書き、別の AI が全文と照合して確認していますが、誤りが残っている可能性があります。 判決文の引用は全文と一字一句照合したものだけを載せています。大事な点は判決全文で確かめてください。