最判昭和24年8月9日
刑法103条の「罪を犯した者」には、犯罪の嫌疑で捜査中の者も含まれ、有罪確定や真犯人であることは要しないとした判例
出題:司法H22・司法R5・予備R5・予備R6
- 裁判所
- 最高裁判所第三小法廷
- 事件番号
- 昭和24(れ)1566 犯人蔵匿
- 裁判
- 判決・棄却
- 判例集
- 刑集 第3巻9号1440頁
- 参照法条
- 舊刑訴法60條2項,舊刑訴法338條1項,舊刑訴法340條1項,刑法103條
判示事項・裁判要旨
裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)
判示事項
一 證據調をした書類を公判調書に記載する方法 二 取寄決定をしないで證據調をしたことの正否 三 犯罪の嫌疑によつて捜査中の者と刑法第一〇三條の「罰金以上ノ罪ヲ犯シタル者」の意義
裁判要旨
一 しかし公判廷において證據調をした書類を公判調書に記載するには必ずしも書類の一々を個別具體的に掲記する必要はない。ということは當裁判所の判例とするところである。 二 取寄記録が現にその裁判所に有する場合に取寄決定は不要であるということは、大審院時代からの判例であつて(大正四年(れ)二一〇一號、同一一年二月二一日判決、大正一二年(れ)六〇〇號、同年五月一一日判決)。本件においても問題の書類は、一連の事件記録として本件記録とともに原審裁判所に現存し、その證據調につき別段の手續を必要としないものであるから、原審が取寄決定をせずに直ちにその書類につき證據調をしたことは違法でない。 三 上告論旨第三點は、刑法第一〇三條は蔵匿の對象者「罰金以上ノ罪ヲ犯シタル者」と規定しているのであるから、その者が罪を犯したという事實が確定される迄は、犯人蔵匿は成立しない。と主張する。なるほどその趣旨の學説もないではないが、刑法第一〇三條は司法に關係する國權の作用を妨害する書を處罰しようとするのであるから、「罪ヲ犯シタル者」は犯罪の嫌疑によつて捜査中の者をも含むと解釋しなくては立法の目的を達し得ない。
解説
事案
Aは恐喝の被疑者として逮捕状を発せられ、逃走していた。B・C・Dの3名は、Aが逮捕を免れるよう、順次Aをかくまった。3名はそれぞれ別件として起訴された。第一審ではBに対する被告事件に併合されて判決が言い渡され、第二審の途中で再び分離された。BとCについては第二審判決が確定した。
本件はDに対する犯人蔵匿被告事件である。弁護人は次の4点を上告理由として主張した。
- 他の共犯者の記録中の書類について、証拠調べが適法にされたか公判調書上明らかでない。
- 分離された別事件の記録を、取寄決定なしに証拠調べした。
- 量刑理由で被蔵匿者を「重大」な犯人としたが、その証明がない。
- 刑法103条は「罰金以上ノ罪ヲ犯シタル者」と規定するから、その者が罪を犯した事実が確定するまで犯人蔵匿罪は成立しない。
争点
- 刑法103条の「罪を犯した者」は真に罪を犯した者に限られるか。犯罪の嫌疑によって捜査中の者を含むか
- 公判廷で証拠調べをした書類を公判調書に記載する際、個別具体的に掲記する必要があるか
- 記録が現に裁判所にある場合、取寄決定なしに証拠調べをすることは適法か
判旨
上告棄却。犯人蔵匿罪が成立する。
- 規範:刑法103条は、司法に関する国権の作用を妨害する者を処罰する規定である。したがって、「罪を犯した者」には犯罪の嫌疑によって捜査中の者も含まれる。その者が罪を犯した事実が確定するまで犯人蔵匿罪が成立しない、という解釈は採らない。
- 答案での形:「103条の保護法益は司法作用であるから、『罪を犯した者』は真犯人に限られず、犯罪の嫌疑を受けて捜査中の者を含む」。
- 手続面:公判調書には、証拠調べをした書類を一々個別具体的に掲記する必要はない。取寄記録が現にその裁判所にある場合は、取寄決定を経ずに証拠調べをしても違法でない。
- 量刑理由:量刑の基礎となる情状として述べた事実は罪となるべき事実ではないから、その証拠を説明しなくても違法でない。
判決文から
「刑法第一〇三条は司法に関する国権の作用を妨害する者を処罰しようとするのであるから、「罪ヲ犯シタル者」は犯罪の嫌疑によつて捜査中の者をも含むと解釈しなくては、立法の目的を達し得ない。」
保護法益から客体の範囲を導く核心部分
「その者が罪を犯したという事実が確定されるまでは犯人蔵匿は成立しない、と主張する。なるほどその趣旨の学説もないではないが」
排斥された見解(罪を犯した事実が確定するまで成立しないとする説)の内容
「取寄記録が現にその裁判所に有する場合に取寄決定は不要であるということは、大審院時代からの判例であつて」
取寄決定不要という手続面の判断
この解説は AI が作成しています。判決全文に基づいて書き、別の AI が全文と照合して確認していますが、誤りが残っている可能性があります。 判決文の引用は全文と一字一句照合したものだけを載せています。大事な点は判決全文で確かめてください。
