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最大判昭和24年5月18日

緊急避難の「現在の危難」「やむを得ずにした行為」(補充性)と自救行為の意義を示し、隠退蔵物資摘発のための強要行為の正当化を否定した判決。

刑法違法性阻却(正当防衛・緊急避難)伝聞法則伝聞例外本試験で 3 問(短答 3・論文 0)

出題:司法R3・予備H28・予備R5

裁判所
最高裁判所大法廷
事件番号
昭和22(れ)319 脅迫
裁判
判決・棄却
判例集
刑集 第3巻6号772頁
参照法条
刑法37條,刑法35條,刑法38條1項,昭和20年法律51号労働組合法1条2項,憲法28條

判示事項・裁判要旨

裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)

判示事項

一 憲法第二八條にいわゆる團結權の意義と大衆運動の合法性の限界 二 刑法第三七條の緊急避難の意義 三 自救行爲の意義 四 食糧その他の生活必需物資が缺乏している状況下において國民の各自又は任意の集團が、隱退藏物資の交付を保管者に對し要求し得べき權利の有無 五 昭和二〇年法律第五一号労働組合法第一条第二項の法意

裁判要旨

一 憲法第二八条はこの趣旨において、企業者對勤労者すなわち使用者對被用者というような關係に    立つものの間において、經濟上の弱者である勤労者のために團結權乃至團体行動權を保障したも    のに外ならないそれ故、この團結權に關する憲法の保障を勤労者以外の團体又は個人の單なる集    合に過ぎないものに對してまで擴張せんとする論旨の見解にはにわかに賛同することはできない    のである、もとり一般民衆が法規その他公序良俗に反しない限度において、所謂大衆運動なるも    のを行い得べきことは、何人も異論のないところであらうけれど、その大衆運動なるの一事から    苟くもその運動に關する行爲である限り常にこれを正當行爲なりとして刑法第三五條に從い刑罰    法令の適用を排除すべきであると結論することはできない。 二 緊急避難とは「自己又ハ他人ノ生命身体自由若クハ財産ニ對スル現在ノ危難ヲ避クル爲メ己ムコトヲ得ザルニ出デタル行爲」というのであり、右所謂「現在ノ危難」とは現に危難の切迫していることを意味し又「己ムコトヲ得ザルニ出デタル」というのは當該避難行爲をする以外には他に方法がなく、かゝる行動に出たことが條理上肯定し得る場合を意味するのである。 三 自救行爲とは一定の權利を有するものが、これを保全するため官憲の手を待つに遑なく自ら直ちに必要の限度において適當なる行爲をすること例えば盜犯の現場において被害者が賍物を取還すが如きをいうのである。 四 所論は本件被告事件の發生當時わが國内における食糧事情が、その他の生活必需物資を含め缺乏を告げ國民生活の上に危機迫らんとする虞ある状況にあつた旨、並びにかかる状況下において、不當に隱退藏せられている生活必需物資が存在するならば須らくこれを摘發して國民一般の需要に充つべきである旨主張するものであるが、假りに所論の通りであるとしても、他に法律上の事由の存在しない限り、これがために直ちに國民の各自又は任意の集團がそれぞれ自己のために直接該物資の保管者に對しこれが交付を要求し得べき權利ありとすることはできない。 五 昭和二〇年法律第五一号労働組合法第一条第二項の規定は、同条第一項の目的達成のためにした正当な行為についてのみ、刑法第三五条の適用を認めたに過ぎず、勤労者の団体交渉においても、刑法所定の暴行罪又は脅迫罪にあたる行為が行われた場合にまで、その適用があることを定めたものではない。

判決全文(裁判所ウェブサイト)

解説

事案

元陸軍造兵廠の退職従業員の一部その他の有志が結成したA同盟の委員である被告人は、委員長Cらと共謀した。財団法人E会F支部所属の倉庫内の大豆等を隠退蔵物資と推断し、これを直接摘発して同盟に分配することを企てた。

被告人らは、同盟員を通じて都内居住者約2000名を集合させ、その代表者として支部長Gに物資の譲渡を交渉した。その際、怒号する群衆の不穏な形勢を背景に、被告人はGの腕を捕らえ、小突き、脅迫し、Gに口頭で譲渡受諾の意思を表示させた。

恐喝罪で起訴され、第一審は暴力行為等処罰法1条1項違反、原審は強要罪(刑法223条1項)と認定した。弁護人は、憲法28条の団体行動権・労働組合法1条2項による正当行為(刑法35条)、緊急避難(刑法37条)、自救行為の成立、隠退蔵物資の交付請求権の存在などを主張して上告した。

争点

  • 勤労者でない者の集団による大衆運動に憲法28条の保障が及ぶか、大衆運動であることのみで刑法35条により違法性が阻却されるか
  • 旧労働組合法1条2項は暴行・脅迫に当たる行為まで正当化するか
  • 刑法37条の「現在の危難」「やむを得ずにした行為」の意義
  • 自救行為の意義と本件への該当性
  • 生活物資欠乏下で国民・任意の集団が隠退蔵物資の交付を保管者に要求する権利を有するか(強要罪の「義務のないこと」)
  • 予審における証人尋問調書の証拠能力

判旨

上告棄却(強要罪成立)。

  • 憲法28条は、使用者対被用者の関係に立つ者の間で、経済上の弱者である勤労者のために団結権・団体行動権を保障したものである。勤労者以外の団体や単なる個人の集合には及ばない。大衆運動であるというだけで常に正当行為(刑法35条)となるものでもない。
  • 旧労組法1条2項は、同法の目的達成のための正当な行為についてのみ刑法35条の適用を認めたにすぎない。暴行罪・脅迫罪に当たる行為が常に正当化されるわけではない。
  • 緊急避難について、「現在の危難」とは現に危難が切迫していることをいう。「やむを得ずにした行為」とは、当該避難行為をする以外に他に方法がなく、かかる行動に出たことが条理上肯定しうる場合をいう。
  • 自救行為とは、一定の権利を有する者が、これを保全するため官憲の手を待つ暇がなく、自ら直ちに必要の限度で適当な行為をすることをいう。
  • 物資欠乏下でも、他に法律上の事由がない限り、国民各自や任意の集団に隠退蔵物資の交付を保管者に要求する権利はない。

判決文から

「右所謂「現在ノ危難」とは現に危難の切迫していることを意味し、又「已ムコトヲ得ザルニ出デタル」というのは当該避難行為をする以外には他に方法がなく、かかる行動に出たことが条理上肯定し得る場合を意味するのである。」

現在性と補充性の定義。答案の規範そのもの

「自救行為とは一定の権利を有するものが、これを保全するため官憲の手を待つに遑なく自ら直ちに必要の限度において適当なる行為をすること、例えば盗犯の現場において被害者が賍物を取還すが如きをいうのである。」

自救行為の定義。権利の存在が前提

「東京都内の食糧事情は一般公知の如く或る程度不足状態にあつたというに止まり、一般都民が所論のような逼迫した窮乏状態にあつたともいい得ないのであり」

現在の危難を否定した当てはめ

「憲法第二八条はこの趣旨において、企業者対勤労者すなわち使用者対被用者というような関係に立つものの間において、経済上の弱者である勤労者のために団結権乃至団体行動権を保障したものに外ならない。」

労働基本権の主体を勤労者に限定

「勤労者の団体交渉においても、刑法所定の暴行罪又は脅迫罪に該当する行為が行われた場合、常に必ず同法第三五条の適用があり、かゝる行為のすべてが正当化せられるものと解することはできないのである。」

労働組合活動による正当化の限界

この解説は AI が作成しています。判決全文に基づいて書き、別の AI が全文と照合して確認していますが、誤りが残っている可能性があります。 判決文の引用は全文と一字一句照合したものだけを載せています。大事な点は判決全文で確かめてください。