SaySayLaw

最判昭和23年11月2日

放火罪の既遂時期について、火が媒介物を離れて目的物が独立燃焼する程度に達すれば足りるとした(独立燃焼説)

刑法放火罪本試験で 7 問(短答 7・論文 0)

出題:司法H25・司法H28・司法R4・予備R5・予備R6

裁判所
最高裁判所第三小法廷
事件番号
昭和23(れ)707 放火
裁判
判決・棄却
判例集
刑集 第2巻12号1443頁
参照法条
刑訴法411條,刑訴法410條1號,刑訴法409條,憲法32條,刑法108條,刑法43條

判示事項・裁判要旨

裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)

判示事項

一 違法の第一審手續と第二審判決に及ぼす影響 二 第一審手續の違法と三審制 三 放火罪の既遂の時期 四 情状論と上告理由

裁判要旨

一 現行刑事訴訟法における控訴審は覆審であつて、訴訟手續の全部を更新するのであるから、第一審の訴訟手續についてたとえ所論のような違法(辯護人に關する公判調書の誤記及び辯護人に對し公判期日を通知しなかつたこと)があつたとしても、その違法は控訴審の判決に影響を及ぼすものではない。 二 所論のような違法は第一審の訴訟手續を違法ならしめるだけで、その手續の存在を失わしめて無効とするものでないから、所論のように控訴審が第一審となり被告人から三審制の利益を奪うものではない。 三 原判決はその舉示する證據を綜合して、被告人が原判示家屋の押入内壁紙にマツチで放火したため火は天井に燃え移り右家屋の天井板約一尺四方を燒毀した事實を認定しているのであるから、右の事實自體によつて、火勢は放火の媒介物を離れて家屋が獨立燃燒する程度に達したことが認められるので、原判示の事實は放火既遂罪を構成する事實を充たしたものというべきである。されば、原判決が右の事實に對し刑法第一〇八條を適用して放火既遂罪として處斷したのは相當である。 四 論旨は被告人に利益な情状を述べて原判決の破毀を求めているが、かかる事情の開陳は上告の適法な理由ではないから採用することができない。

判決全文(裁判所ウェブサイト)

解説

事案

被告人は、家屋の押入内の壁紙にマッチで放火した。火は天井に燃え移り、その家屋の天井板約一尺四方(約30cm四方)を焼燬した。原審(東京高裁)はこの事実を認定し、刑法108条を適用して放火既遂罪として処断した。

弁護人は次の点を上告趣意として主張した。

  • 第一審の手続に違法がある(弁護人に関する公判調書の誤記、弁護人への公判期日の不通知)。
  • 被告人は犯行当時心神耗弱であった。
  • 本件は放火既遂罪にあたらない。
  • 被告人に有利な情状がある。

最高裁は上告を棄却した。

争点

  • 放火罪の既遂時期(「焼燬」(現行法の「焼損」)の意義)
  • 第一審手続の違法が覆審である控訴審の判決に影響するか
  • 第一審手続の違法により被告人が三審制の利益を奪われるか
  • 被告人に有利な情状の主張が適法な上告理由になるか

判旨

上告棄却。

放火既遂の基準:放火罪は、火勢が放火の媒介物を離れて、目的物(家屋)が独立して燃焼する程度に達したときに既遂となる。

本件へのあてはめ:押入内の壁紙に放火し、火が天井に燃え移って天井板約一尺四方を焼燬した。この事実自体から独立燃焼の程度に達したと認められる。したがって、刑法108条の放火既遂罪が成立する。

答案用の規範:「焼損とは、火が媒介物を離れて目的物が独立に燃焼を継続しうる状態に達したことをいう(独立燃焼説)」。

付随的判断

  • 控訴審は覆審であり、訴訟手続の全部を更新する。そのため、第一審手続の違法は控訴審判決に影響しない。
  • その違法は第一審手続を違法にするだけで、手続を無効にするものではない。よって三審制の利益を奪うものでもない。
  • 有利な情状の開陳は、適法な上告理由にあたらない。

判決文から

「右の事実自体によつて、火勢は放火の媒介物を離れて家屋が独立燃焼する程度に達したことが認められるので、原判示の事実は放火既遂罪を構成する事実を充たしたものというべきである。」

独立燃焼説を示した核心部分

「現行刑事訴訟法における控訴審は覆審であつて、訴訟手続の全部を更新するのであるから」

旧法下の控訴審の性質についての判断

この解説は AI が作成しています。判決全文に基づいて書き、別の AI が全文と照合して確認していますが、誤りが残っている可能性があります。 判決文の引用は全文と一字一句照合したものだけを載せています。大事な点は判決全文で確かめてください。