那覇孔子廟事件(孔子廟訴訟)
孔子廟施設の敷地の公園使用料を全額免除したことを、総合判断の枠組みで憲法20条3項違反とした大法廷判決
出題:司法H29・司法R2
- 裁判所
- 最高裁判所大法廷
- 事件番号
- 令和1(行ツ)222 固定資産税等課税免除措置取消(住民訴訟)請求事件
- 裁判
- 判決・その他
- 判例集
- 民集 第75巻2号29頁
- 参照法条
- 憲法20条3項
判示事項・裁判要旨
裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)
判示事項
市長が市の管理する都市公園内に孔子等を祀った施設を所有する一般社団法人に対して同施設の敷地の使用料の全額を免除した行為が憲法20条3項に違反するとされた事例
裁判要旨
市長が市の管理する都市公園内の国公有地上に孔子等を祀った施設を所有する一般社団法人に対して上記施設の敷地の使用料の全額を免除した行為は,次の(1)~(5)など判示の事情の下では,上記施設の観光資源等としての意義や歴史的価値を考慮しても,一般人の目から見て,市が上記法人の上記施設における活動に係る特定の宗教に対して特別の便益を提供し,これを援助していると評価されてもやむを得ないものであって,憲法20条3項に違反する。 (1) 上記施設は,上記都市公園の他の部分から仕切られた区域内に一体として設置され,上記施設の本殿と位置付けられている建物は,その内部の正面には孔子の像及び神位(神霊を据える所)が配置され,家族繁栄,学業成就,試験合格等を祈願する多くの人々による参拝を受けているほか,上記建物の香炉灰が封入された「学業成就(祈願)カード」が上記施設で販売されていたこともあった。 (2) 上記施設で行われる儀式は,孔子の霊の存在を前提として,これを崇め奉るという宗教的意義を有するものであり,上記施設の建物等は,上記儀式を実施するという目的に従って配置されたものである。 (3) 市が策定した上記都市公園周辺の土地利用計画案においては,同計画案の策定業務に係る委員会等で孔子等を祀る廟の宗教性を問題視する意見があったこと等を踏まえて,前記(1)の建物を建設する予定の敷地につき上記法人の所有する土地との換地をするなどして,同建物を私有地内に配置することが考えられる旨の整理がされていた。 (4) 上記法人に対する上記施設の設置許可に係る占用面積は1335㎡であり,免除の対象となる敷地の使用料に相当する額は年間で576万7200円であり,また,上記設置許可の期間は3年であるが,公園の管理上支障がない限り更新が予定されている。 (5) 上記法人は,上記施設の公開や前記(2)の儀式の挙行を定款上の目的又は事業として掲げている。 (反対意見がある。)
解説
事案
那覇市は都市公園(松山公園)を設置・管理している。その公園内の国公有地上に、儒教の祖である孔子やその門弟(四配)を祀る久米至聖廟(本件施設)がある。施設の建物等を所有するのは、久米三十六姓の末えいに正会員資格を限る一般社団法人(参加人)である。
当時の市長は、都市公園法5条1項に基づく公園施設設置許可をした。そのうえで、公園条例11条の2第4号(公共的団体が公益目的で使用する場合)に基づき、敷地の公園使用料の全額を免除した(本件免除)。使用料は占用面積1335㎡、年間約577万円で、許可期間は3年だが更新が予定されていた。
- 施設の本殿である大成殿には孔子の像と神位が置かれ、学業成就等を祈願する参拝者が多い。
- 毎年、孔子の霊を迎えて送り返す儀式「釋奠祭禮」が行われる。
- 市の土地利用計画案では、宗教性を問題視する意見を踏まえ、大成殿を私有地内に配置することが考えられる、と整理されていた。
市の住民は、本件免除は政教分離原則に反し無効だと主張した。そして、平成26年4月1日から同年7月24日までの使用料を請求しないことが違法に財産管理を怠る事実に当たるとして、地方自治法242条の2第1項3号に基づき違法確認を求めた。
争点
- 国公有地上の施設の敷地使用料の全額免除が政教分離規定に違反するかの判断枠組み
- 孔子廟施設(儒教関連施設)の宗教性の有無・程度
- 本件免除が憲法20条3項の禁止する「宗教的活動」に当たるか
- 免除が違憲無効の場合に、長が使用料の全部を請求しないことが違法か(債権管理の裁量の有無)
判旨
結論:本件免除は憲法20条3項の禁止する宗教的活動に当たり、違憲無効である。20条1項後段・89条違反の有無については判断していない。
規範:政教分離規定は、国家と宗教との関わり合いが、我が国の社会的・文化的諸条件に照らし、信教の自由の保障の確保という制度の根本目的との関係で相当とされる限度を超える場合に、これを許さないものである。国公有地上の施設の敷地使用料の免除が限度を超えるかは、次の諸般の事情を考慮し、社会通念に照らして総合的に判断する。
- 当該施設の性格
- 免除をすることとした経緯
- 免除に伴う国公有地の無償提供の態様
- これらに対する一般人の評価
あてはめ:施設の観光資源等としての意義や歴史的価値を考慮しても、一般人の目から見て、市が特定の宗教に特別の便益を提供し援助していると評価されてもやむを得ない。
住民訴訟部分:使用料債権は、許可と期間の経過により当然に発生する。客観的に存在する債権について長に行使・不行使の裁量は原則としてなく、全額を請求しないことは違法である。
判決文から
「当該施設の性格,当該免除をすることとした経緯,当該免除に伴う当該国公有地の無償提供の態様,これらに対する一般人の評価等,諸般の事情を考慮し,社会通念に照らして総合的に判断すべきものと解するのが相当である。」
判断枠組み(総合判断)の考慮要素。答案の規範
「本件施設については,一体としてその宗教性を肯定することができることはもとより,その程度も軽微とはいえない。」
施設の性格についての結論
「本件施設の観光資源等としての意義や歴史的価値をもって,直ちに,参加人に対して本件免除により新たに本件施設の敷地として国公有地を無償で提供することの必要性及び合理性を裏付けるものとはいえない。」
経緯の評価。世俗的意義だけでは正当化されない
「本件免除は,参加人に上記利益を享受させることにより,参加人が本件施設を利用した宗教的活動を行うことを容易にするものであるということができ,その効果が間接的,付随的なものにとどまるとはいえない。」
無償提供の態様・効果の評価
「本件免除は,一般人の目から見て,市が参加人の上記活動に係る特定の宗教に対して特別の便益を提供し,これを援助していると評価されてもやむを得ないものといえる。」
一般人の評価の当てはめ
「客観的に存在する使用料に係る債権を理由もなく放置したり免除したりすることは許されず,原則として,地方公共団体の長にその行使又は不行使について裁量はないというべきである」
住民訴訟部分の規範(債権管理の裁量否定)
この解説は AI が作成しています。判決全文に基づいて書き、別の AI が全文と照合して確認していますが、誤りが残っている可能性があります。 判決文の引用は全文と一字一句照合したものだけを載せています。大事な点は判決全文で確かめてください。
