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インスリン不投与事件

最決令和2年8月24日

母親を作為に出られない精神状態に陥らせて道具とし、父親とも共謀してインスリンを投与させず死亡させた者に殺人罪を認めた

刑法生命・身体に対する罪未遂・中止犯・不能犯本試験で 2 問(短答 2・論文 0)

出題:司法R6・予備R6

裁判所
最高裁判所第二小法廷
事件番号
平成30(あ)728 殺人被告事件
裁判
決定・棄却
判例集
刑集 第74巻5号517頁
参照法条
刑法60条,刑法199条

判示事項・裁判要旨

裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)

判示事項

生命維持のためにインスリンの投与が必要な1型糖尿病にり患した幼年の被害者の治療をその両親から依頼された者が,両親に指示してインスリンの投与をさせず,被害者が死亡した場合について,母親を道具として利用するとともに不保護の故意のある父親と共謀した殺人罪が成立するとされた事例

裁判要旨

生命維持のためにインスリンの投与が必要な1型糖尿病にり患している幼年の被害者の治療をその両親から依頼された被告人が,インスリンを投与しなければ被害者が死亡する現実的な危険性があることを認識しながら,自身を信頼して指示に従っている母親に対し,インスリンは毒であるなどとして被害者にインスリンを投与しないよう執ようかつ強度の働きかけを行い,母親をして,被害者の生命を救うためには被告人の指導に従う以外にないなどと一途に考えるなどして被害者へのインスリンの投与という期待された作為に出ることができない精神状態に陥らせ,被告人の治療法に半信半疑の状態であった父親に対しても母親を介してインスリンの不投与を指示し,両親をして,被害者へのインスリンの投与をさせず,その結果,被害者が死亡したなどの本件事実関係(判文参照)の下では,被告人には,母親を道具として利用するとともに不保護の故意のある父親と共謀した未必の殺意に基づく殺人罪が成立する。

判決全文(裁判所ウェブサイト)

解説

事案

被害者(平成19年生の幼年者)は1型糖尿病と診断された。インスリンを定期的に摂取しなければ死に至るが、摂取すれば通常の生活を送れる病気である。母親は完治を望み、非科学的な力による難病治療を標ぼうする被告人に治療を依頼した。被告人は医学的知識がないのに完治させると断言して治療契約を結び、インスリンなしでは被害者が生きられないことも認識していた。
被告人は「インスリンは毒」などとして投与中止を指示した。被害者は糖尿病性ケトアシドーシスで再入院し、退院後に投与が再開されると、被告人は母親を強く非難し、「指導に従わなければ助からない」と繰り返した。母親は指導に従うしかないと一途に考え、半信半疑の父親を説得した。両親は平成27年4月6日を最後に投与を中止した。
その後、被害者は衰弱し、被告人は直接その状態を見ても病院での治療をさせず、不投与の指示を続けた。被害者は同月27日、糖尿病性ケトアシドーシスを併発した1型糖尿病に基づく衰弱により死亡した。

争点

  • 直接手を下していない被告人に殺人罪(刑法199条)の正犯性が認められるか(母親を道具として利用する間接正犯の成否)
  • 不保護の故意しかない父親との共謀(刑法60条)により殺人罪の共同正犯が成立するか
  • 被告人の殺意(未必の故意)の有無

判旨

上告棄却。被告人には殺人罪(刑法199条、60条)が成立する。
成立の根拠は次のとおりである。

  • 被告人は、インスリンを投与しなければ被害者が死亡する現実的な危険性を認識していた(未必的な殺意)。
  • 自身を信頼し指示に従う母親に対し、脅しめいた文言を交えた執ようかつ強度の働きかけを行った。
  • その結果、母親をインスリン投与という期待された作為に出ることができない精神状態に陥らせ、被告人もこれを認識していた。
  • 父親とは母親を介してインスリン不投与について相互に意思を通じていた。

以上から、被告人は母親を道具として利用するとともに、不保護の故意のある父親と共謀の上、インスリンを投与せずに被害者を死亡させたものとされた。
答案では、「被利用者を期待された作為に出られない精神状態に陥らせ、利用者がこれを認識しつつその不作為を利用した場合には、被利用者を道具とする正犯性が認められる」という形で使える。

判決文から

「インスリンを投与しなければ被害者が死亡する現実的な危険性があることを認識しながら」

未必の殺意を基礎づける認識の内容

「被害者へのインスリンの投与という期待された作為に出ることができない精神状態に陥っていたものであり,被告人もこれを認識していたと認められる。」

母親を道具とする間接正犯の核心部分

「被告人は,被告人の治療法に半信半疑の状態ながらこれに従っていた父親との間で,母親を介し,被害者へのインスリンの不投与について相互に意思を通じていたものと認められる。」

父親との意思連絡(共謀)の認定

「被告人は,未必的な殺意をもって,母親を道具として利用するとともに,不保護の故意のある父親と共謀の上,被害者の生命維持に必要なインスリンを投与せず,被害者を死亡させたものと認められ,被告人には殺人罪が成立する。」

間接正犯と共同正犯を併用した結論

この解説は AI が作成しています。判決全文に基づいて書き、別の AI が全文と照合して確認していますが、誤りが残っている可能性があります。 判決文の引用は全文と一字一句照合したものだけを載せています。大事な点は判決全文で確かめてください。