愛媛玉串料訴訟
県が神社の例大祭等に玉串料等を公金から奉納したことを、目的効果基準で憲法20条3項・89条違反とした大法廷判決
出題:司法H23・司法H24・司法H29・司法R2・司法R4・予備H23・予備H27・予備R4
- 裁判所
- 最高裁判所大法廷
- 事件番号
- 平成4(行ツ)156 損害賠償代位
- 裁判
- 判決・その他
- 判例集
- 民集 第51巻4号1673頁
- 参照法条
- 地方自治法153条1項,地方自治法242条の2第1項,地方自治法242条の2第4項,地方自治法243条の2第1項,憲法20条,憲法89条,民訴法52条1項,民訴法363条
判示事項・裁判要旨
裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)
判示事項
一 県がD神社又はE神社の挙行した例大祭、みたま祭又は慰霊大祭に際し玉串料、献灯料又は供物料を県の公金から支出して奉納したことが憲法二〇条三項、八九条に違反するとされた事例 二 委任又は専決により県の補助職員らが公金支出を処理した場合において知事は指揮監督上の義務に違反したものであり過失があったが補助職員らは判断を誤ったけれども重大な過失があったということはできないとされた事例 三 複数の住民が提起する住民訴訟と類似必要的共同訴訟 四 複数の住民が共同訴訟人として提起した住民訴訟において共同訴訟人の一部の者がした上訴又は上訴の取下げの効力
裁判要旨
一 愛媛県が、宗教法人D神社の挙行した恒例の宗教上の祭祀である例大祭に際し玉串料として九回にわたり各五〇〇〇円(合計四万五〇〇〇円)を、同みたま祭に際し献灯料として四回にわたり各七〇〇〇円又は八〇〇〇円(合計三万一〇〇〇円)を、宗教法人愛媛県E神社の挙行した恒例の宗教上の祭祀である慰霊大祭に際し供物料として九回にわたり各一万円(合計九万円)を、それぞれ県の公金から支出して奉納したことは、一般人がこれを社会的儀礼にすぎないものと評価しているとは考え難く、その奉納者においてもこれが宗教的意義を有する者であるという意識を持たざるを得ず、これにより県が特定の宗教団体との間にのみ意識的に特別のかかわり合いを持ったことを否定することができないのであり、これが、一般人に対して、県が当該特定の宗教団体を特別に支援しており右宗教団体が他の宗教団体とは異なる特別のものであるとの印象を与え、特定の宗教への関心を呼び起こすものといわざるを得ないなど判示の事情の下においては、憲法二〇条三項、八九条に違反する。 二 愛媛県が憲法二〇条三項八九条に違反して宗教法人D神社等に玉串料等を県の公金から支出して奉納したことにつき、右支出の権限を法令上本来的に有する知事は、委任を受け又は専決することを任された補助職員らが右支出を処理した場合であっても、同神社等に対し、右補助職員らに玉串料等を持参させるなどしてこれを奉納したと認められ、当該支出には憲法に違反するという重大な違法があり、地方公共団体が特定の宗教団体に玉串料等の支出をすることについて、文部省自治省等が、政教分離原則に照らし、慎重な対応を求める趣旨の通達、回答をしてきたなどの事情の下においては、その指揮監督上の義務に違反したものであり、過失があったというのが相当であるが、右補助職員らは、知事の右のような指揮監督の下でこれを行い、右支出が憲法に違反するか否かを極めて容易に判断することができたとまではいえないという事情の下においては、その判断を誤ったものであるが、重大な過失があったということはできない。 三 複数の住民が提起する住民訴訟は、類似必要的共同訴訟と解すべきである。 四 複数の住民が共同訴訟人として提起した住民訴訟において、共同訴訟人の一部の者が上訴すれば、それによって原判決の確定が妨げられ、当該訴訟は全体として上訴審に移審し、上訴の判決の効力は上訴をしなかった共同訴訟人にも及ぶが、上訴をしなかった共同訴訟人は、上訴人にはならず、上訴をした共同訴訟人のうちの一部の者が上訴を取り下げた場合は、その者は上訴人ではなくなる。 (一につき、補足意見、意見及び反対意見がある。)
解説
事案
愛媛県知事B1の在任中(昭和56年〜61年)、県の公金から次の支出がされた。
- 県東京事務所長B2が、D神社(靖国神社)の春秋の例大祭の玉串料として各5000円を9回(計4万5000円)、7月の「みたま祭」の献灯料として各7000円または8000円を4回(計3万1000円)支出した。
- 県老人福祉課長らが、愛媛県E神社の春秋の慰霊大祭の供物料として、F遺族会を通じて各1万円を9回(計9万円)支出した。
D神社分は規則により東京事務所長に権限が委任され、E神社分は老人福祉課長の専決とされていた。住民らが、本件支出は憲法20条3項・89条に反する違法な財務会計行為だとして、地方自治法242条の2第1項4号(当時)に基づき、知事らに対する損害賠償代位請求の住民訴訟を提起した。
第一審は違憲として知事への請求を認容した。原審は、少額の社会的儀礼であり遺族援護行政の一環だとして合憲と判断し、請求を棄却した。上告審係属中、上告人の一人Gが上告を取り下げた。
争点
- 県による神社の祭祀への玉串料等の公金支出は、憲法20条3項の「宗教的活動」、89条の禁止する公金支出に当たるか
- 委任・専決により補助職員が支出した場合の、知事と補助職員の損害賠償責任(過失・重過失)
- 複数住民による住民訴訟は類似必要的共同訴訟か
- 共同訴訟人の一部がした上訴・上訴取下げの効力
判旨
政教分離の一般論(規範)
- 政教分離原則は、国家が宗教とかかわり合いを持つことを全く許さないものではない。行為の目的及び効果にかんがみ、そのかかわり合いが我が国の社会的・文化的諸条件に照らし相当とされる限度を超える場合に、これを許さない趣旨である。
- 憲法20条3項の「宗教的活動」とは、目的が宗教的意義を持ち、効果が宗教に対する援助、助長、促進または圧迫、干渉等になる行為をいう。
- その判断は、行為の外形的側面にとらわれず、①行為の場所、②一般人の宗教的評価、③行為者の意図・目的・宗教的意識の有無と程度、④一般人に与える効果・影響等の諸般の事情を考慮し、社会通念に従って客観的に行う。
- 89条の禁止する公金支出も、同じ基準で判断する。
本件への当てはめ
- 本件奉納は、目的が宗教的意義を持ち、効果が特定の宗教への援助、助長、促進になる。かかわり合いは相当とされる限度を超えるから、20条3項・89条に違反する。
損害賠償責任
- 知事は指揮監督上の義務に違反し、少なくとも過失がある。
- 補助職員には重大な過失がない。
訴訟法上の判断
- 複数住民の住民訴訟は類似必要的共同訴訟である。
- 上訴しなかった共同訴訟人は上訴人にならない。
- 上訴を取り下げた者は上訴人でなくなる。
判決文から
「当該行為の目的が宗教的意義を持ち、その効果が宗教に対する援助、助長、促進又は圧迫、干渉等になるような行為をいうものと解すべきである。」
目的効果基準の定式。答案の規範部分
「当該行為の行われる場所、当該行為に対する一般人の宗教的評価、当該行為者が当該行為を行うについての意図、目的及び宗教的意識の有無、程度、当該行為の一般人に与える効果、影響等、諸般の事情を考慮し、社会通念に従って、客観的に判断しなければならない。」
当てはめで使う4つの考慮要素
「時代の推移によって既にその宗教的意義が希薄化し、慣習化した社会的儀礼にすぎないものになっているとまでは到底いうことができず」
起工式(津地鎮祭)との区別の核心
「県が特定の宗教団体との間にのみ意識的に特別のかかわり合いを持ったことを否定することができない。」
特定宗教のみとの関与を効果判断で重視
「たとえ相当数の者がそれを望んでいるとしても、そのことのゆえに、地方公共団体と特定の宗教とのかかわり合いが、相当とされる限度を超えないものとして憲法上許されることになるとはいえない。」
多数者の希望は合憲の根拠にならない
「複数の住民の提起した住民訴訟は、民訴法六二条一項にいう「訴訟ノ目的カ共同訴訟人ノ全員ニ付合一ニノミ確定スヘキ場合」に該当し、いわゆる類似必要的共同訴訟と解するのが相当である。」
住民訴訟=類似必要的共同訴訟
「自ら上訴をしなかった共同訴訟人は、上訴人にはならないものと解すべきである。」
昭和58年判決を変更した部分
この解説は AI が作成しています。判決全文に基づいて書き、別の AI が全文と照合して確認していますが、誤りが残っている可能性があります。 判決文の引用は全文と一字一句照合したものだけを載せています。大事な点は判決全文で確かめてください。
