最判平成9年11月13日
撤回遺言をさらに撤回した場合、遺言書の記載から原遺言復活の意思が明らかなら、1025条ただし書の法意により原遺言が復活する。
出題:司法H22・司法R7
- 裁判所
- 最高裁判所第一小法廷
- 事件番号
- 平成7(オ)1866 遺言無効確認等
- 裁判
- 判決・棄却
- 判例集
- 民集 第51巻10号4144頁
- 参照法条
- 民法1022条,民法1025条
判示事項・裁判要旨
裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)
判示事項
一 遺言者が遺言を撤回する遺言を更に別の遺言をもって撤回することにより当初の遺言の効力が復活する場合 二 遺言者が遺言を撤回する遺言を更に別の遺言をもって撤回した場合において当初の遺言の効力の復活が認められた事例
裁判要旨
一 遺言者が遺言を撤回する遺言を更に別の遺言をもって撤回した場合において、遺言書の記載に照らし、遺言者の意思が当初の遺言の復活を希望するものであることが明らかなときは、当初の遺言の効力が復活する。 二 遺言者が、甲遺言を乙遺言をもって撤回した後更に乙遺言を無効とし甲遺言を有効とする内容の丙遺言をしたときは、甲遺言の効力が復活する。
解説
事案
亡Dは昭和62年、自筆証書で遺産の大半を被上告人に相続させる遺言(甲遺言)をした。平成2年3月には、被上告人への遺産を減らして他の者に多く相続させる自筆証書遺言(乙遺言)をした。乙遺言の末尾には「この遺言書以前に作成した遺言書はその全部を取り消します」と記載されていた。
さらに同年11月、Dは「Gに渡した遺言状は全て無効としH弁護士のもとで作成したものを有効とする」と記載した自筆証書遺言(丙遺言)をした。「Gに渡した遺言状」は乙遺言書を、「H弁護士のもとで作成したもの」は甲遺言書を指す。
Dの死亡後、被上告人は甲遺言に基づき各不動産に相続登記をした。他の相続人である上告人らは、乙遺言で甲遺言は失効したとして、甲遺言の無効確認と法定相続分による共有登記への更正登記を求めた。被上告人は次のように反論した。
- 丙遺言は甲遺言と同一内容の新たな遺言である。
- そうでなくても、1025条ただし書の類推適用により甲遺言が復活する。
原審は甲遺言の復活を認め、請求を棄却した。
争点
- 遺言を撤回した遺言(撤回遺言)を、さらに遺言で撤回した場合に、原遺言の効力は復活するか(民法1025条本文の非復活主義との関係)
- 本件丙遺言により甲遺言の効力が復活するか
判旨
上告棄却(甲遺言の復活を認めた原審を是認)。
規範:遺言の方式に従って原遺言を撤回した遺言者が、さらにその撤回遺言を遺言の方式に従って撤回した場合を考える。この場合、遺言書の記載に照らし、遺言者の意思が原遺言の復活を希望するものであることが明らかなときは、民法1025条ただし書の法意にかんがみ、遺言者の真意を尊重して原遺言の効力の復活を認めるのが相当である。
あてはめ:Dは乙遺言で甲遺言を撤回し、さらに丙遺言で乙遺言を撤回した。丙遺言書の記載によれば、Dが甲遺言の復活を希望していたことは明らかである。したがって、甲遺言は有効な遺言と認められる。
判決文から
「遺言者の意思が原遺言の復活を希望するものであることが明らかなときは、民法一〇二五条ただし書の法意にかんがみ、遺言者の真意を尊重して原遺言の効力の復活を認めるのが相当と解される。」
復活の要件と根拠(ただし書の法意)を示す規範部分
「丙遺言書の記載によれば、亡Dが原遺言である甲遺言を復活させることを希望していたことがあきらかであるから、本件においては、甲遺言をもって有効な遺言と認めるのが相当である。」
遺言書の記載から復活意思を認定したあてはめ
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