最判平成9年1月28日
収用補償額の決定に収用委員会の裁量はなく、裁判所は正当な補償額を自ら客観的に認定・確定し、増額分には権利取得時期からの法定利息が付くとした判決
出題:司法H22・司法H25・司法R2・司法R6・予備H23・予備H27・予備H28・予備R5
- 裁判所
- 最高裁判所第三小法廷
- 事件番号
- 平成5(行ツ)11 収用補償金増額
- 裁判
- 判決・棄却
- 判例集
- 民集 第51巻1号147頁
- 参照法条
- 土地収用法48条1項,土地収用法71条,土地収用法88条,土地収用法133条,民法404条,民法419条
判示事項・裁判要旨
裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)
判示事項
一 土地収用法一三三条所定の訴訟における補償額についての審理判断の方法 二 被収用者が土地収用法一三三条所定の訴訟において補償金増額分に対する収用の時期以降の法定利率相当の金員を請求することの可否
裁判要旨
一 土地収用法一三三条所定の損失補償に関する訴訟において、裁判所は、収用委員会の補償に関する認定判断に裁量権の逸脱濫用があるかどうかを審理判断するのではなく、裁決時点における正当な補償額を客観的に認定し裁決に定められた補償額が右認定額と異なるときは、これを違法とし、正当な補償額を確定すべきである。 二 被収用者は、土地収用法一三三条所定の損失補償に関する訴訟において、正当な補償額と権利取得裁決に定められた補償額との差額のみならず、右差額に対する裁決に定められた権利取得の時期からその支払済みまで民法所定の年五分の利率に相当する金員を請求することができる。
解説
事案
土地収用で、収用土地上の小作権の存否が争いとなったため、収用委員会は土地収用法48条5項によるいわゆる不明裁決をした。起業者である上告人は、同法95条4項により、小作権があるとされた場合の小作権喪失に対する補償金を供託した。
土地所有者である被上告人は、同法133条所定の損失補償に関する訴訟を起こし、補償金の増額を求めた。
原審(広島高裁)は、裁決が認めた割合よりも小さい小作権割合を認定した。その結果、土地所有者に帰属するいわゆる底地権相当の補償額が増えたため、原審はその増額分の支払と、訴状送達の日の翌日から年5分の割合による金員の支払を命じた。
上告人は次の点を主張して上告した。
- 補償額の決定には収用委員会の裁量がある。
- 損失補償額の総額に争いはなく、小作権分は供託済みなのに、判決確定前からの遅延損害金を認めたのは違法である。
争点
- 土地収用法133条所定の損失補償に関する訴訟で、裁判所は収用委員会の補償額の判断を裁量審査(逸脱濫用の有無)にとどめるのか、それとも正当な補償額を自ら認定するのか
- 同訴訟で、被収用者は補償金の増額分に対して、権利取得の時期以降の法定利率相当額を請求できるか
- 不明裁決で小作権分が供託されている場合に、底地権相当の補償額の増額分に法定利息が付されるか
判旨
上告棄却。
規範1(審理判断の方法)
- 土地収用法による補償は完全な補償であり、補償額は通常人の経験則および社会通念に従って客観的に認定されうるものである。そのため、補償額(補償の範囲およびその額)の決定について収用委員会に裁量権はない。
- したがって、同法133条所定の訴訟で、裁判所は収用委員会の判断に裁量権の逸脱濫用があるかどうかを審理するのではない。
- 裁判所は、証拠に基づき裁決時点における正当な補償額を客観的に認定する。裁決の補償額がこれと異なるときは、裁決の補償額を違法とし、正当な補償額を確定する。
規範2(法定利息)
- 被収用者は、正当な補償額と裁決額との差額に加えて、その差額に対する裁決に定められた権利取得の時期から支払済みまで、民法所定の年5分の法定利率に相当する金員を請求できる。
- 本件の底地権相当額の不足分は、供託の対象となっている債務(小作権喪失の補償)とは別の債務である。したがって、権利取得の時期より後の法定利率相当額が付される。
判決文から
「完全な補償、すなわち、収用の前後を通じて被収用者の有する財産価値を等しくさせるような補償をすべきであり」
完全補償の意味(昭和48年判決を引用)
「補償の範囲及びその額(以下、これらを「補償額」という。)の決定につき収用委員会に裁量権が認められるものと解することはできない。」
収用委員会の裁量を否定した核心部分
「裁判所は、収用委員会の補償に関する認定判断に裁量権の逸脱濫用があるかどうかを審理判断するものではなく、証拠に基づき裁決時点における正当な補償額を客観的に認定し」
裁量審査ではなく実額審理であること・基準時
「裁決に定められた補償額が右認定額と異なるときは、裁決に定められた補償額を違法とし、正当な補償額を確定すべきものと解するのが相当である。」
違法判断と正当な補償額の確定
「被収用者は、正当な補償額と裁決に定められていた補償額との差額のみならず、右差額に対する権利取得の時期からその支払済みに至るまで民法所定の年五分の法定利率に相当する金員を請求することができる」
増額分への法定利息の起算点
この解説は AI が作成しています。判決全文に基づいて書き、別の AI が全文と照合して確認していますが、誤りが残っている可能性があります。 判決文の引用は全文と一字一句照合したものだけを載せています。大事な点は判決全文で確かめてください。
