最判平成8年12月17日
被相続人と同居していた相続人には、特段の事情がない限り、遺産分割時までの建物使用貸借が推認され、不当利得は成立しない
出題:司法H24・司法H26・司法H30・司法R5・予備H24・予備H27
- 裁判所
- 最高裁判所第三小法廷
- 事件番号
- 平成5(オ)1946 土地建物共有物分割等
- 裁判
- 判決・破棄差戻
- 判例集
- 民集 第50巻10号2778頁
- 参照法条
- 民法249条,民法593条,民法703条,民法898条,民訴法185条
判示事項・裁判要旨
裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)
判示事項
遺産である建物の相続開始後の使用について被相続人と相続人との間に使用貸借契約の成立が推認される場合
裁判要旨
共同相続人の一人が相続開始前から被相続人の許諾を得て遺産である建物において被相続人と同居してきたときは、特段の事情のない限り、被相続人と右の相続人との間において、右建物について、相続開始時を始期とし、遺産分割時を終期とする使用貸借契約が成立していたものと推認される。
解説
事案
Dが昭和63年に死亡した。Dの遺産は、一筆の土地とその上の一棟の建物からなる本件不動産である。被上告人B1は、Dの遺言により16分の2の割合で遺産の包括遺贈を受けた者である。上告人ら及びその余の被上告人らはDの相続人である。
上告人らは、Dの生前から本件不動産でDの家族として同居生活をしてきた。相続開始後も、本件不動産の全部を占有・使用している。
被上告人らは、上告人らが本件不動産全部を占有・使用することで持分に応じた賃料相当額の損害を被っていると主張した。そこで、不法行為に基づく損害賠償または不当利得返還として、各自の持分に応じた賃料相当額の支払を求めた。
原審(東京高裁)は不当利得返還請求を認容した。その理由は、自己の持分を超えて共有物全部を占有・使用する持分権者は、格別の合意がない限り、他の持分権者の損失の下に法律上の原因なく利益を得ており、賃料相当額に依拠した金額の不当利得返還義務を負う、というものである。
争点
- 遺産である建物に被相続人と同居していた共同相続人が、相続開始後も建物全部を使用する場合、被相続人との間に使用貸借契約の成立が推認されるか
- 使用貸借契約に基づく使用である場合に、他の共同相続人等に対する不当利得(民法703条)が成立するか
判旨
原判決中上告人ら敗訴部分を破棄し、差し戻した。
規範:共同相続人の一人が、相続開始前から被相続人の許諾を得て、遺産である建物で被相続人と同居してきたとき。この場合、特段の事情のない限り、被相続人と同居相続人との間に、次の合意があったものと推認される。
- 内容:相続開始後も、遺産分割により建物の所有関係が最終的に確定するまでの間、引き続き同居相続人に建物を無償で使用させる。
- 契約の構造:被相続人の死亡時から少なくとも遺産分割終了までの間、被相続人の地位を承継した他の相続人等を貸主とし、同居相続人を借主とする使用貸借契約関係が存続する(相続開始時を始期、遺産分割時を終期とする使用貸借)。
帰結:同居相続人の建物の占有・使用がこの使用貸借に基づくものであれば、その利益に法律上の原因がないとはいえない。したがって、他の相続人等の不当利得返還請求は理由がない。
本件への当てはめ:使用貸借契約の成否等を審理しないまま直ちに不当利得の成立を認めた原審には、法令の解釈適用の誤りがある。
判決文から
「引き続き右同居の相続人にこれを無償で使用させる旨の合意があったものと推認されるのであって」
擬制ではなく「推認」である点
「被相続人の地位を承継した他の相続人等が貸主となり、右同居の相続人を借主とする右建物の使用貸借契約関係が存続することになるものというべきである。」
相続後の貸主・借主の構成
「遺産分割までは同居の相続人に建物全部の使用権原を与えて相続開始前と同一の態様における無償による使用を認めることが、被相続人及び同居の相続人の通常の意思に合致するといえるからである。」
推認の根拠=当事者の通常の意思
「上告人らの本件建物の占有、使用が右使用貸借契約に基づくものであるならば、これにより上告人らが得る利益に法律上の原因がないということはできないから、被上告人らの不当利得返還請求は理由がないものというべきである。」
使用貸借が「法律上の原因」となる
この解説は AI が作成しています。判決全文に基づいて書き、別の AI が全文と照合して確認していますが、誤りが残っている可能性があります。 判決文の引用は全文と一字一句照合したものだけを載せています。大事な点は判決全文で確かめてください。
