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最判平成8年10月31日

共有物分割では、特段の事情があれば全面的価格賠償も許される。ただし取得者の支払能力の確定が必要であるとした判例

民法占有権・所有権・共有処分権主義本試験で 2 問(短答 2・論文 0)

出題:司法H27・司法R3

裁判所
最高裁判所第一小法廷
事件番号
平成3(オ)1380 持分権確認並びに共有物分割
裁判
判決・破棄差戻
判例集
民集 第50巻9号2563頁
参照法条
民法258条

判示事項・裁判要旨

裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)

判示事項

一 いわゆる全面的価格賠償の方法による共有物分割の許否 二 共有物を取得させるべき者に賠償金の支払能力があることを確定しないでいわゆる全面的価格賠償の方法により共有物を分割した原審の判断に違法があるとされた事例

裁判要旨

一 民法二五八条により共有物の分割をする場合において、当該共有物を共有者のうちの特定の者に取得させるのが相当であると認められ、かつ、その価格が適正に評価され、当該共有物を取得する者に支払能力があって、他の共有者にはその持分の価格を取得させることとしても共有者間の実質的公平を害しないと認められる特段の事情があるときは、共有物を共有者のうちの一人の単独所有又は数人の共有とし、これらの者から他の共有者に対して持分の価格を賠償させる方法(いわゆる全面的価格賠償の方法)によることも許される。 二 共有不動産の分割をする場合において、右不動産を共有者の一人である甲に取得させるのが相当でないとはいえないとしても、甲に他の共有者に対する賠償金の支払能力がある事実を確定することなく、直ちにいわゆる全面的価格賠償の方法を採用し、右不動産を甲の単独所有とした上、甲に対して他の共有者の持分の価格の賠償を命じた原審の判断には、違法がある。

判決全文(裁判所ウェブサイト)

解説

事案

上告人A、その夫F、二女Gの3名は、昭和40年、かつて親とその先代が所有していた本件不動産(土地と建物)を、持分各3分の1でH信用組合から共同で買い戻した。Fの死亡と相続により、持分はAが18分の9、その余の上告人らが各18分の1、Gが18分の6となった。

本件建物は土地上ほぼ一杯に建ち、構造上一体であるため区分所有にできず、現物分割は不可能である。Gは昭和48年以来本件建物に住み、隣接建物で薬局を営んで生計を立てていた。上告人らは別に住んでおり、本件不動産を取得する必要は必ずしもない。

Gが分割協議に応じないため、上告人らが共有物分割の訴えを提起した。上告人らは競売による分割を、Gは自らの単独取得と価格賠償を希望した。鑑定評価額は826万3000円で、競売してもこれより高く売れる可能性は低い。上告人らの持分価格は合計550万円余である。

第一審は競売分割を命じた。原審はこれを変更し、Gの単独所有としてGに価格賠償を命じた。ただし、Gの支払能力は何ら確定していなかった。

争点

  • 民法258条による裁判上の共有物分割で、全面的価格賠償の方法が許されるか
  • 全面的価格賠償が許される要件(特段の事情)は何か。取得者の支払能力の確定は必要か

判旨

結論:原判決中、共有物分割請求に関する部分を破棄し、差し戻した。全面的価格賠償という方法自体は許容し、本件ではその要件の認定が欠けていると判断した。

規範:裁判所は、次の事情を総合的に考慮する。

  • 共有物の性質・形状
  • 共有関係の発生原因
  • 共有者の数・持分割合
  • 共有物の利用状況
  • 分割された場合の経済的価値
  • 分割方法についての共有者の希望とその合理性の有無等

そのうえで、以下の特段の事情があるときは、共有物を共有者の一人の単独所有または数人の共有とし、その者から他の共有者に持分の価格を賠償させる方法(全面的価格賠償)による分割も許される。

  • ①当該共有物を特定の者に取得させるのが相当であること
  • ②その価格が適正に評価されること
  • ③取得者に支払能力があること
  • ④他の共有者に持分の価格を取得させても共有者間の実質的公平を害しないこと

あてはめ:Gに取得させることは相当でないとはいえない。しかし、Gの支払能力を確定せずに全面的価格賠償を採用した原判決には、法令の解釈適用の誤り、ひいては審理不尽・理由不備の違法がある。

判決文から

「その本質は非訟事件であって、法は、裁判所の適切な裁量権の行使により、共有者間の公平を保ちつつ、当該共有物の性質や共有状態の実状に合った妥当な分割が実現されることを期したものと考えられる。」

共有物分割の非訟性と裁判所の裁量が出発点

「すべての場合にその分割方法を現物分割又は競売による分割のみに限定し、他の分割方法を一切否定した趣旨のものとは解されない。」

条文の分割方法は限定列挙でないとした部分

「当該共有物の性質及び形状、共有関係の発生原因、共有者の数及び持分の割合、共有物の利用状況及び分割された場合の経済的価値、分割方法についての共有者の希望及びその合理性の有無等の事情を総合的に考慮し」

答案で使う総合考慮の考慮要素

「全面的価格賠償の方法による共有物分割が許されるのは、これにより共有者間の実質的公平が害されない場合に限られるのであって、そのためには、賠償金の支払義務を負担する者にその支払能力があることを要する」

支払能力が必須要件であることを明示

この解説は AI が作成しています。判決全文に基づいて書き、別の AI が全文と照合して確認していますが、誤りが残っている可能性があります。 判決文の引用は全文と一字一句照合したものだけを載せています。大事な点は判決全文で確かめてください。