最判平成8年10月29日
背信的悪意者からの転得者も、自身が背信的悪意者と評価されない限り、177条の第三者として第一譲受人に対抗できる
出題:司法H23・司法H26・司法H30・司法R1・司法R2・司法R4・予備H23
- 裁判所
- 最高裁判所第三小法廷
- 事件番号
- 平成5(オ)956 公道確認等
- 裁判
- 判決・その他
- 判例集
- 民集 第50巻9号2506頁
- 参照法条
- 民法177条
判示事項・裁判要旨
裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)
判示事項
背信的悪意者からの転得者と民法一七七条の第三者
裁判要旨
所有者甲から乙が不動産を買い受け、その登記が未了の間に、甲から丙が当該不動産を二重に買い受け、更に丙から転得者丁が買い受けて登記を完了した場合に、丙が背信的悪意者に当たるとしても、丁は、乙に対する関係で丁自身が背信的悪意者と評価されるのでない限り、当該不動産の所有権取得をもって乙に対抗することができる。
解説
事案
被上告人(松山市)は昭和30年、Dから本件土地を買い受けて代金を完済した。しかし分筆登記の手違いで、市名義の登記はされないままだった。市は本件土地を整備し、遅くとも昭和44年7月までには側溝・市章入りマンホール・アスファルト舗装を備えた市道として一般の通行に供していた。
昭和57年、D側のFが「所在の分からない土地」として売却を持ちかけた。G(E産興等を実質的に経営する者)は現地を確認したうえで、E産興の代理人として本件土地を代金500万円で買い受け、登記を経た。道路でなければ価格は約6000万円であり、Gは「土地が実在しなくても代金返還を求めない」旨の念書まで差し入れていた。
その後、登記名義はGが実質経営するH不動産、I社へと順に移った。上告人は昭和60年にIから買い受けて登記を経由し、土地上にプレハブ建物とバリケードを設置した。
市は上告人に対し、次の請求をした。
- 所有権に基づく真正な登記名義の回復を原因とする移転登記手続
- 道路管理権に基づく市道敷地確認
- 建物等の撤去
上告人は、市が仮処分の執行で建物等を撤去したことが不法行為に当たるとして、損害賠償を請求した。原審は、E産興が背信的悪意者である以上、その転得者である上告人も市に対抗できないとして、市の移転登記請求を認容した。
争点
- 二重譲受人E産興は背信的悪意者に当たるか
- 背信的悪意者からの転得者は、第一譲受人との関係で民法177条の「第三者」に当たるか(前主の背信性が承継されるか)
- 背信的悪意者が所有名義人であった間にされた道路の供用開始決定の効力、および供用開始後の取得者に対する道路管理権の行使の可否
判旨
登記請求部分は破棄差戻し、その余の上告は棄却とした。
規範:甲から乙が不動産を買い受け、登記未了の間に丙が甲から二重に買い受け、さらに丙から転得者丁が買い受けて登記を完了した場合を考える。この場合、たとい丙が背信的悪意者に当たるとしても、丁は、乙との関係で丁自身が背信的悪意者と評価されるのでない限り、所有権取得を乙に対抗できる。
本件へのあてはめ
- E産興は、本件土地が市道敷地として通行の用に供されていることを知りながら、市の登記未了を奇貨とし、不当な利得を得る目的で取得した。よって背信的悪意者に当たる(原審のこの判断は正当)。
- しかし上告人は背信的悪意者からの転得者にすぎない。上告人自身が背信的悪意者かを改めて判断しないまま対抗できないとした原審には、民法177条の解釈適用の誤りがある。
- 市はE産興に対しては登記なくして所有権を対抗できた。したがって昭和58年の区域決定・供用開始決定は無権原でされたものではなく、有効である。その後の取得者は道路法の制限が加わった土地を取得したにすぎない。よって、道路管理権に基づく敷地確認・撤去請求は認められ、上告人の損害賠償請求は棄却される。
判決文から
「たとい丙が背信的悪意者に当たるとしても、丁は、乙に対する関係で丁自身が背信的悪意者と評価されるのでない限り、当該不動産の所有権取得をもって乙に対抗することができるものと解するのが相当である。」
転得者保護の規範そのもの
「乙は、丙が登記を経由した権利を乙に対抗することができないことの反面として、登記なくして所有権取得を丙に対抗することができるというにとどまり、甲丙間の売買自体の無効を来すものではなく」
背信的悪意者も無権利者ではないという理由①
「登記を経由した者がこの法理によって「第三者」から排除されるかどうかは、その者と第一譲受人との間で相対的に判断されるべき事柄であるからである。」
背信性の相対的判断という理由②
「本件土地が市道敷地として一般市民の通行の用に供されていることを知りながら、被上告人が本件土地の所有権移転登記を経由していないことを奇貨として、不当な利得を得る目的で本件土地を取得しようとしたもの」
背信的悪意者の認定の具体例
この解説は AI が作成しています。判決全文に基づいて書き、別の AI が全文と照合して確認していますが、誤りが残っている可能性があります。 判決文の引用は全文と一字一句照合したものだけを載せています。大事な点は判決全文で確かめてください。
