クロロキン薬害訴訟
医薬品の承認等と規制権限不行使の国賠違法の判断枠組みを示し、クロロキン製剤につき違法性を否定した判例
出題:司法H26・司法R2・司法R7・予備H29・予備R8
- 裁判所
- 最高裁判所第二小法廷
- 事件番号
- 平成1(オ)1260 損害賠償、民訴法一九八条二項による返還及び損害賠償
- 裁判
- 判決・棄却
- 判例集
- 民集 第49巻6号1600頁
- 参照法条
- 国家賠償法1条1項,薬事法(昭和54年法律第56号による改正前のもの)14条,薬事法(昭和54年法律第56号による改正前のもの)41条,薬事法(昭和54年法律第56号による改正前のもの)44条,薬事法(昭和54年法律第56号による改正前のもの)49条,薬事法(昭和54年法律第56号による改正前のもの)52条
判示事項・裁判要旨
裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)
判示事項
一 厚生大臣による医薬品の日本薬局方への収載及び製造の承認等の行為と国家賠償法一条一項の違法性 二 厚生大臣による医薬品の日本薬局方への収載及び製造の承認等の行為が国家賠償法一条一項の適用上違法ではないとされた事例 三 厚生大臣が医薬品の副作用による被害の発生を防止するために薬事法上の権限を行使しなかったことと国家賠償法一条一項の違法性 四 厚生大臣が医薬品の副作用による被害の発生を防止するために薬事法上の権限を行使しなかったことが国家賠償法一条一項の適用上違法とはいえないとされた事例
裁判要旨
一 厚生大臣による医薬品の日本薬局方への収載及び製造の承認等の行為は、その時点における医学的、薬学的知見の下で、当該医薬品がその副作用を考慮してもなお有用性を肯定し得るときは、国家賠償法一条一項の適用上違法ではない。 二 厚生大臣がクロロキン製剤につき日本薬局方への収載及び製造の承認等の行為をした昭和三五年から同三九年までの間は、その副作用であるクロロキン網膜症に関する報告が内外の文献に現れ始めたばかりで、報告内容も長期連用の場合のクロロキン網膜症の発症の危険性及び早期発見のための眼科的検査の必要性を指摘するにとどまり、クロロキン製剤の有用性を否定するものではなく、我が国で報告されたクロロキン網膜症の症例は少数であったなど判示の事実関係の下においては、厚生大臣の右各行為は、国家賠償法一条一項の適用上違法ではない。 三 厚生大臣が医薬品の副作用による被害の発生を防止するために薬事法上の権限を行使しなかったことが、当該医薬品に関するその時点における医学的、薬学的知見の下において、薬事法の目的及び厚生大臣に付与された権限の性質等に照らし、その許容される限度を逸脱して著しく合理性を欠くと認められるときは、右権限の不行使は、国家賠償法一条一項の適用上違法となる。 四 昭和三四年から同五〇年までの間にクロロキン製剤を服用した患者らがその副作用であるクロロキン網膜症にり患した場合において、この間のクロロキン網膜症に関する医学的、薬学的知見の内容がクロロキン製剤の有用性を否定するまでのものではなく、クロロキン製剤は、難病である腎疾患及びてんかんに対する有効性が認められ、クロロキン網膜症を考慮してもなお有用性を肯定し得るものとして臨床の現場でその使用が是認されていたこと、厚生大臣は、昭和四二年以降、クロロキン製剤を劇薬及び要指示医薬品に指定し、使用上の注意事項等を定めて医薬品製造業者等に対する行政指導によりこれを添付文書等に記載させるなどの措置を講じ、右各措置がその目的及び手段において一応の合理性を有することなど判示の事情があるときは、厚生大臣が右各措置以外に薬事法上の権限を行使してクロロキン製剤の日本薬局方からの削除、製造の承認の取消し等の措置を採らなかったことは、国家賠償法一条一項の適用上違法とはいえない。
解説
事案
クロロキン製剤は当初マラリアの治療薬として開発され、後にエリテマトーデスや関節リウマチ、わが国では腎疾患やてんかんの治療にも使われた。厚生大臣は昭和35年から39年にかけて、次の行為をした。
- キドラの製造許可
- リン酸クロロキン等の日本薬局方への収載
- キドラ・CQCの製造承認と効能追加の承認
上告人らは、昭和34年から50年までの間にこれらの製剤を服用して不可逆性のクロロキン網膜症に罹患した患者とその家族である。厚生大臣による承認等の違法と、被害防止措置を採らなかった違法を主張して、国に国家賠償法1条1項に基づく損害賠償を請求した。
網膜症は昭和34年に外国で初めて報告され、わが国の症例報告は昭和37年から増加した。厚生大臣は次の措置をとった。
- 昭和42年:劇薬・要指示医薬品に指定
- 昭和44年:使用上の注意事項を定め、行政指導で添付文書に記載させた
- 昭和47年:視力検査実施事項を定めた
昭和51年の再評価で、腎疾患については有用性なし、てんかんについては有効と判定する根拠なしとされた。原審は請求を棄却し、上告も棄却された。
争点
- 医薬品の日本薬局方収載・製造承認等の行為が国家賠償法1条1項の適用上違法となるのはどのような場合か
- 明文規定がなくても、厚生大臣は日本薬局方からの削除や製造承認の取消しをする権限を有するか
- 副作用被害防止のための薬事法上の規制権限の不行使が国家賠償法1条1項の適用上違法となる基準
- 本件で薬局方収載等の行為や権限不行使が違法といえるか
判旨
結論:承認等の作為も、権限の不行使も、いずれも国家賠償法1条1項の適用上違法ではない(上告棄却)。
規範1(作為:薬局方収載・製造承認等)
- その時点における医学的、薬学的知見の下で、当該医薬品が副作用を考慮してもなお有用性を肯定し得るときは、国賠法1条1項の適用上違法とならない。
- 製造承認と目的・性質を同じくする製造許可も同様である。
規範2(不作為:規制権限の不行使)
- 副作用被害が発生しても、権限の不行使が直ちに違法となるのではない。
- 副作用を含めた当該医薬品に関するその時点の医学的、薬学的知見の下で、薬事法の目的と厚生大臣に付与された権限の性質等に照らし、権限の不行使が許容される限度を逸脱して著しく合理性を欠くと認められるときに、被害者との関係で違法となる。
権限の存在:医薬品が効能・効果を著しく上回る有害な副作用を有することが後に判明し、有用性がないと認められるに至った場合、厚生大臣は明文規定がなくても、薬局方からの削除や製造承認の取消しをすることができる。
判決文から
「その時点における医学的、薬学的知見の下で、当該医薬品がその副作用を考慮してもなお有用性を肯定し得るときは、厚生大臣の薬局方収載等の行為は、国家賠償法一条一項の適用上違法の評価を受けることはないというべきである。」
承認等の作為についての違法判断基準
「右権限の不行使がその許容される限度を逸脱して著しく合理性を欠くと認められるときは、その不行使は、副作用による被害を受けた者との関係において同項の適用上違法となるものと解するのが相当である。」
規制権限不行使の違法判断基準(答案の規範)
「その態様、時期等については、性質上、厚生大臣のその時点の医学的、薬学的知見の下における専門的かつ裁量的な判断によらざるを得ない。」
権限行使の専門的・裁量的性質を認めた部分
「厚生大臣は、当該医薬品を日本薬局方から削除し、又はその製造の承認を取り消すことができると解するのが相当である。」
明文なき削除・承認取消権限を肯定
「医薬品の安全性の確保及び副作用による被害の防止については、当該医薬品を製造、販売する者が第一次的な義務を負うものであり」
措置の合理性を肯定する理由づけ
この解説は AI が作成しています。判決全文に基づいて書き、別の AI が全文と照合して確認していますが、誤りが残っている可能性があります。 判決文の引用は全文と一字一句照合したものだけを載せています。大事な点は判決全文で確かめてください。
