第一次家永教科書訴訟
高校教科書検定は検閲に当たらず、憲法21条・23条・26条に反しない。合否判定は文部大臣の合理的裁量に委ねられるとした。
出題:司法H22・司法H28・司法R1・司法R5・司法R7・予備H28・予備R7・予備R8
- 裁判所
- 最高裁判所第三小法廷
- 事件番号
- 昭和61(オ)1428 損害賠償請求事件
- 裁判
- 判決・棄却
- 判例集
- 民集 第47巻5号3483頁
- 参照法条
- 学校教育法21条1項(昭和45年法律第48号による改正前のもの),学校教育法51条(昭和49年法律第70号による改正前のもの),旧教科用図書検定規則(昭和23年文部省令第4号)1ないし3条,憲法21条,憲法23条,憲法26条,教育基本法10条,国家賠償法1条1項
判示事項・裁判要旨
裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)
判示事項
一 学校教育法二一条一項(昭和四五年法律第四八号による改正前のもの)、五一条(昭和四九年法律第七〇号による改正前のもの)、旧教科用図書検定規則(昭和二三年文部省令第四号)、旧教科用図書検定基準(昭和三三年文部省告示第八六号)に基づく高等学校用の教科用図書の検定と憲法二六条、教育基本法一〇条 二 学校教育法二一条一項(昭和四五年法律第四八号による改正前のもの)、五一条(昭和四九年法律第七〇号による改正前のもの)、旧教科用図書検定規則(昭和二三年文部省令第四号)、旧教科用図書検定基準(昭和三三年文部省告示第八六号)に基づく高等学校用の教科用図書の検定と憲法二一条二項前段 三 学校教育法二一条一項(昭和四五年法律第四八号による改正前のもの)、五一条(昭和四九年法律第七〇号による改正前のもの)、旧教科用図書検定規則(昭和二三年文部省令第四号)、旧教科用図書検定基準(昭和三三年文部省告示第八六号)に基づく高等学校用の教科用図書の検定と憲法二一条一項 四 学校教育法二一条一項(昭和四五年法律第四八号による改正前のもの)、五一条(昭和四九年法律第七〇号による改正前のもの)、旧教科用図書検定規則(昭和二三年文部省令第四号)、旧教科用図書検定基準(昭和三三年文部省告示第八六号)に基づく高等学校用の教科用図書の検定と憲法二三条 五 学校教育法二一条一項(昭和四五年法律第四八号による改正前のもの)、五一条(昭和四九年法律第七〇号による改正前のもの)、旧教科用図書検定規則(昭和二三年文部省令第四号)、旧教科用図書検定基準(昭和三三年文部省告示第八六号)に基づく高等学校用の教科用図書の検定における文部大臣の裁量的判断と国家賠償法上の違法
裁判要旨
一 学校教育法二一条一項(昭和四五年法律第四八号による改正前のもの)、五一条(昭和四九年法律第七〇号による改正前のもの)、旧教科用図書検定規則(昭和二三年文部省令第四号)、旧教科用図書検定基準(昭和三三年文部省告示第八六号)に基づく高等学校用の教科用図書の検定は、憲法二六条、教育基本法一〇条に違反しない。 二 学校教育法二一条一項(昭和四五年法律第四八号による改正前のもの)、五一条(昭和四九年法律第七〇号による改正前のもの)、旧教科用図書検定規則(昭和二三年文部省令第四号)、旧教科用図書検定基準(昭和三三年文部省告示第八六号)に基づく高等学校用の教科用図書の検定は、憲法二一条二項前段に違反しない。 三 学校教育法二一条一項(昭和四五年法律第四八号による改正前のもの)、五一条(昭和四九年法律第七〇号による改正前のもの)、旧教科用図書検定規則(昭和二三年文部省令第四号)、旧教科用図書検定基準(昭和三三年文部省告示第八六号)に基づく高等学校用の教科用図書の検定は、憲法二一条一項に違反しない。 四 学校教育法二一条一項(昭和四五年法律第四八号による改正前のもの)、五一条(昭和四九年法律第七〇号による改正前のもの)、旧教科用図書検定規則(昭和二三年文部省令第四号)、旧教科用図書検定基準(昭和三三年文部省告示第八六号)に基づく高等学校用の教科用図書の検定は、憲法二三条に違反しない。 五 学校教育法二一条一項(昭和四五年法律第四八号による改正前のもの)、五一条(昭和四九年法律第七〇号による改正前のもの)、旧教科用図書検定規則(昭和二三年文部省令第四号)、旧教科用図書検定基準(昭和三三年文部省告示第八六号)に基づく高等学校用の教科用図書の検定における合否の判定等の判断は、文部大臣の合理的な裁量にゆだねられているが、文部大臣の諮問機関である教科用図書検定調査審議会の判断の過程に、申請原稿の記述内容又は欠陥の指摘の根拠となるべき検定当時の学説状況等についての認識や、検定基準に違反するとの評価等に関して看過し難い過誤があり、文部大臣の判断がこれに依拠してされたと認められる場合には、右判断は、裁量権の範囲を逸脱したものとして、国家賠償法上違法となる。
解説
事案
上告人(家永三郎)は高等学校用日本史教科書を執筆し、文部大臣の検定を申請した。検定の根拠は、学校教育法21条1項・51条(当時)、旧教科用図書検定規則、旧教科用図書検定基準である。
- 昭和37年度:教科用図書検定調査審議会は申請原稿に323箇所の欠陥を指摘した。絶対条件は「合」とされたが、必要条件の合計評点が784点(800点以上で合)にとどまり、不合格とされた。
- 昭和38年度:290箇所の欠陥が指摘されたが、評点は846点で、欠陥修正後の再審査を条件とする条件付合格とされた。
- 文部大臣は両年度とも答申どおりに処分した。
上告人はこれらの検定処分が違憲・違法であるとして、国家賠償を請求した。上告人は昭和32年にも検定不合格となっており、その図書とほとんど同じ内容のものを昭和34年に一般図書として発行していた。原審は請求を退け、上告人が上告した。
争点
- 教科書検定は国の教育内容への介入として憲法26条・教育基本法10条に反するか
- 教科書検定は憲法21条2項前段の「検閲」に当たるか
- 教科書検定は表現の自由(憲法21条1項)を侵害するか。検定基準は不明確か
- 教科書検定は学問の自由(憲法23条)を侵害するか
- 検定の根拠は法律の委任を欠くか。検定手続は憲法31条の法意に反するか
- 検定における文部大臣の判断が国家賠償法1条1項上違法となるのはどのような場合か
判旨
上告棄却。本件検定は合憲であり、国家賠償法上も違法ではない。
- 26条:国は、必要かつ相当と認められる範囲で教育内容を決定する権能を有する(旭川学テ判決)。検定基準は、教育の正確性、中立・公正、全国的な一定水準の確保という要請を実現するための必要かつ合理的な範囲を超えない。
- 21条2項(検閲):検閲とは、行政権が主体となって、思想内容等の表現物を対象とし、発表禁止を目的として、網羅的一般的に発表前に内容を審査し、不適当なものの発表を禁止するものをいう(税関検査判決の定義)。本件検定は一般図書としての発行を妨げず、発表禁止目的も発表前の審査という特質もないから、検閲に当たらない。
- 21条1項:制限が必要とされる程度と、制限される自由の内容・性質、具体的制限の態様・程度とを較量する。その結果、本件の制限は合理的で必要やむを得ない限度のものである。
- 23条:教科書は学術研究の結果の発表を目的としない。検定は教科書の形態での発表を制限するにすぎないから、23条に反しない。
- 国賠法上の違法:合否判定は文部大臣の合理的裁量に委ねられる。審議会の判断過程に、学説状況・教育状況の認識や検定基準違反との評価について看過し難い過誤があり、文部大臣の判断がこれに依拠してされたと認められる場合には、裁量権の範囲を逸脱したものとして違法となる。
判決文から
「不合格図書をそのまま一般図書として発行し、教師、児童、生徒を含む国民一般にこれを発表すること、すなわち思想の自由市場に登場させることは、何ら妨げられるところはない」
検閲・事前抑制性を否定する事実上の核心
「本件検定は、前記のとおり、一般図書としての発行を何ら妨げるものではなく、発表禁止目的や発表前の審査などの特質がないから、検閲に当たらず」
検閲の定義へのあてはめ
「制限が必要とされる程度と、制限される自由の内容及び性質、これに加えられる具体的制限の態様及び程度等を較量して決せられるべきものである」
21条1項の判断枠組み(利益較量)
「教科書の形態における研究結果の発表を制限するにすぎない」
23条違反を否定する理由
「学術的、教育的な専門技術的判断であるから、事柄の性質上、文部大臣の合理的な裁量に委ねられるものというべきである」
検定判断に裁量を認める根拠
「本件検定による制約は、思想の自由市場への登場という表現の自由の本質的な部分に及ぶものではなく」
31条の判断でも制約の軽さを考慮
この解説は AI が作成しています。判決全文に基づいて書き、別の AI が全文と照合して確認していますが、誤りが残っている可能性があります。 判決文の引用は全文と一字一句照合したものだけを載せています。大事な点は判決全文で確かめてください。
