奈良民商事件
所得を過大に認定した更正でも、職務上通常尽くすべき注意義務を尽くさず漫然と更正した場合に限り国賠法上違法となるとした
出題:司法H23・予備H27・予備R3・予備R5
- 裁判所
- 最高裁判所第一小法廷
- 事件番号
- 平成1(オ)930 損害賠償
- 裁判
- 判決・破棄自判
- 判例集
- 民集 第47巻4号2863頁
- 参照法条
- 国家賠償法1条1項
判示事項・裁判要旨
裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)
判示事項
収入金額を確定申告の額より増額しながら必要経費の額を確定申告の額のままとしたため所得金額を過大に認定した所得税の更正が国家賠償法上違法でないとされた事例
裁判要旨
税務署長が収入金額を確定申告の額より増額しながら必要経費の額を確定申告の額のままとして所得税の更正をしたため、所得金額を過大に認定する結果となったとしても、確定申告の必要経費の額を上回る金額を具体的に把握し得る客観的資料等がなく、また、納税義務者において税務署長の行う調査に協力せず、資料等によって確定申告の必要経費が過少であることを明らかにしないために、右の結果が生じたなど判示の事実関係の下においては、右更正につき国家賠償法一条一項にいう違法があったということはできない。
解説
事案
紙箱製造加工業者X(被上告人)は、昭和46〜48年分の事業所得について確定申告(46年分は修正申告)をした。奈良税務署長は調査のため職員を派遣し帳簿書類の提示を求めたが、XはD商工会事務局員の立会いを要求して応じなかった。職員は申告外収入の発覚を告知し、立会いなしでの協力を数回説得したが、Xは態度を変えず、帳簿調査はできなかった。
そこで署長は得意先・取引銀行への反面調査で収入金額を把握した。そして、その収入金額から申告書記載どおりの必要経費を控除して所得金額を算定し、各更正をした。48年分の収入は申告の約2倍とされた。
Xは更正の取消訴訟を提起し、控訴審で一部取消判決を得て確定した。収入は更正額を上回ると認定されたが、必要経費が申告額を上回ると認定されたためである。続いてXは国(上告人)に国家賠償を請求した。原審は、48年分更正のうち売上原価・消耗品費・給料賃金を比例的に増額推計しなかった部分を違法として、請求を一部認容した。
争点
- 所得金額を過大に認定した更正は、直ちに国賠法1条1項の違法となるか(国賠違法の判断基準)
- 収入金額を増額しながら必要経費を申告額のまま認定した更正は、国賠法上違法か
判旨
原判決中国敗訴部分を破棄し、Xの控訴を棄却した(請求全部棄却)。
規範:税務署長のする所得税の更正は、所得金額を過大に認定していたとしても、直ちに国賠法1条1項の違法となるものではない。違法となるのは、税務署長が資料を収集し、これに基づき課税要件事実を認定・判断する上で、職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と更正をしたと認め得るような事情がある場合に限られる。
必要経費の認定:次の二つを満たす以上、申告書記載の金額を採用して必要経費を認定することは何ら違法でない。
- 客観的資料等により申告額を上回る必要経費を具体的に把握し得るなどの特段の事情がないこと
- 納税義務者が調査に協力せず、資料等で申告額が過少であることを明らかにしないこと
本件の過大認定は、専らXが必要経費を過少に申告し、更正まで訂正しなかったことに起因する。したがって、48年分更正を含め違法はない。
判決文から
「税務署長のする所得税の更正は、所得金額を過大に認定していたとしても、そのことから直ちに国家賠償法一条一項にいう違法があったとの評価を受けるものではなく」
取消違法と国賠違法を区別する出発点
「税務署長が資料を収集し、これに基づき課税要件事実を認定、判断する上において、職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と更正をしたと認め得るような事情がある場合に限り、右の評価を受けるものと解するのが相当である。」
職務行為基準説の規範そのもの
「必要経費は所得算定の上での減算要素であって納税義務者に有利な課税要件事実である。」
申告額採用を適法とする実質的理由
「専ら被上告人において本件係争各年分の申告書に必要経費を過少に記載し、本件各更正に至るまでこれを訂正しようとしなかったことに起因するものということができ」
過大認定の原因を納税者側に帰した当てはめ
この解説は AI が作成しています。判決全文に基づいて書き、別の AI が全文と照合して確認していますが、誤りが残っている可能性があります。 判決文の引用は全文と一字一句照合したものだけを載せています。大事な点は判決全文で確かめてください。
