もんじゅ訴訟
原子炉周辺住民の無効確認訴訟の原告適格を認め、民事差止訴訟の提起は行訴法36条の補充性を否定しないとした判例
出題:司法H25・司法H26・司法R2・司法R7・予備R6・予備R7
- 裁判所
- 最高裁判所第三小法廷
- 事件番号
- 平成1(行ツ)131 原子炉設置許可処分無効確認等
- 裁判
- 判決・棄却
- 判例集
- 民集 第46巻6号1090頁
- 参照法条
- 行政事件訴訟法36条
判示事項・裁判要旨
裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)
判示事項
一 行政事件訴訟法三六条にいう「その効力の有無を前提とする現在の」法律関係に関する訴えによって目的を達することができない一の意義 二 設置許可申請に係る原子炉の周辺に居住する住民が右原子炉の設置者に対しその建設ないし運転の差止めを求める民事訴訟を提起している場合における右住民が提起した右原子炉の設置許可処分の無効確認の訴えの適法性
裁判要旨
一 行政事件訴訟法三六条にいう「その効力の有無を前提とする現在の法律関係に関する訴えによって目的を達することができない」とは、当該処分に基づいて生ずる法律関係に関し、処分の無効を前提とする当事者訴訟又は民事訴訟によっては、その処分のため被っている不利益を排除することができない場合はもとより、当該処分に起因する紛争を解決するための争訟形態として、右の当事者訴訟又は民事訴訟との比較において、当該処分の無効確認を求める訴えの方がより直せつ的で適切な争訟形態であるとみるべき場合をも意味する。 二 設置許可申請に係る原子炉の周辺に居住する住民が右原子炉の設置者に対しその建設ないし運転の差止めを求める民事訴訟を提起している場合であっても、右住民が提起した右原子炉の設置許可処分の無効確認の訴えは、適法である。
解説
事案
主務大臣(上告人)は、昭和58年5月27日、動力炉・核燃料開発事業団に対し、高速増殖炉「もんじゅ」の原子炉設置許可処分をした(規制法23条・24条)。
本件原子炉から半径20km以内(約11〜15km)に住む住民ら(被上告人)は、この処分に重大かつ明白な瑕疵があるとして、無効確認の訴えを提起した。住民らは別に、設置者である事業団に対し、人格権等に基づいて原子炉の建設・運転の差止めを求める民事訴訟も提起していた。
原審は、住民らに行訴法36条の「法律上の利益」(原告適格)を認め、民事差止訴訟があっても同条の要件を欠かないとして、訴えを適法とした。上告人は次の2点を争って上告した。
- 規制法24条1項4号・行訴法36条の解釈を誤り、原告適格を肯定した違法
- 民事差止訴訟によって目的を達し得るのに、36条の要件を充たすとした違法
争点
- 無効確認訴訟の原告適格(行訴法36条の「法律上の利益を有する者」)の意義と、原子炉周辺住民への当てはめ
- 行訴法36条の「当該処分の効力の有無を前提とする現在の法律関係に関する訴えによって目的を達することができない」の意義
- 設置者に対する人格権に基づく民事差止訴訟の提起は、設置許可処分の無効確認訴訟の補充性要件を否定するか
判旨
上告棄却。訴えは適法である。
① 原告適格
- 行訴法36条の「法律上の利益を有する者」は、取消訴訟の原告適格(9条)と同義である。
- 規制法24条1項3号(技術的能力に係る部分)・4号は、公衆の生命・身体の安全等を一般的公益として保護するだけでなく、原子炉事故等の災害で直接的かつ重大な被害を受けると想定される範囲の住民の生命・身体の安全等を、個々人の個別的利益としても保護する趣旨を含む。
- その範囲に当たるかは、原子炉の種類・構造・規模等の具体的諸条件を考慮し、居住地と原子炉との距離関係を中心に、社会通念に照らし合理的に判断する。
- 約11〜15kmに住む住民らはこれに当たる。
② 補充性(36条後段)
- 「目的を達することができない」とは、処分の無効を前提とする当事者訴訟・民事訴訟では不利益を排除できない場合だけでなく、それらとの比較で無効確認訴訟の方がより直截的で適切な争訟形態とみるべき場合も含む。
- 人格権等に基づく民事差止訴訟は「処分の効力の有無を前提とする現在の法律関係に関する訴え」に当たらず、無効確認訴訟より直截的で適切ともいえない。したがって、民事訴訟を現に提起していても補充性は否定されない。
判決文から
「同条にいう当該処分の無効等の確認を求めるにつき「法律上の利益を有する者」の意義についても、右の取消訴訟の原告適格の場合と同義に解するのが相当である」
36条の原告適格を9条と同義とした点
「原子炉施設周辺に居住し、右事故等がもたらす災害により直接的かつ重大な被害を受けることが想定される範囲の住民の生命、身体の安全等を個々人の個別的利益としても保護すべきものとする趣旨を含む」
規制法の基準に個別的利益の保護を読み込んだ核心
「当該原子炉の種類、構造、規模等の当該原子炉に関する具体的な諸条件を考慮に入れた上で、当該住民の居住する地域と原子炉の位置との距離関係を中心として、社会通念に照らし、合理的に判断すべきものである」
原告適格の範囲を画する判断基準
「当該処分に起因する紛争を解決するための争訟形態として、当該処分の無効を前提とする当事者訴訟又は民事訴訟との比較において、当該処分の無効確認を求める訴えのほうがより直截的で適切な争訟形態であるとみるべき場合をも意味する」
36条補充性の「直截・適切」基準
「右民事訴訟は、行政事件訴訟法三六条にいう当該処分の効力の有無を前提とする現在の法律関係に関する訴えに該当するものとみることはできず」
民事差止訴訟は処分の効力を前提としない
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