夜間潜水事件(スキューバダイビング事件)
指導者の不用意な離脱が誘発した補助者・被害者の不適切な行動が介在しても、過失行為と死亡との因果関係を肯定した。
出題:司法H26・予備H26
- 裁判所
- 最高裁判所第一小法廷
- 事件番号
- 平成4(あ)383 業務上過失致死
- 裁判
- 決定・棄却
- 判例集
- 刑集 第46巻9号683頁
- 参照法条
- 刑法第1編第7章,刑法211条(平成3年法律31号による改正前のもの)
判示事項・裁判要旨
裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)
判示事項
夜間潜水の講習指導中受講生ができ死した事故につき指導補助者及び受講生の不適切な行動が介在した場合でも指導者の行為と受講生の死亡との間に因果関係があるとされた事例
裁判要旨
海中における夜間潜水の講習指導中、指導者が不用意に受講生らのそばから離れて同人らを見失い、受講生が圧縮空気タンク内の空気を使い果たしてでき死するに至った事故について、右受講生は潜水経験に乏しく技術が未熟であり、指導補助者もその経験が極めて浅かったことなどの本件の事実関係(判文参照)の下においては、指導補助者及び受講生の不適切な行動が介在したとしても、指導者の右行為と受講生と死亡との間には因果関係がある。
解説
事案
被告人は潜水指導者である。夜間、降雨の影響もあって海中の視界が悪く、海上では風速4メートル前後の風が吹き続けている状況で、指導補助者3名を指揮し、被害者を含む受講生6名に夜間潜水の講習をしていた。魚を見せた後、受講生がついてくると考えて、補助者に特別の指示を与えず、後方も確認しないまま前進した。その結果、補助者1名と受講生6名が取り残され、被告人は彼らを見失った。
取り残された補助者は、被告人を探して沖へ水中移動し、受講生もこれに従った。補助者は被害者の空気残圧が少ないことを確認していったん浮上したが、風波を理由に再び水中移動を指示した。被害者は移動中に空気を使い果たして恐慌状態に陥り、溺死した。
受講生はいずれも初心者の域にあった。中でも被害者は経験に乏しく、夜間潜水は初めてで、空気消費量も多かった。被告人はこのことを認識していた。補助者も指導経験が極めて浅く、夜間潜水の経験も2、3回にすぎず、具体的な指示も受けていなかった。被告人は業務上過失致死罪(平成3年改正前の刑法211条)で起訴された。
争点
- 被告人の過失行為の後に、指導補助者と被害者自身の不適切な行動が介在した場合でも、過失行為と死亡結果との因果関係が認められるか
判旨
上告棄却。最高裁は職権で因果関係について判断し、これを肯定して業務上過失致死罪の成立を認めた原判断を是認した。
- 被告人が受講生らの動向に注意せず不用意に移動して離れ、見失った行為は、それ自体が、指導者の適切な指示・誘導がなければ事態に適応した措置をとれないおそれのあった被害者を溺死させる結果を引き起こしかねない危険性を持つ。
- その後の指導補助者と被害者の行動に適切を欠く点があったことは否定できない。しかし、それは被告人の行為から誘発されたものである。
- したがって、被告人の行為と被害者の死亡との間の因果関係を肯定する妨げにはならない。
答案用の規範としては、次のように整理できる。行為が結果を引き起こしかねない危険性を有し、介在事情がその行為に誘発されたものであれば、介在事情が不適切なものであっても因果関係は否定されない。
判決文から
「受講生らの動向に注意することなく不用意に移動して受講生らのそばから離れ、同人らを見失うに至った行為は、それ自体が、」
問題となる実行行為(過失行為)の特定
「被害者をして、海中で空気を使い果たし、ひいては適切な措置を講ずることもできないままに、でき死させる結果を引き起こしかねない危険性を持つものであり」
行為自体の結果発生の危険性を認定した部分
「被告人を見失った後の指導補助者及び被害者に適切を欠く行動があったことは否定できないが、それは被告人の右行為から誘発されたものであって、被告人の行為と被害者の死亡との間の因果関係を肯定するに妨げないというべきである。」
介在事情の誘発を理由に因果関係を肯定した核心
この解説は AI が作成しています。判決全文に基づいて書き、別の AI が全文と照合して確認していますが、誤りが残っている可能性があります。 判決文の引用は全文と一字一句照合したものだけを載せています。大事な点は判決全文で確かめてください。
