酒類販売業免許制事件
租税の確実な徴収という財政目的の許可制は、立法府の判断が著しく不合理でない限り合憲とし、酒税法9条・10条10号を合憲とした
出題:司法H24・司法H26・司法H29・司法R1・司法R2・司法R8・予備H24
- 裁判所
- 最高裁判所第三小法廷
- 事件番号
- 昭和63(行ツ)56 酒類販売業免許拒否処分取消
- 裁判
- 判決・棄却
- 判例集
- 民集 第46巻9号2829頁
- 参照法条
- 憲法22条1項,酒税法9条,酒税法10条10号
判示事項・裁判要旨
裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)
判示事項
酒税法九条、一〇条一〇号と憲法二二条一項
裁判要旨
酒税法九条、一〇条一〇号は、憲法二二条一項に違反しない。 (補足意見及び反対意見がある。)
解説
事案
上告人は酒類販売業の免許を申請したが、税務署長は、酒税法10条10号(破産者で復権を得ていない場合その他経営の基礎が薄弱であると認められる場合)に当たるとして免許を拒否した。上告人はこの拒否処分の取消しを求めて提訴した。第一審は処分を取り消したが、原審(東京高裁)は酒税法の免許制を合憲として第一審判決を取り消し、請求を棄却した。
上告人は上告し、次の点を主張した。
- 酒類販売業の免許制(酒税法9条、10条10号)は憲法22条1項に違反する。
- 免許を有する業者から営業を譲り受けた者に対する拒否処分は憲法29条1項に違反する。
- 本件処分は既存業者保護のため安売り業者の新規参入を阻止するものである。
- 違法性判断の基準時を誤っている。
争点
- 酒類販売業の免許制(酒税法9条)とその免許基準である経営基礎要件(同法10条10号)は、憲法22条1項に違反するか
- 財政目的による職業の許可制について、合憲性をどのような基準で審査するか
- 免許を有する業者から営業を譲り受けた者は、免許申請について特別の法的地位を有するか(憲法29条1項)
- 免許拒否処分の違法性判断の基準時
判旨
上告棄却。酒税法9条、10条10号は憲法22条1項に違反しない。
規範
- 職業の自由の規制は、規制の目的・必要性・内容と、制限される職業の自由の性質・内容・制限の程度とを比較考量して決する。
- 許可制は狭義の職業選択の自由そのものを制約する強力な制限であるから、原則として重要な公共の利益のために必要かつ合理的な措置であることを要する。
- もっとも、租税法の定立は立法府の政策的・技術的判断にゆだねられる。そのため、租税の適正かつ確実な賦課徴収を図るという国家の財政目的のための職業の許可制については、必要性と合理性についての立法府の判断が、政策的・技術的な裁量の範囲を逸脱するもので著しく不合理なものでない限り、憲法22条1項に違反しない。
- 許可制は、制度そのものに加えて、具体的な免許基準との関係でも必要性と合理性が認められなければならない。
付随的判断
- 免許を受けた者の法的地位は譲渡できない。営業の譲受人も新規に免許を申請する必要がある。
- 拒否処分の違法性は処分時を基準として判断する。
判決文から
「一般に許可制は、単なる職業活動の内容及び態様に対する規制を超えて、狭義における職業選択の自由そのものに制約を課するもので、職業の自由に対する強力な制限であるから」
許可制の制約の強さという薬事法判決の前提を確認
「租税の適正かつ確実な賦課徴収を図るという国家の財政目的のための職業の許可制による規制については、その必要性と合理性についての立法府の判断が、右の政策的、技術的な裁量の範囲を逸脱するもので、著しく不合理なものでない限り」
財政目的の許可制に対する緩やかな審査基準
「致酔性を有する嗜好品である性質上、販売秩序維持等の観点からもその販売について何らかの規制が行われてもやむを得ないと考えられる商品である酒類の販売の自由にとどまる」
制限される自由の性質を合憲の補強に用いた
「当該免許制度の下における具体的な免許基準との関係においても、その必要性と合理性が認められるものでなければならない」
制度と個別基準の二段階で審査する
「右免許申請に対する拒否処分の違法性の有無の判断は、処分時を基準としてすべきものと解される。」
取消訴訟の違法判断基準時は処分時
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