伊方原発訴訟
原子炉設置許可の安全性判断は、審査基準の不合理性と調査審議・判断過程の看過し難い過誤・欠落の有無で審査するとした判例
出題:司法H24・司法H26・予備H28・予備R4
- 裁判所
- 最高裁判所第一小法廷
- 事件番号
- 昭和60(行ツ)133 伊方発電所原子炉設置許可処分取消
- 裁判
- 判決・棄却
- 判例集
- 民集 第46巻7号1174頁
- 参照法条
- 核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和52年法律第80号による改正前のもの)23条,核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和52年法律第80号による改正前のもの)24条,行政事件訴訟法30条,民訴法185条
判示事項・裁判要旨
裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)
判示事項
一 原子炉設置許可処分の取消訴訟における審理・判断の方法 二 原子炉設置許可処分の取消訴訟における主張・立証 三 原子炉設置許可の段階における安全審査の対象
裁判要旨
一 原子炉施設の安全性に関する被告行政庁の判断の適否が争われる原子炉設置許可処分の取消訴訟における裁判所の審理、判断は、原子力委員会若しくは原子炉安全専門審査会の専門技術的な調査審議及び判断を基にしてされた被告行政庁の判断に不合理な点があるか否かという観点から行われるべきであつて、現在の科学技術水準に照らし、右調査審議において用いられた具体的審査基準に不合理な点があり、あるいは当該原子炉施設が右の具体的審査基準に適合するとした原子力委員会若しくは原子炉安全専門審査会の調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤、欠落があり、被告行政庁の判断がこれに依拠してされたと認められる場合には、被告行政庁の右判断に不合理な点があるものとして、右判断に基づく原子炉設置許可処分は違法と解すべきである。 二 原子炉施設の安全性に関する被告行政庁の判断の適否が争われる原子炉設置許可処分の取消訴訟においては、右判断に不合理な点があることの主張、立証責任は、本来、原告が負うべきものであるが、被告行政庁の側において、まず、原子力委員会若しくは原子炉安全専門審査会の調査審議において用いられた具体的審査基準並びに調査審議及び判断の過程等、被告行政庁の判断に不合理な点のないことを相当の根拠、資料に基づき主張、立証する必要があり、被告行政庁が右主張、立証を尽くさない場合には、被告行政庁がした右判断に不合理な点があることが事実上推認される。 三 原子炉設置の許可の段階の安全審査においては、当該原子炉施設の基本設計の安全性にかかわる事項のみをその対象とするものと解すべきである。
解説
事案
伊方発電所の原子炉設置許可処分に対し、周辺住民である上告人らが取消訴訟を提起した。許可は、規制法(昭和52年改正前の核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律)23条1項に基づき内閣総理大臣がしたもので、その後の法改正で被上告人がしたものとみなされた。規制法24条2項は、許可に当たり原子力委員会の意見を聴き、これを尊重すべきことを定めている。原子力委員会には原子炉安全専門審査会が置かれ、安全性の調査審議に当たる。
上告人らの主張は次のとおりである。
- 周辺住民の手続参加、申請書等の公開、安全基準の明確化・定量化を定めない基本法・規制法と、告知・聴聞を欠く本件処分は、憲法31条に違反する。
- 法律に基づかない安全基準による審査は、憲法41条・73条1号等に違反する。
- 固体廃棄物の最終処分、使用済燃料の再処理・輸送、温排水の影響なども安全審査の対象とすべきである。
- 調査審議手続の違法、スリーマイルアイランド事故の影響、安全審査の不合理がある。
原審(高松高等裁判所)は本件処分を適法と判断し、上告人らが上告した。
争点
- 原子炉設置許可処分の取消訴訟における裁判所の審理・判断の方法(司法審査の枠組み)
- 安全性判断の不合理についての主張・立証責任の所在と、被告行政庁の主張・立証の必要
- 原子炉設置許可段階の安全審査の対象範囲(基本設計に限られるか)
- 周辺住民の手続参加・告知聴聞を定めない法律と本件処分が憲法31条に反するか
- 規制法24条1項4号の基準が不合理・不明確か
判旨
上告棄却。
- 審理・判断の方法:安全性に関する判断の適否が争われる取消訴訟では、原子力委員会もしくは原子炉安全専門審査会の専門技術的な調査審議・判断を基にした被告行政庁の判断に、不合理な点があるか否かという観点から審理する。次の場合には、被告行政庁の判断に不合理な点があるものとして、処分は違法となる。
- 現在の科学技術水準に照らし、具体的審査基準に不合理な点がある場合
- 当該施設が基準に適合するとした調査審議・判断の過程に看過し難い過誤、欠落があり、行政庁の判断がこれに依拠した場合
- 主張・立証:判断に不合理な点があることの主張・立証責任は、本来、原告が負う。しかし、被告行政庁がまず、依拠した具体的審査基準や調査審議・判断の過程等、判断に不合理な点のないことを相当の根拠・資料に基づき主張・立証する必要がある。これを尽くさない場合には、判断に不合理な点があることが事実上推認される。
- 審査対象:設置許可段階の安全審査は、基本設計の安全性にかかわる事項のみを対象とする。
- 憲法31条:行政手続には常に告知・弁解・防御の機会が必要なわけではない。周辺住民の参加や申請書等の公開の定めがないことのみで、同条の法意に反するとはいえない。
判決文から
「右各号所定の基準の適合性については、各専門分野の学識経験者等を擁する原子力委員会の科学的、専門技術的知見に基づく意見を尊重して行う内閣総理大臣の合理的な判断にゆだねる趣旨と解するのが相当である。」
専門技術的裁量を認めた根拠部分
「現在の科学技術水準に照らし、右調査審議において用いられた具体的審査基準に不合理な点があり、あるいは当該原子炉施設が右の具体的審査基準に適合するとした原子力委員会若しくは原子炉安全専門審査会の調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤、欠落があり」
違法判断の二つの類型と基準時(現在)
「被告行政庁の側において、まず、その依拠した前記の具体的審査基準並びに調査審議及び判断の過程等、被告行政庁の判断に不合理な点のないことを相当の根拠、資料に基づき主張、立証する必要があり」
行政庁側の主張立証の必要(事実上の推認)
「原子炉設置の許可の段階の安全審査においては、当該原子炉施設の安全性にかかわる事項のすべてをその対象とするものではなく、その基本設計の安全性にかかわる事項のみをその対象とするものと解するのが相当である。」
段階的規制と審査対象の限定
「常に必ず行政処分の相手方等に事前の告知、弁解、防御の機会を与えるなどの一定の手続を設けることを必要とするものではないと解するのが相当である。」
成田新法判決の枠組みの踏襲
この解説は AI が作成しています。判決全文に基づいて書き、別の AI が全文と照合して確認していますが、誤りが残っている可能性があります。 判決文の引用は全文と一字一句照合したものだけを載せています。大事な点は判決全文で確かめてください。
