SaySayLaw

特殊詐欺うそ電話事件

最判平成30年3月22日

現金交付を求める文言がなくても、交付に直結する一連の嘘を述べた段階で詐欺罪の実行の着手を認めた事例

刑法詐欺・恐喝罪未遂・中止犯・不能犯構成要件該当性・因果関係本試験で 10 問(短答 9・論文 1)

出題:司法H27・司法H28・司法R3・司法R4・司法R5・予備H27

裁判所
最高裁判所第一小法廷
事件番号
平成29(あ)322 詐欺未遂被告事件
裁判
判決・破棄自判
判例集
刑集 第72巻1号82頁
参照法条
刑法43条,刑法246条,刑法250条

判示事項・裁判要旨

裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)

判示事項

詐欺罪につき実行の着手があるとされた事例

裁判要旨

現金を被害者宅に移動させた上で,警察官を装った被告人に現金を交付させる計画の一環として述べられた嘘について,その嘘の内容が,現金を交付するか否かを被害者が判断する前提となるよう予定された事項に係る重要なものであり,被害者に現金の交付を求める行為に直接つながる嘘が含まれ,被害者にその嘘を真実と誤信させることが,被害者において被告人の求めに応じて即座に現金を交付してしまう危険性を著しく高めるといえるなどの本件事実関係(判文参照)の下においては,当該嘘を一連のものとして被害者に述べた段階で,被害者に現金の交付を求める文言を述べていないとしても,詐欺罪の実行の着手があったと認められる。 (補足意見がある。)

判決全文(裁判所ウェブサイト)

解説

事案

被害者(69歳)は、甥になりすました者からの電話を信じ、前日に現金100万円を交付していた。翌日、警察官を名乗る氏名不詳者から電話(1回目)があり、「昨日、詐欺の被害に遭っていないですか」「銀行に今すぐ行って全部下ろした方がいいですよ」「前日の100万円を取り返すので協力してほしい」などと言われた。被害者が預金を払い戻した後、2回目の電話で「僕、向かいますから」「2時前には到着できるよう僕の方で態勢整えますので」などと言われた。

犯人らの計画は、被害者に現金を払い戻させて自宅に移し、警察官を装って訪問する受取役の被告人に交付させてだまし取るというものであった。被告人は受取役と認識したうえで、「刑事役って設定で金を取りに行ってくれ」と指示を受けて被害者宅に向かったが、到着前に職務質問を受けて逮捕された。

第1審は詐欺未遂罪で懲役2年4月とした。原審(東京高裁)は、現金の交付まで求める行為がなく欺罔行為が認められないとして無罪を言い渡し、検察官が上告した。

争点

  • 現金の交付を求める文言を述べる前の段階で、詐欺罪(刑法246条1項)の実行の着手(刑法43条本文)が認められるか
  • 特殊詐欺において、交付に向けた準備行為を促す嘘を述べた行為は、着手判断でどう評価されるか

判旨

原判決を破棄し、第1審判決(詐欺未遂罪、懲役2年4月)を維持した(自判、控訴棄却)。

本件嘘については次の点が認められた。

  • 現金を被害者宅に移動させたうえで、警察官を装った被告人に交付させる計画の一環として述べられた。
  • その内容は、犯行計画上、被害者が現金を交付するか否かを判断する前提となるよう予定された事項に係る重要なものである。
  • 預金を下ろして自宅に移すことを求める文言や、警察官の訪問を予告する文言など、現金の交付を求める行為に直接つながる嘘が含まれている。
  • 既に被害に遭っていた被害者にこれを誤信させることは、被告人の求めに応じて即座に現金を交付してしまう危険性を著しく高める。

このような事実関係の下では、本件嘘を一連のものとして述べた段階で、交付を求める文言を述べていなくても、詐欺罪の実行の着手が認められる。

答案上の規範は次の形で書ける。「交付の前提として予定された重要事項に関する嘘であり、交付要求に直接つながり、即座に交付する危険性を著しく高める場合には、交付要求前でも実行の着手が認められる」。

判決文から

「本件嘘の内容は,その犯行計画上,被害者が現金を交付するか否かを判断する前提となるよう予定された事項に係る重要なものであったと認められる。」

犯行計画を考慮して嘘の重要性を評価した部分

「被害者に現金の交付を求める行為に直接つながる嘘が含まれており」

交付要求との直結性(密接性)を示す要素

「本件嘘を一連のものとして被害者に対して述べた段階において,被害者に現金の交付を求める文言を述べていないとしても,詐欺罪の実行の着手があったと認められる。」

結論。交付要求文言は着手に不要

「犯罪の実行行為自体ではなくとも,実行行為に密接であって,被害を生じさせる客観的な危険性が認められる行為に着手することによっても未遂罪は成立し得るのである」

補足意見による未遂成立の一般的枠組み

「特に重要なのは,無限定な未遂罪処罰を避け,処罰範囲を適切かつ明確に画定するという観点から,上記「密接」性を判断することである。」

密接性による処罰範囲の限定を重視した点

この解説は AI が作成しています。判決全文に基づいて書き、別の AI が全文と照合して確認していますが、誤りが残っている可能性があります。 判決文の引用は全文と一字一句照合したものだけを載せています。大事な点は判決全文で確かめてください。