水俣病認定申請遅延事件
認定申請者の内心の静穏な感情を保護法益と認めたうえで、処分遅延が国賠法上違法となる作為義務違反の要件を示した判例
出題:司法H23・予備H23・予備H28
- 裁判所
- 最高裁判所第二小法廷
- 事件番号
- 昭和61(オ)329 水俣病認定業務に関する熊本県知事の不作為違法に対する損害賠償
- 裁判
- 判決・破棄差戻
- 判例集
- 民集 第45巻4号653頁
- 参照法条
- 国家賠償法1条1項,公害に係る健康被害の救済に関する特別措置法3条1項,公害健康被害補償法(昭和62年法律第97号による改正前のもの)4条2項
判示事項・裁判要旨
裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)
判示事項
一 公害に係る健康被害の救済に関する特別措置法三条一項又は公害健康被害補償法(昭和六二年法律第九七号による改正前のもの)四条二項に基づき水俣病患者認定申請をした者が相当期間内に応答処分されることにより焦燥、不安の気持ちを抱かされない利益と法的保護の対象 二 右認定申請を受けた処分庁が不当に長期間にわたらないうちに応答処分をすべき条理上の作為義務に違反したといえるための要件
裁判要旨
一 公害に係る健康被害の救済に関する特別措置法三条一項又は公害健康被害補償法(昭和六二年法律第九七号による改正前のもの)四条二項に基づき水俣病患者認定申請をした者が相当期間内に応答処分されることにより焦燥、不安の気持ちを抱かされないという利益は、内心の静穏な感情を害されない利益として、不法行為法上の保護の対象になる。 二 右認定申請を受けた処分庁には、不当に長期間にわたちないうちに応答処分をすべき条理上の作為義務があり、右の作為義務に違反したというためには、客観的に処分庁がその処分のために手続上必要と考えられる期間内に処分ができなかったことだけでは足りず、その期間に比して更に長期間にわたり遅延が続き、かつ、その間、処分庁として通常期待される努力によって遅延を解消できたのに、これを回避するための努力を尽くさなかったことが必要である。
解説
事案
被上告人らは、水俣病にかかった者として、救済法3条1項または補償法4条2項に基づき、熊本県知事に水俣病認定申請をした。知事は国から認定業務の委任(機関委任)を受けていた。知事は、検診・面接調査を経て審査会に付議したが、「要観察」「要再検」等の理由による答申保留が繰り返され、処分が大幅に遅れた。一部の者は第一審口頭弁論終結時まで未処分のままで、最長9年余を経過していた。一部の被上告人については、不作為の違法確認判決がすでに確定していた。また、検診を受けない・受診を拒否する者もいた。
被上告人らは、処分遅延によって焦燥・不安の精神的苦痛を受けたとして、国(国賠法1条1項)と費用負担者である県(同法1条1項・3条1項)に慰謝料を請求した。原審は、過去の処理実績から各人の「処分可能時期」を算定して違法期間を認定し、違法期間1か月につき5000円の慰謝料を認めた。受診拒否等の期間については過失相殺として半額とした。国・県が上告した。
争点
- 認定申請者が相当期間内に応答処分を受けることで焦燥・不安を抱かされない利益は、不法行為法上の保護の対象となるか
- 処分の遅延(不作為)が国賠法1条1項上違法となるための作為義務の根拠とその違反の要件
- 不作為の違法確認判決の確定が、国賠法上の違法を直ちに基礎づけるか
判旨
原判決中上告人ら敗訴部分を破棄し、差し戻した(賠償を認めたわけではない)。
- 保護法益:認定申請者が、早期の処分によって水俣病にかかっている疑いのままの不安定な地位から解放されたいと期待し、焦燥・不安の気持ちを抱かされないという利益は、内心の静穏な感情を害されない利益として不法行為法上の保護の対象になり得る。
- 作為義務:処分庁には、不当に長期間にわたらないうちに応答処分をすべき条理上の作為義務がある。
- 違反の要件(規範):作為義務違反といえるには、
- ①客観的に手続上必要と考えられる期間内に処分できなかったことだけでは足りず、その期間に比してさらに長期間にわたり遅延が続き、
- かつ②その間、処分庁として通常期待される努力によって遅延を解消できたのに、回避の努力を尽くさなかったことが必要である。
判決文から
「内心の静穏な感情を害されない利益として、これが不法行為法上の保護の対象になり得るものと解するのが相当である。」
保護法益を肯定した核心部分
「作為義務を前提としない不作為それ自体は、法的に意味のある行為と評価することはできないからである。」
不作為の不法行為には作為義務が前提となる
「処分庁には、こうした結果を回避すべき条理上の作為義務があるということができる。」
作為義務の根拠を法令でなく条理に求めた
「客観的に処分庁がその処分のために手続上必要と考えられる期間内に処分できなかったことだけでは足りず、その期間に比してさらに長期間にわたり遅延が続き」
違反要件①:単なる期間経過では足りない
「処分庁として通常期待される努力によって遅延を解消できたのに、これを回避するための努力を尽くさなかったことが必要であると解すべきである。」
違反要件②:回避努力の懈怠
「知事が処分をすべき行政手続上の作為義務に違反していることを確認することにあるから、これが直ちに認定申請者の右の法的利益に向けた作為義務を認定し、その利益侵害という意味での不作為の違法性を確認するものではないと解すべきである。」
不作為違法確認判決と国賠違法の区別
この解説は AI が作成しています。判決全文に基づいて書き、別の AI が全文と照合して確認していますが、誤りが残っている可能性があります。 判決文の引用は全文と一字一句照合したものだけを載せています。大事な点は判決全文で確かめてください。
