小樽予防接種禍事件
予防接種で重篤な後遺障害が生じたときは、特段の事情がない限り、被接種者は禁忌者に該当していたと推定するとした判例
出題:司法H22・司法H25・司法H26・司法H30・司法R1・司法R6・司法R7
- 裁判所
- 最高裁判所第二小法廷
- 事件番号
- 昭和61(オ)1493 損害賠償
- 裁判
- 判決・破棄差戻
- 判例集
- 民集 第45巻4号367頁
- 参照法条
- 国家賠償法1条,予防接種法(昭和45年法律第111号による改正前のもの)2条2項,予防接種法(昭和45年法律第111号による改正前のもの)15条,予防接種実施規則(昭和33年厚生省令第27号。昭和45年厚生省令第44号による改正前のもの)4条
判示事項・裁判要旨
裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)
判示事項
痘そうの予防接種による重篤な後遺障害の発生と予防接種実施規則(昭和四五年厚生省令第四四号による改正前の昭和三三年厚生省令第二七号)四条の禁忌者に該当したことの推定
裁判要旨
痘そうの予防接種によって重篤な後遺障害が発生した場合には、予防接種実施規則(昭和四五年厚生省令第四四号による改正前の昭和三三年厚生省令第二七号)四条の禁忌者を識別するために必要とされる予診が尽くされたが禁忌者に該当する事由を発見することはできなかったこと、被接種者が右後遺障害を発生しやすい個人的素因を有していたこと等の特段の事情が認められない限り、被接種者は禁忌者に該当していたものと推定すべきである。
解説
事案
昭和43年4月8日、小樽市保健所で予防接種法(昭和45年改正前)に基づく痘そうの予防接種が行われた。保健所予防課長がA1に接種したところ、A1に下半身麻痺による運動障害と知能障害の後遺障害が残った。
A1は接種の5日前に38度8分の発熱と咽頭発赤があり、医師は感冒と診断して解熱剤を投与した。その後、熱は下がり、接種当日の朝も発熱はなかった。
A1とその両親は、次の過失を主張して損害賠償を請求した。
- 予防課長が十分な予診をしなかった過失
- 保健所長が十分な予診ができるよう措置しなかった過失
請求の相手方と根拠は次のとおりである。
- 国(接種事務を小樽市長に委任):国家賠償法1条1項
- 小樽市(予防課長・保健所長の給与負担者):同法3条1項
原審は、後遺障害の全体が接種に起因すると認めた。しかし、接種当日のA1は咽頭炎が治癒しており、予防接種実施規則4条の禁忌者に該当しないとした。そのため、予診に不十分な点があっても後遺障害とは結びつかないとして、請求を棄却した。
争点
- 予防接種で重篤な後遺障害が生じた場合、被接種者が禁忌者に該当していたことをどのように認定すべきか
- 解熱の経過だけから咽頭炎の治癒を認定し、禁忌者非該当として予診の過失の主張を排斥できるか
判旨
原判決を破棄し、札幌高裁に差し戻した。
規範:予防接種によって重篤な後遺障害が発生した場合には、次のような特段の事情が認められない限り、被接種者は禁忌者に該当していたと推定するのが相当である。
- 禁忌者を識別するために必要な予診が尽くされたが、禁忌者に該当する事由を発見できなかったこと
- 被接種者が後遺障害を発生しやすい個人的素因を有していたこと
本件へのあてはめ
- 原審は必要な予診を尽くしたかを審理していない。
- A1が個人的素因を有していたとも認定していない。
- 原審の認定事実だけでは、A1が禁忌者に該当しなかったと断定できない。
したがって、予診を尽くしたか等を審理しないまま過失の主張を排斥した原審には、審理不尽の違法がある。
判決文から
「予診が尽くされたが禁忌者に該当すると認められる事由を発見することができなかったこと、被接種者が右個人的素因を有していたこと等の特段の事情が認められない限り、被接種者は禁忌者に該当していたと推定するのが相当である。」
禁忌者該当の推定と、推定を覆す特段の事情の規範
「ある個人が禁忌者に該当する可能性は右の個人的素因を有する可能性よりもはるかに大きいものというべきである」
推定を正当化する確率的な根拠
「咽頭炎が治癒したとは咽頭部の炎症が消滅したことをいうにすぎず、その原因となった疾患の治癒を示すものでもなければ、他の疾患にり患していないことを意味するものでもなく」
原審の禁忌者非該当の認定を否定した理由
この解説は AI が作成しています。判決全文に基づいて書き、別の AI が全文と照合して確認していますが、誤りが残っている可能性があります。 判決文の引用は全文と一字一句照合したものだけを載せています。大事な点は判決全文で確かめてください。
