最判平成3年11月19日
金銭の利得では利益消滅を受益者が主張立証する。悪意となった後の利益消滅は返還範囲を減らさない。
出題:司法H28・司法R5
- 裁判所
- 最高裁判所第三小法廷
- 事件番号
- 昭和62(オ)888 不当利得返還
- 裁判
- 判決・その他
- 判例集
- 民集 第45巻8号1209頁
- 参照法条
- 民法703条
判示事項・裁判要旨
裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)
判示事項
一 金銭の不当利得の利益が存しないことの主張・立証責任 二 不当利得者が利得に法律上の原因がないことを認識した後の利益の消滅と返還義務の範囲
裁判要旨
一 金銭の交付によって生じた不当利得の利益が存しないことについては、不当利得返還請求権の消滅を主張する者が主張・立証すべきである。 二 不当利得をした者が利得に法律上の原因がないことを認識した後の利益の消滅は、返還義務の範囲を減少させない。
解説
事案
被上告人(預金者)は上告人(銀行)と普通預金契約を結んでいた。被上告人は額面1700万円の約束手形に取立委任裏書をして上告人に交付し、手形が支払われたらその額を普通預金口座に入れる約束をした。
手形は不渡りとなった。ところが上告人は確認の過誤で入金があったと誤解し、被上告人の払戻請求に応じて午後1時50分ころ1700万円を支払った。上告人は午後2時50分ころ過誤に気付き、午後4時30分ころ事情を告げて返還を請求した。手形の裏書人Dらは被上告人と経済的に密接な一体の関係にあり、Dの事業はその後倒産し、D本人も所在不明となった。
被上告人は、払戻金を直ちにDに交付したから利益は現存しないと主張した。原審はこの事実を認めなかった。しかし、銀行側の杜撰な処理などを比較考量して「具体的公平」を図るべきだとし、返還すべき現存利益を約4割の700万円にとどめた。上告人が残り1000万円の部分について上告した。
争点
- 金銭の不当利得で、利益が存しないこと(民法703条の現存利益の不存在)の主張・立証責任は誰が負うか
- 損失者側の過失など当事者双方の事情を比較考量して、現存利益の範囲を減額できるか
- 善意の受益者が、利得に法律上の原因がないと認識した後に利益が消滅した場合、返還義務の範囲は減少するか
判旨
原判決中、予備的請求に関する上告人の敗訴部分を破棄し、その部分に関する第一審判決を取り消した(上告人のその余の上告は棄却)。そのうえで1000万円と遅延損害金の支払を命じた(自判)。
- 規範1(立証責任):金銭の交付によって生じた不当利得で、利益が存しないことは、不当利得返還請求権の消滅を主張する者(受益者)が主張・立証すべきである。
- 規範2(減額の可否):利益が受益者に現に帰属している以上、損失者側の過失などの諸事情を考慮しても、現に保持する利益の返還義務を軽減する理由はない。
- 規範3(悪意後の消滅):善意の受益者の返還義務が現存利益に減縮される趣旨は、法律上の原因があると信じて利益を失った者に、不当利得がなかった場合以上の不利益を与えないことにある。したがって、利得者が法律上の原因がないことを認識した後の利益の消滅は、返還義務の範囲を減少させない。現存利益の有無は、認識した時点を基準に判断する。
判決文から
「金銭の交付によって生じた不当利得につきその利益が存しないことについては、不当利得返還請求権の消滅を主張する者において主張・立証すべきところ」
利益不存在は受益者の抗弁とした立証責任の規範
「善意で不当利得をした者の返還義務の範囲が利益の存する限度に減縮されるのは、利得に法律上の原因があると信じて利益を失った者に不当利得がなかった場合以上の不利益を与えるべきでないとする趣旨に出たものである」
703条の現存利益への減縮の趣旨を示した部分
「利得者が利得に法律上の原因がないことを認識した後の利益の消滅は、返還義務の範囲を減少させる理由とはならないと解すべき」
悪意となった後の利益消滅は考慮しないとの規範
「債権の価値は債務者の資力等に左右されるものであるが、特段の事情のない限り、その額面金額に相当する価値を有するものと推定すべき」
第三者への交付で取得した債権を利益とみる根拠
この解説は AI が作成しています。判決全文に基づいて書き、別の AI が全文と照合して確認していますが、誤りが残っている可能性があります。 判決文の引用は全文と一字一句照合したものだけを載せています。大事な点は判決全文で確かめてください。
