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最決平成29年4月26日

侵害を予期して対抗行為に及んだ場合、急迫性は先行事情を含む行為全般の状況から、36条の趣旨に照らして判断するとした決定

刑法違法性阻却(正当防衛・緊急避難)本試験で 6 問(短答 5・論文 1)

出題:司法H22・司法R3・司法R4・司法R7・予備R3

裁判所
最高裁判所第二小法廷
事件番号
平成28(あ)307 殺人,器物損壊被告事件
裁判
決定・棄却
判例集
刑集 第71巻4号275頁
参照法条
刑法36条

判示事項・裁判要旨

裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)

判示事項

侵害を予期した上で対抗行為に及んだ場合における刑法36条の急迫性の判断方法

裁判要旨

行為者が侵害を予期した上で対抗行為に及んだ場合,侵害の急迫性の要件については,対抗行為に先行する事情を含めた行為全般の状況に照らして検討すべきであり,事案に応じ,行為者と相手方との従前の関係,予期された侵害の内容,侵害の予期の程度,侵害回避の容易性,侵害場所に出向く必要性,侵害場所にとどまる相当性,対抗行為の準備の状況(特に,凶器の準備の有無や準備した凶器の性状等),実際の侵害行為の内容と予期された侵害との異同,行為者が侵害に臨んだ状況及びその際の意思内容等を考慮し,緊急状況の下で公的機関による法的保護を求めることが期待できないときに私人による対抗行為を許容した刑法36条の趣旨に照らし許容されるものとはいえない場合には,侵害の急迫性の要件を充たさないものというべきである。

判決全文(裁判所ウェブサイト)

解説

事案

被告人は、知人Aから、不在中の自宅マンションの玄関扉を消火器で何度もたたかれた。さらにその頃から翌日未明まで十数回にわたり電話で「今から行ったるから待っとけ。けじめとったるから。」と怒鳴られたり、仲間と共に攻撃を加えると言われたりした。身に覚えのない因縁を付けられ、被告人は立腹していた。

午前4時頃、自宅にいた被告人は、Aからマンション前に来ているから降りて来るよう電話で呼び出された。被告人は包丁(刃体約13.8cm)にタオルを巻いてズボンの腰部に差し挟み、路上に赴いた。

Aがハンマーを持って駆け寄って来たが、被告人は包丁を示すなどの威嚇的行動を取らないまま歩いて近づいた。ハンマーで殴りかかるAの攻撃を腕を出すなどして防ぎながら包丁を取り出し、殺意をもってAの左側胸部を1回強く突き刺して殺害した。

第1審は正当防衛・過剰防衛の成立を否定し、原審もこれを是認した。

争点

  • 行為者が侵害を予期した上で対抗行為に及んだ場合に、刑法36条の「急迫」性をどのように判断するか
  • 本件で侵害の急迫性が認められ、正当防衛・過剰防衛が成立するか

判旨

上告棄却。正当防衛・過剰防衛の成立を否定した原判断を是認した。

規範

  • 侵害を予期していたことから、直ちに急迫性が失われるわけではない。
  • 予期した上で対抗行為に及んだ場合の急迫性は、対抗行為に先行する事情を含めた行為全般の状況に照らして検討する。
  • 考慮事情は、事案に応じ、次のとおりである。
  • 行為者と相手方との従前の関係
  • 予期された侵害の内容、侵害の予期の程度
  • 侵害回避の容易性、侵害場所に出向く必要性、侵害場所にとどまる相当性
  • 対抗行為の準備の状況(特に凶器の準備の有無や準備した凶器の性状等)
  • 実際の侵害行為の内容と予期された侵害との異同
  • 行為者が侵害に臨んだ状況及びその際の意思内容等
  • 積極的加害意思で侵害に臨んだときなど、刑法36条の趣旨に照らし許容されるものとはいえない場合には、急迫性の要件を充たさない。

当てはめ
被告人は凶器による暴行を十分予期していた。それにもかかわらず、呼出しに応じる必要がなく、自宅にとどまって警察の援助を受けることが容易であったのに、包丁を準備して出向いた。そして威嚇もせずにAに近づき、強く刺突した。よって急迫性を欠く。

判決文から

「刑法36条は,急迫不正の侵害という緊急状況の下で公的機関による法的保護を求めることが期待できないときに,侵害を排除するための私人による対抗行為を例外的に許容したものである。」

36条の趣旨。規範全体の出発点

「侵害を予期していたことから,直ちにこれが失われると解すべきではなく」

予期のみでは急迫性は否定されない

「対抗行為に先行する事情を含めた行為全般の状況に照らして検討すべきである。」

判断枠組み(総合判断)の核心

「行為者がその機会を利用し積極的に相手方に対して加害行為をする意思で侵害に臨んだとき」

積極的加害意思は「など」の一例に位置づけ

「このような先行事情を含めた本件行為全般の状況に照らすと,被告人の本件行為は,刑法36条の趣旨に照らし許容されるものとは認められず,侵害の急迫性の要件を充たさないものというべきである。」

当てはめの結論部分

この解説は AI が作成しています。判決全文に基づいて書き、別の AI が全文と照合して確認していますが、誤りが残っている可能性があります。 判決文の引用は全文と一字一句照合したものだけを載せています。大事な点は判決全文で確かめてください。