GPS捜査事件
無承諾・秘密裡のGPS捜査は私的領域への侵入を伴う強制処分で令状を要するとし、立法措置を求めた大法廷判決
出題:司法H24・司法H26・司法H30・司法R1・司法R3・司法R4・予備H26・予備H29・予備R2・予備R4・予備R5
- 裁判所
- 最高裁判所大法廷
- 事件番号
- 平成28(あ)442 窃盗,建造物侵入,傷害被告事件
- 裁判
- 判決・棄却
- 判例集
- 刑集 第71巻3号13頁
- 参照法条
- 憲法35条,刑訴法197条1項
判示事項・裁判要旨
裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)
判示事項
車両に使用者らの承諾なく秘かにGPS端末を取り付けて位置情報を検索し把握する刑事手続上の捜査であるGPS捜査は令状がなければ行うことができない強制の処分か
裁判要旨
車両に使用者らの承諾なく秘かにGPS端末を取り付けて位置情報を検索し把握する刑事手続上の捜査であるGPS捜査は,個人のプライバシーの侵害を可能とする機器をその所持品に秘かに装着することによって,合理的に推認される個人の意思に反してその私的領域に侵入する捜査手法であり,令状がなければ行うことができない強制の処分である。
解説
事案
被告人が複数の共犯者と共に犯したと疑われた窃盗事件について、警察は組織性の有無・程度や被告人の役割を含む犯行の全容を解明する捜査の一環として、平成25年5月23日頃から同年12月4日頃までの約6か月半の間、GPS捜査を行った。対象は被告人、共犯者のほか、被告人の知人女性も使用する蓋然性のあった自動車等合計19台である。警察はこれらに承諾なく、令状も取得せずにGPS端末を取り付け、所在を検索して移動状況を把握した。
- 第1審:検証の性質を有する強制処分であり、検証許可状なしに行った点に重大な違法があるとした。GPS捜査により直接得られた証拠とこれに密接に関連する証拠の証拠能力を否定し、その余の証拠で有罪とした。
- 原審(大阪高裁):プライバシー侵害の程度は大きくない、令状発付の実体的要件は満たしていたと考え得る、令状主義潜脱の意図は認め難いなどとして重大な違法を否定し、控訴を棄却した。
- 被告人が上告した。
争点
- GPS捜査は刑訴法197条1項ただし書の「強制の処分」に当たるか
- 憲法35条の保障対象は「住居、書類及び所持品」に限られるか
- GPS捜査は令状なしに行えるか
- GPS捜査を検証許可状(または捜索許可状との併用)など現行刑訴法の令状で行えるか
判旨
上告棄却(裁判官全員一致)。
- 憲法35条の保障対象:「住居、書類及び所持品」に限られず、これらに準ずる私的領域に「侵入」されることのない権利を含む。
- 強制処分該当性:GPS捜査は、個人のプライバシーの侵害を可能とする機器を所持品に秘かに装着し、合理的に推認される個人の意思に反して私的領域に侵入する捜査手法である。したがって、個人の意思を制圧して憲法の保障する重要な法的利益を侵害するものとして、特別の根拠規定がなければ許容されない強制の処分に当たる(最決昭和51年3月16日参照)。
- 令状の要否:一般的には現行犯人逮捕等の無令状処分と同視すべき事情も認め難い。よって令状がなければ行えない。
- 現行令状による実施:刑訴法197条1項ただし書の「この法律に特別の定のある場合」に当たるとして令状を発付することには疑義がある。立法的措置が講じられることが望ましい。
- 原判決の説示は憲法・刑訴法の解釈適用を誤る。ただし、第1審の証拠能力判断と有罪認定は正当であり、判決に影響しない。
判決文から
「この規定の保障対象には,「住居,書類及び所持品」に限らずこれらに準ずる私的領域に「侵入」されることのない権利が含まれるものと解するのが相当である。」
憲法35条の保障範囲を私的領域へ拡張した部分
「このような捜査手法は,個人の行動を継続的,網羅的に把握することを必然的に伴うから,個人のプライバシーを侵害し得るものであり」
GPS捜査の特質(継続的・網羅的把握)の認定
「公道上の所在を肉眼で把握したりカメラで撮影したりするような手法とは異なり,公権力による私的領域への侵入を伴うものというべきである。」
尾行・公道上の撮影との区別の根拠
「個人の意思を制圧して憲法の保障する重要な法的利益を侵害するものとして,刑訴法上,特別の根拠規定がなければ許容されない強制の処分に当たる」
昭和51年決定の強制処分の定義を当てはめた核心部分
「GPS端末を取り付けるべき車両及び罪名を特定しただけでは被疑事実と関係のない使用者の行動の過剰な把握を抑制することができず」
検証許可状では令状審査の趣旨を満たせない理由
「GPS捜査について,刑訴法197条1項ただし書の「この法律に特別の定のある場合」に当たるとして同法が規定する令状を発付することには疑義がある。」
現行法上の令状による実施に疑義を示した部分
この解説は AI が作成しています。判決全文に基づいて書き、別の AI が全文と照合して確認していますが、誤りが残っている可能性があります。 判決文の引用は全文と一字一句照合したものだけを載せています。大事な点は判決全文で確かめてください。
