NHK受信料訴訟
受信設備設置者に受信契約の締結を強制する放送法64条1項を、立法裁量の範囲内として合憲とした大法廷判決
出題:司法R2・予備R2
- 裁判所
- 最高裁判所大法廷
- 事件番号
- 平成26(オ)1130 受信契約締結承諾等請求事件
- 裁判
- 判決・棄却
- 判例集
- 民集 第71巻10号1817頁
- 参照法条
- (1~4につき) 放送法1条,放送法第3章 日本放送協会,放送法64条1項 (1,3につき) 民法414条2項ただし書,民事執行法174条1項本文 (2につき) 憲法13条,憲法21条,憲法29条 (4につき) 民法166条1項
判示事項・裁判要旨
裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)
判示事項
1 放送法64条1項の意義 2 放送法64条1項の合憲性 3 日本放送協会の放送の受信についての契約の申込みに対する承諾の意思表示を命ずる判決の確定により同契約が成立した場合に発生する受信料債権の範囲 4 日本放送協会の放送の受信についての契約に基づき発生する,受信設備の設置の月以降の分の受信料債権の消滅時効の起算点
裁判要旨
1 放送法64条1項は,日本放送協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者に対しその放送の受信についての契約の締結を強制する旨を定めた規定であり,日本放送協会からの上記契約の申込みに対して上記の者が承諾をしない場合には,日本放送協会がその者に対して承諾の意思表示を命ずる判決を求め,その判決の確定によって上記契約が成立する。 2 放送法64条1項は,同法に定められた日本放送協会の目的にかなう適正・公平な受信料徴収のために必要な内容の,日本放送協会の放送の受信についての契約の締結を強制する旨を定めたものとして,憲法13条,21条,29条に違反しない。 3 日本放送協会の放送の受信についての契約を締結した者は受信設備の設置の月から定められた受信料を支払わなければならない旨の条項を含む上記契約の申込みに対する承諾の意思表示を命ずる判決の確定により同契約が成立した場合,同契約に基づき,受信設備の設置の月以降の分の受信料債権が発生する。 4 日本放送協会の放送の受信についての契約に基づき発生する,受信設備の設置の月以降の分の受信料債権(上記契約成立後に履行期が到来するものを除く。)の消滅時効は,上記契約成立時から進行する。 (1につき補足意見,1,2につき補足意見,1,3につき補足意見,1~4につき反対意見がある。)
解説
事案
原告である日本放送協会(NHK)の衛星放送を受信できるテレビを、被告は平成18年3月22日以降、自宅に設置していた。NHKは平成23年9月21日に到達した書面で受信契約を申し込んだが、被告は承諾しなかった。
NHKは、平成18年4月分から平成26年1月分までの受信料合計21万5640円を、次の構成で請求した。
- 主位的請求:申込みの到達により受信契約が成立したとして、受信料を請求する。
- 予備的請求1:契約締結義務の履行遅滞による損害賠償を請求する。
- 予備的請求2:承諾の意思表示を求めるとともに、それによって成立する契約に基づく受信料を請求する。
- 予備的請求3:不当利得の返還を請求する。
被告は次のように反論した。
- 放送法64条1項は訓示規定にすぎない。
- 締結強制の規定と解するなら、契約の自由・知る権利・財産権を侵害し、憲法13条・21条・29条に違反する。
- 受信料債権の範囲を争い、一部は時効で消滅している。
原審は予備的請求2を認容した。最高裁大法廷はこれを是認し、上告を棄却した。
争点
- 放送法64条1項は受信契約の締結を法的に強制する規定か、強制する場合に契約はいつどのように成立するか
- 放送法64条1項は憲法13条・21条・29条に違反しないか
- 承諾を命ずる判決の確定で成立した受信契約から、どの範囲の受信料債権が発生するか
- 受信設備設置の月以降の分の受信料債権の消滅時効の起算点
判旨
結論:放送法64条1項は合憲である。上告を棄却した。
- 64条1項の意義:同項は、受信設備設置者に受信契約の締結を強制する規定である。NHKの申込みを設置者が承諾しないときは、NHKが承諾の意思表示を命ずる判決を求め、その判決の確定によって契約が成立する(民法414条2項ただし書、民事執行法174条1項本文)。申込みの到達だけでは契約は成立しない。
- 合憲性:放送制度をどう構築するかは憲法上一義的に定まらず、憲法21条の趣旨を具体化する放送法の目的にふさわしい制度を国会が定める立法裁量がある。受信料で公共放送の財政的基盤を確保する仕組みは、その目的にかなう合理的なもので、立法裁量の範囲内である。さらに同項は、適正・公平な受信料徴収のために必要な内容の契約の締結を強制するにとどまるから、目的達成に必要かつ合理的な範囲内であり、憲法13条・21条・29条に違反しない。
- 債権の範囲:判決で成立した契約からも、受信設備設置の月以降の受信料債権が発生する。
- 消滅時効:その消滅時効は、契約成立時から進行する(契約成立後に履行期が来る分を除く)。
判決文から
「憲法21条の趣旨を具体化する前記の放送法の目的を実現するのにふさわしい制度を,国会において検討して定めることとなり,そこには,その意味での立法裁量が認められてしかるべきであるといえる。」
放送制度形成の立法裁量を認め、審査を緩やかにする核心部分
「このような制度の枠を離れて被告が受信設備を用いて放送を視聴する自由が憲法上保障されていると解することはできない。」
制度に依存した自由という捉え方を示す部分
「特定の個人,団体又は国家機関等から財政面での支配や影響が原告に及ぶことのないようにし,現実に原告の放送を受信するか否かを問わず,受信設備を設置することにより原告の放送を受信することのできる環境にある者に広く公平に負担を求める」
受信料制度の趣旨(財政的独立と公平負担)
「任意に受信契約を締結しない者との間においても,受信契約の成立には双方の意思表示の合致が必要というべきである。」
申込到達による契約成立というNHKの主張を否定
「放送法64条1項は,同法に定められた原告の目的にかなう適正・公平な受信料徴収のために必要な内容の受信契約の締結を強制する旨を定めたものとして,憲法13条,21条,29条に違反するものではないというべきである。」
合憲判断の結論部分
この解説は AI が作成しています。判決全文に基づいて書き、別の AI が全文と照合して確認していますが、誤りが残っている可能性があります。 判決文の引用は全文と一字一句照合したものだけを載せています。大事な点は判決全文で確かめてください。
