JR東海事件
同居の配偶者は当然には714条1項の法定監督義務者に当たらず、準監督義務者に当たるかは諸般の事情を総合考慮して判断するとした
出題:司法H22・司法H30・司法R8
- 裁判所
- 最高裁判所第三小法廷
- 事件番号
- 平成26(受)1434 損害賠償請求事件
- 裁判
- 判決・その他
- 判例集
- 民集 第70巻3号681頁
- 参照法条
- (1~4につき)民法709条,民法713条,民法714条 (1につき)民法752条,精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(平成25年法律第47号による改正前のもの)20条
判示事項・裁判要旨
裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)
判示事項
1 精神障害者と同居する配偶者と民法714条1項にいう「責任無能力者を監督する法定の義務を負う者」 2 法定の監督義務者に準ずべき者と民法714条1項の類推適用 3 線路に立ち入り列車と衝突して鉄道会社に損害を与えた認知症の者の妻が法定の監督義務者に準ずべき者に当たらないとされた事例 4 線路に立ち入り列車と衝突して鉄道会社に損害を与えた認知症の者の長男が法定の監督義務者に準ずべき者に当たらないとされた事例
裁判要旨
1 精神障害者と同居する配偶者であるからといって,その者が民法714条1項にいう「責任無能力者を監督する法定の義務を負う者」に当たるとすることはできない。 2 法定の監督義務者に該当しない者であっても,責任無能力者との身分関係や日常生活における接触状況に照らし,第三者に対する加害行為の防止に向けてその者が当該責任無能力者の監督を現に行いその態様が単なる事実上の監督を超えているなどその監督義務を引き受けたとみるべき特段の事情が認められる場合には,法定の監督義務者に準ずべき者として,民法714条1項が類推適用される。 3 認知症により責任を弁識する能力のない者Aが線路に立ち入り列車と衝突して鉄道会社に損害を与えた場合において,Aの妻Y1が,長年Aと同居しており長男Y2らの了解を得てAの介護に当たっていたものの,当時85歳で左右下肢に麻ひ拘縮があり要介護1の認定を受けており,Aの介護につきY2の妻Bの補助を受けていたなど判示の事情の下では,Y1は,民法714条1項所定の法定の監督義務者に準ずべき者に当たらない。 4 認知症により責任を弁識する能力のない者Aが線路に立ち入り列車と衝突して鉄道会社に損害を与えた場合において,Aの長男Y2がAの介護に関する話合いに加わり,Y2の妻BがA宅の近隣に住んでA宅に通いながらAの妻Y1によるAの介護を補助していたものの,Y2自身は,当時20年以上もAと同居しておらず,上記の事故直前の時期においても1箇月に3回程度週末にA宅を訪ねていたにすぎないなど判示の事情の下では,Y2は,民法714条1項所定の法定の監督義務者に準ずべき者に当たらない。 (1,2につき補足意見,4につき意見がある。)
解説
事案
認知症のA(当時91歳、要介護4、責任無能力)が、平成19年12月、自宅の事務所出入口から1人で外出した。Aは列車で隣駅に行き、排尿のためホーム先端のフェンス扉を開けて線路に下り、列車と衝突して死亡した。外出したのは、同居の妻Y1(当時85歳、左右下肢に麻ひ拘縮、要介護1)がまどろんでいた隙であった。
- 介護体制:長男Y2は20年以上Aと別居して横浜に住み、事故直前は月3回程度週末にA宅を訪ねていた。Y2の妻Bは近隣に転居してA宅に通い、Y1の介護を補助していた。Aは週6回デイサービスに通っていた。
- 請求:鉄道会社(第1審原告)が、列車遅延等の損害について、民法709条または714条に基づき、Y1・Y2に約720万円の連帯支払を求めた。
- 原審:Y1については、同居配偶者は民法752条等に基づき法定監督義務者に当たり、事務所出入口のセンサー付きチャイムの電源を入れなかった点で監督義務を怠ったとして、請求を一部認容した。Y2については請求を棄却した。
争点
- 精神障害者と同居する配偶者は、民法714条1項の「責任無能力者を監督する法定の義務を負う者」に当たるか
- 保護者・成年後見人であることだけで法定監督義務者に当たるか
- 法定監督義務者でない者に民法714条1項を類推適用できるか、その判断基準
- 妻Y1・長男Y2が法定の監督義務者に準ずべき者に当たるか
判旨
原判決中Y1敗訴部分を破棄し、Y1に対する請求(714条・709条とも)を棄却した。Y2に関する鉄道会社の上告は棄却した。
- 法定監督義務者:精神障害者と同居する配偶者であるからといって、民法714条1項の「責任無能力者を監督する法定の義務を負う者」には当たらない。平成19年当時、保護者や成年後見人であることだけでも、直ちに法定監督義務者には当たらない。
- 準監督義務者(類推適用):法定監督義務者でない者でも、責任無能力者との身分関係や日常生活における接触状況に照らし、次のような「監督義務を引き受けたとみるべき特段の事情」があれば、法定の監督義務者に準ずべき者として714条1項が類推適用される。
- 第三者への加害行為の防止に向けて監督を現に行っていること
- その態様が単なる事実上の監督を超えていること
- 判断方法:諸般の事情を総合考慮し、その者が現に監督しているか、または監督が可能かつ容易であるなど、衡平の見地から責任を問うのが相当といえる客観的状況があるかという観点から判断する。
- あてはめ:Y1・Y2のいずれも準監督義務者に当たらない。
判決文から
「精神障害者と同居する配偶者であるからといって,その者が民法714条1項にいう「責任無能力者を監督する法定の義務を負う者」に当たるとすることはできないというべきである。」
判旨1の結論。短答で頻出の命題
「第三者との関係で夫婦の一方に何らかの作為義務を課するものではなく」
752条から監督義務を導けない理由
「成年後見人に対し事実行為として成年被後見人の現実の介護を行うことや成年被後見人の行動を監督することを求めるものと解することはできない。」
成年後見人も当然には法定監督義務者でない理由
「第三者に対する加害行為の防止に向けてその者が当該責任無能力者の監督を現に行いその態様が単なる事実上の監督を超えているなどその監督義務を引き受けたとみるべき特段の事情が認められる場合には」
準監督義務者の要件(判旨2)
「その者が精神障害者を現に監督しているかあるいは監督することが可能かつ容易であるなど衡平の見地からその者に対し精神障害者の行為に係る責任を問うのが相当といえる客観的状況が認められるか否かという観点から判断すべきである。」
総合考慮の判断視点。答案の規範
この解説は AI が作成しています。判決全文に基づいて書き、別の AI が全文と照合して確認していますが、誤りが残っている可能性があります。 判決文の引用は全文と一字一句照合したものだけを載せています。大事な点は判決全文で確かめてください。
