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最判平成28年1月12日

主債務者が反社会的勢力だと後で判明しても、信用保証協会の保証契約に要素の錯誤はない。ただし金融機関の調査義務違反は免責事由になる

民法意思表示多数当事者の債権債務・保証本試験で 2 問(短答 0・論文 2)

出題:司法R1・司法R6

裁判所
最高裁判所第三小法廷
事件番号
平成26(受)1351 保証債務請求事件
裁判
判決・破棄差戻
判例集
民集 第70巻1号1頁
参照法条
(1,2につき)民法446条 (1につき)民法95条 (2につき)民法91条,信用保証協会法1条

判示事項・裁判要旨

裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)

判示事項

1 信用保証協会と金融機関との間で保証契約が締結されて融資が実行された後に主債務者が反社会的勢力であることが判明した場合において,信用保証協会の保証契約の意思表示に要素の錯誤がないとされた事例 2 金融機関による融資の主債務者が反社会的勢力であったときにおける信用保証協会と金融機関との間の信用保証に関する基本契約に定められた保証債務の免責条項にいう「保証契約に違反したとき」に当たる場合

裁判要旨

1 信用保証協会と金融機関との間で保証契約が締結され融資が実行された後に主債務者が反社会的勢力であることが判明した場合において,上記保証契約の当事者がそれぞれの業務に照らし,上記の場合が生じ得ることを想定でき,その場合に信用保証協会が保証債務を履行しない旨をあらかじめ定めるなどの対応を採ることも可能であったにもかかわらず,上記当事者間の信用保証に関する基本契約及び上記保証契約等にその場合の取扱いについての定めが置かれていないなど判示の事情の下では,主債務者が反社会的勢力でないことという信用保証協会の動機は,明示又は黙示に表示されていたとしても,当事者の意思解釈上,上記保証契約の内容となっていたとは認められず,信用保証協会の上記保証契約の意思表示に要素の錯誤はない。 2 金融機関が,主債務者が反社会的勢力であるか否かについて相当な調査をすべきであるという信用保証協会との間の信用保証に関する基本契約上の付随義務に違反して,その結果,反社会的勢力を主債務者とする融資について保証契約が締結された場合には,上記基本契約に定められた保証債務の免責条項にいう金融機関が「保証契約に違反したとき」に当たる。

判決全文(裁判所ウェブサイト)

解説

事案

Y(信用保証協会)とX(金融機関)は、昭和41年に信用保証に関する基本契約を結んだ。この契約には、Xが「保証契約に違反したとき」はYが保証債務の全部または一部を免れる旨の免責条項があった。一方、主債務者が反社会的勢力と後に判明した場合の取扱いを定める条項はなかった。

平成19年に政府が反社会的勢力との関係遮断を求める指針を策定し、平成20年には金融機関・信用保証協会向けの監督指針にも同旨が盛り込まれた。

XはA社への計8000万円の3回の貸付けについて、Yとの間で連帯保証契約を結んだ。各保証契約にも反社判明時の定めはなかった。その後、警視庁が、A社は暴力団員が代表取締役として実質的に支配する会社だとして公共工事からの排除を要請した。A社は期限の利益を喪失し、XがYに保証債務の履行を求めた。

Yは、①要素の錯誤による無効、②免責条項による免責を主張した。原審は両方とも排斥し、請求を認容した。

争点

  • 主債務者が反社会的勢力でないことという信用保証協会の動機の錯誤が、保証契約の要素の錯誤(改正前民法95条)に当たるか
  • 金融機関が主債務者の反社該当性の調査を怠った場合、基本契約の免責条項にいう「保証契約に違反したとき」に当たるか

判旨

原判決を破棄し、差し戻した。

錯誤について(原審の判断を是認)

  • 規範:動機の錯誤が要素の錯誤として無効を来すには、①動機が相手方に表示されて法律行為の内容となり、②錯誤がなければ表意者はその意思表示をしなかったと認められる必要がある。
  • 動機は、表示されても、当事者の意思解釈上、法律行為の内容とされたと認められない限り、要素の錯誤にならない。
  • あてはめ:主債務者が反社でないことというYの動機は、明示または黙示に表示されていたとしても、意思解釈上、保証契約の内容になっていたとは認められない。よって錯誤はない。

免責について(原審の判断を否定)

  • 金融機関と保証協会は、基本契約上の付随義務として、融資実行前に相互に、主債務者の反社該当性について、その時点で一般的な調査方法等に照らし相当な調査をする義務を負う。
  • 金融機関がこの義務に違反し、その結果反社を主債務者とする保証契約が締結された場合は、「保証契約に違反したとき」に当たる。
  • 免責の範囲は、保証協会側の調査状況等も勘案して定める。

判決文から

「動機は,たとえそれが表示されても,当事者の意思解釈上,それが法律行為の内容とされたものと認められない限り,表意者の意思表示に要素の錯誤はないと解するのが相当である」

表示だけでは足りず、内容化が必要とする規範

「主債務者が誰であるかは同契約の内容である保証債務の一要素となるものであるが,主債務者が反社会的勢力でないことはその主債務者に関する事情の一つであって,これが当然に同契約の内容となっているということはできない。」

主債務者の同一性と属性を区別する

「主債務者が反社会的勢力であることが事後的に判明する場合が生じ得ることを想定でき,その場合に上告人が保証債務を履行しないこととするのであれば,その旨をあらかじめ定めるなどの対応を採ることも可能であった。」

想定可能性・契約で手当てできたことを重視

「本件基本契約上の付随義務として,個々の保証契約を締結して融資を実行するのに先立ち,相互に主債務者が反社会的勢力であるか否かについてその時点において一般的に行われている調査方法等に鑑みて相当と認められる調査をすべき義務を負う」

錯誤を否定した代わりに調査義務で調整する

この解説は AI が作成しています。判決全文に基づいて書き、別の AI が全文と照合して確認していますが、誤りが残っている可能性があります。 判決文の引用は全文と一字一句照合したものだけを載せています。大事な点は判決全文で確かめてください。