神奈川県臨時特例企業税事件
自治体の課税権は憲法上予定されるが法律の準則に服するとし、欠損金繰越控除を実質的に排除する法定外普通税条例を違法無効とした
出題:司法H26・司法H27・司法R2・司法R5・予備H27
- 裁判所
- 最高裁判所第一小法廷
- 事件番号
- 平成22(行ヒ)242 神奈川県臨時特例企業税通知処分取消等請求事件
- 裁判
- 判決・破棄自判
- 判例集
- 民集 第67巻3号438頁
- 参照法条
- 地方税法4条2項,地方税法4条3項,地方税法72条3号,地方税法72条の2第1項1号イ,地方税法72条の12第1号ハ,地方税法72条の23第1項本文,地方税法72条の24の7第1項1号ハ,地方税法(平成15年法律第9号による改正前のもの)72条1項,地方税法(平成15年法律第9号による改正前のもの)72条の12,地方税法(平成15年法律第9号による改正前のもの)72条の14第1項本文,地方税法(平成15年法律第9号による改正前のもの)72条の22第1項3号,地方税法(平成15年法律第9号による改正前のもの)附則40条10項,法人税法(平成23年法律第114号による改正前のもの)2条19号,法人税法(平成23年法律第114号による改正前のもの)22条1項,法人税法(平成23年法律第114号による改正前のもの)57条1項,法人税法(平成23年法律第114号による改正前のもの)57条9項,神奈川県臨時特例企業税条例(平成13年神奈川県条例第37号)2条,神奈川県臨時特例企業税条例(平成13年神奈川県条例第37号)3条1号,神奈川県臨時特例企業税条例(平成13年神奈川県条例第37号)3条2号,神奈川県臨時特例企業税条例(平成13年神奈川県条例第37号)5条1項,神奈川県臨時特例企業税条例(平成13年神奈川県条例第37号)7条1項,神奈川県臨時特例企業税条例(平成13年神奈川県条例第37号)8条,神奈川県臨時特例企業税条例(平成16年神奈川県条例第18号による改正前のもの)3条1号,神奈川県臨時特例企業税条例(平成16年神奈川県条例第18号による改正前のもの)3条2号,神奈川県臨時特例企業税条例(平成16年神奈川県条例第18号による改正前のもの)7条1項,神奈川県臨時特例企業税条例(平成16年神奈川県条例第18号による改正前のもの)8条2号
判示事項・裁判要旨
裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)
判示事項
資本金等が一定額以上の法人の事業活動に対し臨時特例企業税を課すことを定める神奈川県臨時特例企業税条例(平成13年神奈川県条例第37号)の規定と地方税法72条の23第1項本文(平成15年法律第9号による改正前は72条の14第1項本文)
裁判要旨
資本金等が一定額以上の法人の事業活動に対し道府県法定外普通税として臨時特例企業税を課すことを定める神奈川県臨時特例企業税条例(平成13年神奈川県条例第37号)の規定は,法人事業税の所得割の課税標準(平成15年法律第9号による地方税法の改正前は法人事業税の課税標準)である所得の金額の計算上損金の額に算入して繰越控除することとされている過去の事業年度の欠損金額に相当する金額を課税標準とし,その繰越控除を実質的に一部排除するもので,所得の金額の計算において法人税法(平成23年法律第114号による改正前のもの)57条1項,9項の規定の例により上記欠損金額に相当する金額の繰越控除の必要的な適用を定める地方税法72条の23第1項本文(平成15年法律第9号による改正前は72条の14第1項本文)の規定と矛盾抵触するものとしてこれに違反し,違法,無効である。 (補足意見がある。)
解説
事案
神奈川県は平成10年度に県税が急減して決算が赤字となり、大幅な財源不足が見込まれた。そこで設置された県の研究会は、法人事業税への外形標準課税が平成13年度税制改正で見送られたことを受け、繰越欠損金の約30%について控除の適用を遮断する法定外普通税の導入を提言した。県議会はこれを受けた条例案を全会一致で可決した(本件条例)。
本件条例の内容は次のとおりである。
- 対象は、県内に事務所・事業所を設けて事業を行う資本金等5億円以上の法人である。
- 法人事業税(所得割)の所得計算で欠損金の繰越控除をした事業年度を課税事業年度とする。
- 課税標準は、繰越控除をしない場合の所得金額とするが、繰越控除欠損金額を上限とする。
- 税率は一般法人3%(平成16年改正後は一律2%)とする。
自動車製造販売会社である上告人は、平成15・16年度分の特例企業税を申告・納付した。さらに県税事務所長の更正・過少申告加算金決定に従って納付した。そのうえで、条例は地方税法に違反し無効であるとして、主位的に誤納金の還付等を求めた。第1審は請求を認容したが、原審(東京高裁)は条例を適法として請求を棄却した。
争点
- 地方公共団体の課税権の憲法上の位置づけと、法律(地方税法)との関係
- 法定外普通税を定める条例が、法定普通税に関する地方税法の規定に違反するかの判断基準
- 欠損金の繰越控除を定める地方税法72条の23第1項本文(改正前72条の14第1項本文)が強行規定か
- 本件条例が上記規定と矛盾抵触し違法・無効となるか
判旨
原判決を破棄し、県の控訴を棄却した(第1審の請求認容を維持)。
- 規範1(法律と条例の関係):条例が国の法令に違反するかは、対象事項と規定文言の対比のみでなく、趣旨・目的・内容・効果を比較し、両者の間に矛盾抵触があるかで決する(徳島市公安条例事件判決を引用)。
- 規範2(課税権の位置づけ):普通地方公共団体は、地方自治の不可欠の要素として、国とは別途に課税権の主体となることが憲法上予定されている。もっとも、税目・課税客体・課税標準・税率等は、租税法律主義(憲法84条)の下で法律が地方自治の本旨を踏まえて準則を定めることが予定されている。準則が定められた場合、課税権はその範囲内で行使しなければならない。
- 規範3(法定外税による潜脱の禁止):地方税法の法定普通税に関する規定は、別段の定めがあるものを除き強行規定である。法定外普通税条例によってこれを実質的に変更することは、同法の趣旨・目的に反し効果を阻害するものとして許されない。
- 結論:欠損金の繰越控除は法人事業税の所得計算に必要的に適用される強行規定である。本件条例はこれを実質的に一部排除するものとして矛盾抵触し、違法・無効である。
判決文から
「普通地方公共団体は,地方自治の不可欠の要素として,その区域内における当該普通地方公共団体の役務の提供等を受ける個人又は法人に対して国とは別途に課税権の主体となることが憲法上予定されているものと解される。」
自治体課税権の憲法上の根拠。短答頻出
「普通地方公共団体が課することができる租税の税目,課税客体,課税標準,税率その他の事項については,憲法上,租税法律主義(84条)の原則の下で,法律において地方自治の本旨を踏まえてその準則を定めることが予定されており」
課税権は法律の準則に服するという限界
「条例が国の法令に違反するかどうかは,両者の対象事項と規定文言を対比するのみでなく,それぞれの趣旨,目的,内容及び効果を比較し,両者の間に矛盾抵触があるかどうかによってこれを決しなければならない」
徳島市公安条例の基準を課税条例に適用
「法定外普通税に関する条例において,同法の定める法定普通税についての強行規定に反する内容の定めを設けることによって当該規定の内容を実質的に変更することも,これと同様に,同法の規定の趣旨,目的に反し,その効果を阻害する内容のものとして許されない」
法定外税による強行規定の潜脱禁止
「その実質は,繰越控除欠損金額それ自体を課税標準とするものにほかならず」
形式でなく実質で判断した核心部分
この解説は AI が作成しています。判決全文に基づいて書き、別の AI が全文と照合して確認していますが、誤りが残っている可能性があります。 判決文の引用は全文と一字一句照合したものだけを載せています。大事な点は判決全文で確かめてください。
