最判平成25年2月28日
受働債権は弁済期が現実に到来して初めて相殺適状となり、民法508条は時効期間経過前の相殺適状を要するとした判例
出題:司法H30・司法R3・司法R4・予備H29
- 裁判所
- 最高裁判所第一小法廷
- 事件番号
- 平成23(受)2094 根抵当権設定登記抹消登記手続請求本訴,貸金請求反訴事件
- 裁判
- 判決・その他
- 判例集
- 民集 第67巻2号343頁
- 参照法条
- (1,2につき)民法505条1項 (1につき)民法136条 (2につき)民法145条,民法508条
判示事項・裁判要旨
裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)
判示事項
1 既に弁済期にある自働債権と弁済期の定めのある受働債権とが相殺適状にあるというための要件 2 時効によって消滅した債権を自働債権とする相殺をするために消滅時効が援用された自働債権がその消滅時効期間経過以前に受働債権と相殺適状にあったことの要否
裁判要旨
1 既に弁済期にある自働債権と弁済期の定めのある受働債権とが相殺適状にあるというためには,受働債権につき,期限の利益を放棄することができるというだけではなく,期限の利益の放棄又は喪失等により,その弁済期が現実に到来していることを要する。 2 時効によって消滅した債権を自働債権とする相殺をするためには,消滅時効が援用された自働債権は,その消滅時効期間が経過する以前に受働債権と相殺適状にあったことを要する。
解説
事案
Xは貸金業者Yとの間で、平成7年から平成8年10月29日まで、利息制限法の制限を超える利息の約定で継続的な金銭消費貸借取引を行った。その結果、約18万円の過払金返還請求権が発生した。
Xは平成14年、貸金業者Aのために自己所有不動産に根抵当権を設定し、Aから457万円を借り受けた。この契約は毎月分割弁済とし、支払を遅滞すれば当然に期限の利益を失う特約付きであった。平成15年1月6日、YがAを吸収合併して貸主の地位を承継した。
Xは平成22年7月1日の返済を遅滞し、同日の経過をもって期限の利益を喪失した。Xは同年8月17日、過払金返還請求権を含む債権を自働債権、貸付金残債権を受働債権として相殺の意思表示をし、残額も弁済した。そのうえで、根抵当権設定登記の抹消を求めた。Yは同年9月28日、過払金返還請求権について、取引終了から10年が経過したとして消滅時効を援用し、反訴で残元金等を請求した。
原審は、Xは期限の利益を放棄すればいつでも相殺できたとして、合併時に相殺適状にあったとした。そのうえで民法508条による相殺を有効とした。
争点
- 既に弁済期にある自働債権と弁済期の定めのある受働債権とが相殺適状にあるといえるには、受働債権の期限の利益を放棄できるだけで足りるか(民法505条1項)
- 民法508条により時効消滅した債権を自働債権として相殺するには、時効期間経過以前に相殺適状にあったことを要するか
判旨
結論:Xの相殺は無効である。本訴請求は棄却し、反訴部分は残額審理のため差し戻した。
規範1(505条1項)
- 既に弁済期にある自働債権と弁済期の定めのある受働債権とが相殺適状にあるというためには、受働債権について期限の利益を放棄できるというだけでは足りない。
- 期限の利益の放棄または喪失等により、受働債権の弁済期が現実に到来していることを要する。
規範2(508条)
- 時効消滅した債権を自働債権として相殺するには、消滅時効が援用された自働債権が、その消滅時効期間が経過する以前に受働債権と相殺適状にあったことを要する。
あてはめ
- 本件の相殺適状は、期限の利益を喪失した平成22年7月1日の経過時に初めて生じた。
- その時点で過払金返還請求権の時効期間は既に経過していた。
- したがって508条は適用されない。
判決文から
「「双方の債務が弁済期にあるとき」と規定しているのであるから,その文理に照らせば,自働債権のみならず受働債権についても,弁済期が現実に到来していることが相殺の要件とされていると解される。」
505条1項の文理からの理由づけ
「受働債権の債務者がいつでも期限の利益を放棄することができることを理由に両債権が相殺適状にあると解することは,上記債務者が既に享受した期限の利益を自ら遡及的に消滅させることとなって,相当でない。」
放棄可能性説(原審)を否定する実質的理由
「既に弁済期にある自働債権と弁済期の定めのある受働債権とが相殺適状にあるというためには,受働債権につき,期限の利益を放棄することができるというだけではなく,期限の利益の放棄又は喪失等により,その弁済期が現実に到来していることを要する」
判旨1の規範そのもの
「当事者の相殺に対する期待を保護するという民法508条の趣旨に照らせば,同条が適用されるためには,消滅時効が援用された自働債権はその消滅時効期間が経過する以前に受働債権と相殺適状にあったことを要すると解される。」
508条の趣旨と適用要件
この解説は AI が作成しています。判決全文に基づいて書き、別の AI が全文と照合して確認していますが、誤りが残っている可能性があります。 判決文の引用は全文と一字一句照合したものだけを載せています。大事な点は判決全文で確かめてください。
