最決平成25年2月20日
前科以外の他の犯罪事実(併合審理中の事実を含む)にも、平成24年判決の前科証拠の許容基準が及ぶとした決定
出題:司法H25・司法R2
- 裁判所
- 最高裁判所第一小法廷
- 事件番号
- 平成23(あ)1789 住居侵入,窃盗,現住建造物等放火,窃盗未遂被告事件
- 裁判
- 決定・棄却
- 判例集
- 刑集 第67巻2号1頁
- 参照法条
- (1,2につき) 刑訴法317条
判示事項・裁判要旨
裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)
判示事項
1 前科に係る犯罪事実及び前科以外の他の犯罪事実を被告人と犯人の同一性の間接事実とすることの許否 2 前科に係る犯罪事実及び前科以外の他の犯罪事実を被告人と犯人の同一性の間接事実とすることが許されないとされた事例
裁判要旨
1 前科に係る犯罪事実や前科以外の他の犯罪事実を被告人と犯人の同一性の間接事実とすることは,これらの犯罪事実が顕著な特徴を有し,かつ,その特徴が証明対象の犯罪事実と相当程度類似していない限りは,許されない。 2 前科に係る住居侵入,窃盗,現住建造物等放火等の犯罪事実及び前科以外の他の住居侵入,窃盗等の犯罪事実を,証明対象の住居侵入,窃盗,窃盗未遂,現住建造物等放火の犯人と被告人の同一性の間接事実とすることは,これらの犯罪事実に顕著な特徴があるとはいえないなどの事情(判文参照)の下では,被告人に対して実証的根拠の乏しい人格的評価を加え,これをもとに犯人が被告人であるという合理性に乏しい推論をすることにほかならず,許されない。 (1,2につき補足意見がある。)
解説
事案
被告人は、平成16年8月から同17年8月までの間に岡山市内で行ったとされる合計20件の住居侵入・窃盗・同未遂・現住建造物等放火で起訴された。このうち第1〜第9および第19の住居侵入・窃盗は、被告人も認めていた。
被告人には次の前科があった。
- 昭和47〜48年の窃盗13件・現住建造物等放火1件等による懲役6年
- 平成2年の住居侵入・窃盗10件、住居侵入・窃盗・現住建造物等放火2件等による懲役9年
原審(広島高裁岡山支部)は、これらの前科と被告人が認める住居侵入・窃盗の事実から、被告人に次の特徴があると認めた。
- ア 色情盗という特殊な性癖
- イ 下見等で女性居住者の情報を得る、女性用の物の入手を主目的とする、留守中に窓ガラスを割って侵入するという手口
- ウ 女性用の物を窃取した際に、女性に対する複雑な感情から室内に放火するなどの「極めて特異な犯罪傾向」
原審は、これらが争いのある第10〜第15、第18、第20の各事実と一致することを、犯人が被告人であることの間接事実の一つとし、事実誤認の控訴趣意を退けた。被告人が上告した。
争点
- 前科以外の被告人の他の犯罪事実を、被告人と犯人の同一性(犯人性)の間接事実とすることが許されるか、その許容基準は何か
- 本件の色情盗の性癖・手口・放火に至る犯罪傾向が「顕著な特徴」にあたるか
判旨
上告棄却。
規範:前科証拠を犯人性の証明に用いるには、前科に係る犯罪事実が顕著な特徴を有し、かつ、その特徴が証明対象の犯罪事実と相当程度類似することから、それ自体で両者の犯人が同一であることを合理的に推認させるものでなければならない(最判平成24年9月7日)。この基準は、前科以外の被告人の他の犯罪事実を犯人性の証明に用いる場合にも同様に当てはまる。
したがって、前科に係る犯罪事実や被告人の他の犯罪事実を犯人性の間接事実とすることは、それらの犯罪事実が顕著な特徴を有し、かつ、その特徴が証明対象の犯罪事実と相当程度類似していない限り、許されない。
あてはめ:ア・イは単独でも総合しても顕著な特徴とはいえない。ウは曖昧で「特異な犯罪傾向」とはいい難いうえ、そもそもこのような犯罪性向を間接事実とすることは許されない。よって原判決には法令違反がある。もっとも、この間接事実を除いても、その余の証拠により事実誤認はないとした原判断は是認できるので、判決に影響を及ぼさない(刑訴法411条による破棄はしない)。
判決文から
「このことは,前科以外の被告人の他の犯罪事実の証拠を被告人と犯人の同一性の証明に用いようとする場合にも同様に当てはまると解すべきである。」
平成24年判決の基準を他の犯罪事実へ拡張した核心部分
「前科に係る犯罪事実や被告人の他の犯罪事実を被告人と犯人の同一性の間接事実とすることは,これらの犯罪事実が顕著な特徴を有し,かつ,その特徴が証明対象の犯罪事実と相当程度類似していない限りは,」
答案に書く許容基準(顕著な特徴+相当程度の類似)
「これらは,単独ではもちろん,総合しても顕著な特徴とはいえないから,犯人が被告人であることの間接事実とすることは許されないというべきである。」
総合評価しても顕著性は認められないとしたあてはめ
「そもそも,このような犯罪性向を犯人が被告人であることの間接事実とすることは,被告人に対して実証的根拠の乏しい人格的評価を加え,これをもとに犯人が被告人であるという合理性に乏しい推論をすることにほかならず」
悪性格・犯罪性向からの推認を禁じる理由
「「顕著な特徴」という例外の要件について,事案により,ある程度の幅をもって考えることは,必ずしも否定されないのではないだろうか。」
補足意見による要件の柔軟化の示唆
この解説は AI が作成しています。判決全文に基づいて書き、別の AI が全文と照合して確認していますが、誤りが残っている可能性があります。 判決文の引用は全文と一字一句照合したものだけを載せています。大事な点は判決全文で確かめてください。
