最判平成24年3月16日
時効完成後に設定登記された抵当権も、その後の再度の取得時効の完成によって、特段の事情がない限り消滅するとした判例
出題:司法H25・司法H30・予備R3
- 裁判所
- 最高裁判所第二小法廷
- 事件番号
- 平成22(受)336 第三者異議事件
- 裁判
- 判決・棄却
- 判例集
- 民集 第66巻5号2321頁
- 参照法条
- 民法162条,民法177条,民法397条
判示事項・裁判要旨
裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)
判示事項
不動産の取得時効の完成後,所有権移転登記がされることのないまま,第三者が原所有者から抵当権の設定を受けて抵当権設定登記を了した場合における,再度の取得時効の完成と上記抵当権の消長
裁判要旨
不動産の取得時効の完成後,所有権移転登記がされることのないまま,第三者が原所有者から抵当権の設定を受けて抵当権設定登記を了した場合において,上記不動産の時効取得者である占有者が,その後引き続き時効取得に必要な期間占有を継続し,その期間の経過後に取得時効を授用したときは,上記占有者が上記抵当権の存在を容認していたなど抵当権の消滅を妨げる特段の事情がない限り,上記占有者が,上記不動産を時効取得する結果,上記抵当権は消滅する。 (補足意見がある。)
解説
事案
Aは昭和45年3月、本件旧土地を被上告人Xに売却したが、所有権移転登記はされなかった。Xは遅くとも同月31日から占有を開始し、サトウキビ畑として耕作した。
Aの子Bは昭和57年、相続を原因とする所有権移転登記を了した。Bは昭和59年4月19日、上告人Yのために本件抵当権を設定し、同日、設定登記がされた。Xはこれらの事実を知らないまま、換地(平成17年)の前後を通じて耕作・占有を続けた。抵当権設定登記の時点で、Xは土地を所有すると信じることについて善意無過失であった。
Yが抵当権の実行として競売を申し立て、平成18年に開始決定を得た。これに対しXは競売の不許を求めて第三者異議訴訟を提起し、平成20年8月9日、Bに対して取得時効を援用した。原審は、援用により抵当権は消滅したとしてXの請求を認めた。Yが上告受理を申し立てた。
争点
- 時効完成後・登記前に原所有者から抵当権の設定を受けて登記した第三者と、時効取得者との関係(対抗問題か)
- 抵当権設定登記後も占有者が引き続き時効取得に必要な期間占有を継続した場合、再度の取得時効が完成し、抵当権は消滅するか
- 再度の取得時効の起算点
判旨
上告棄却。
前提:時効取得者と、時効完成後に抵当権の設定を受けて登記した者との関係は対抗問題となる(民法177条)。
規範:不動産の取得時効の完成後、所有権移転登記がされないまま、第三者が原所有者から抵当権の設定を受けて抵当権設定登記を了した場合でも、次のとおりとなる。
- 時効取得者である占有者が、その後引き続き時効取得に必要な期間占有を継続したとき
- 占有者が抵当権の存在を容認していたなど、抵当権の消滅を妨げる特段の事情がない限り
- 占有者は不動産を時効取得し(民法162条)、その結果、抵当権は消滅する。
本件へのあてはめ:Xは抵当権設定登記時に善意無過失であり、登記後10年間占有を継続して援用した。抵当権の存在を知らなかったから、容認などの特段の事情もない。よって、抵当権設定登記の日を起算点として時効取得し、本件抵当権は消滅した。
判決文から
「時効取得者と取得時効の完成後に抵当権の設定を受けてその設定登記をした者との関係が対抗問題となることは,所論のとおりである。」
第1の時効は登記なしに抵当権者に対抗できない前提
「上記占有者が上記抵当権の存在を容認していたなど抵当権の消滅を妨げる特段の事情がない限り,上記占有者は,上記不動産を時効取得し,その結果,上記抵当権は消滅すると解するのが相当である。」
結論の規範と特段の事情の例示
「長期間にわたる継続的な占有を占有の態様に応じて保護すべきものとする時効制度の趣旨に鑑みれば,是認し難いというべきである。」
時効制度の趣旨からの理由づけ
「上記登記がされた時から占有者と抵当権者との間に上記のような権利の対立関係が生ずるものと解され,かかる事態は,上記不動産が第三者に譲渡され,その旨の登記がされた場合に比肩するということができる。」
譲渡登記の場合(昭和36年判決)との同視
「被上告人は,本件抵当権の設定登記の日を起算点として,本件旧土地を時効取得し,その結果,本件抵当権は消滅したというべきである。」
再度の時効の起算点は設定登記日
この解説は AI が作成しています。判決全文に基づいて書き、別の AI が全文と照合して確認していますが、誤りが残っている可能性があります。 判決文の引用は全文と一字一句照合したものだけを載せています。大事な点は判決全文で確かめてください。
