老齢加算廃止訴訟
生活保護の老齢加算廃止は、厚労大臣の専門技術的・政策的裁量の範囲内であり、生活保護法3条・8条2項にも憲法25条にも反しないとした判例
出題:司法H26・司法R3・司法R5・司法R7・予備H28・予備R3・予備R6
- 裁判所
- 最高裁判所第三小法廷
- 事件番号
- 平成22(行ツ)392 生活保護変更決定取消請求事件
- 裁判
- 判決・棄却
- 判例集
- 民集 第66巻3号1240頁
- 参照法条
- 生活保護法3条,生活保護法8条,生活保護法による保護の基準(昭和38年厚生省告示第158号。平成16年厚生労働省告示第130号による改正前のもの)別表第1第2章2
判示事項・裁判要旨
裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)
判示事項
生活扶助の老齢加算の廃止を内容とする生活保護法による保護の基準(昭和38年厚生省告示第158号)の改定が生活保護法3条又は8条2項の規定に違反しないとされた事例
裁判要旨
生活扶助の老齢加算の廃止を内容とする生活保護法による保護の基準(昭和38年厚生省告示第158号)の改定は,次の(1)〜(3)など判示の事情の下においては,その改定に係る厚生労働大臣の判断に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるとはいえず,生活保護法3条又は8条2項の規定に違反しない。 (1)ア 上記改定開始の5年前には,老齢加算の対象となる70歳以上の者の需要は収入階層を問わず60ないし69歳の者の需要より少なく,70歳以上の単身者に対する老齢加算を除く生活扶助額は70歳以上の低所得単身無職者の生活扶助相当消費支出額を上回っていた。 イ 上記改定開始の20年前から2年前までの間における生活扶助に関する基準の改定率は消費者物価指数及び賃金の各伸び率を上回っており,上記改定開始の21年前から被保護勤労者世帯の消費支出の割合は一般勤労者世帯の消費支出の7割前後で推移していた。 ウ 上記改定開始の24年前と同4年前とを比較すると,被保護勤労者世帯の平均において消費支出に占める食料費の割合は低下していた。 (2)ア 上記改定による老齢加算の廃止は,3年間かけて段階的な減額を経て行われた。 イ 上記改定開始の5年前には,老齢加算のある被保護者世帯における貯蓄の純増額は老齢加算の額と近似した水準に達しており,老齢加算のない被保護者世帯における貯蓄の純増額との差額が月額5000円を超えていた。 (3) 上記改定は,専門家によって構成される専門委員会が統計等の客観的な数値等や専門的知見に基づいて示した意見に沿ったものであった。 ※生活扶助相当消費支出額:消費支出額の全体から,生活扶助以外の扶助に該当するもの,被保護世帯は免除されているもの及び家事使用人給料等の最低生活費になじまないものを控除した残額
解説
事案
東京都内に住み、生活保護法に基づく生活扶助を受けていたXらが原告である。厚生労働大臣は、生活保護法の委任に基づく保護基準(昭和38年厚生省告示158号)を数次にわたって改定した(本件改定)。その内容は、原則70歳以上の者に支給されていた老齢加算(1級地で月額1万7930円)を平成16年度から3年かけて段階的に減額し、最終的に廃止するものである。これを受けて福祉事務所長らは、Xらの生活扶助支給額を減額する保護変更決定をした。
本件改定に先立ち、社会保障審議会福祉部会に設置された専門委員会が、全国消費実態調査の特別集計などを検討した。その結果、70歳以上の者の需要は60〜69歳の者より少なく、老齢加算に相当する特別な需要は認められないとして、廃止の方向で見直すべきとの中間取りまとめを公表した。中間取りまとめは、あわせて激変緩和措置を講ずべきことも指摘していた。
Xらは、本件改定が憲法25条1項、生活保護法3条・8条・9条・56条等に反すると主張し、各保護変更決定の取消しを求めた。原審は請求を退け、Xらが上告した。
争点
- 保護基準の減額改定に生活保護法56条(不利益変更の禁止)が適用されるか
- 老齢加算廃止を内容とする保護基準改定における厚生労働大臣の裁量の有無・範囲
- 保護基準改定の違法性(生活保護法3条・8条2項違反)の判断枠組み
- 本件改定が憲法25条に違反するか
判旨
上告棄却。本件改定は適法・合憲である。
- 生活保護法56条は、すでに決定された保護を正規の変更手続によらずに不利益変更されない地位を保障する規定である。保護基準自体の減額改定に基づく減額決定は、同条の規律対象ではない。
- 最低限度の生活は抽象的・相対的な概念である。保護基準での具体化には高度の専門技術的考察と政策的判断を要するため、厚労大臣には専門技術的かつ政策的な見地からの裁量権がある。
- その対象は、①老齢に起因する特別な需要の存否と改定後の基準の妥当性、②廃止の具体的方法(激変緩和措置の要否等)である。
- 改定が生活保護法3条・8条2項に違反し違法となるのは、次のいずれかの場合である。
- ①の判断に、判断の過程及び手続における過誤、欠落の有無等の観点からみて裁量権の逸脱・濫用がある場合
- ②の判断に、被保護者の期待的利益や生活への影響等の観点からみて裁量権の逸脱・濫用がある場合
- 本件ではいずれも認められない。生活保護法3条・8条2項に違反しない以上、憲法25条にも違反しない。
判決文から
「これを保護基準において具体化するに当たっては,高度の専門技術的な考察とそれに基づいた政策的判断を必要とするものである」
厚労大臣の裁量を認める根拠(堀木訴訟の引用)
「最低限度の生活の具体化に係る判断の過程及び手続における過誤,欠落の有無等の観点からみて裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があると認められる場合」
特別な需要の判断についての判断過程審査の規範
「保護基準によって具体化されていたその期待的利益の喪失を来す側面があることも否定し得ないところである」
給付廃止の場面で期待的利益への配慮を要求
「被保護者の期待的利益や生活への影響等の観点からみて裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があると認められる場合」
激変緩和措置の判断についての審査の観点
「統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性に欠けるところはない」
判断過程審査の具体的な当てはめの基準
「保護基準自体が減額改定されることに基づいて保護の内容が減額決定される本件のような場合については,同条が規律するところではないというべきである」
生活保護法56条の適用を否定
この解説は AI が作成しています。判決全文に基づいて書き、別の AI が全文と照合して確認していますが、誤りが残っている可能性があります。 判決文の引用は全文と一字一句照合したものだけを載せています。大事な点は判決全文で確かめてください。
