最決平成24年11月6日
傷害罪の途中加担者は、加担前に生じた傷害について共同正犯の責任を負わず、加担後の暴行で寄与した傷害についてのみ責任を負う
出題:司法H22・司法H28・司法H29・司法R1・司法R3・司法R5・司法R6・司法R7・予備H26・予備R5・予備R7
- 裁判所
- 最高裁判所第二小法廷
- 事件番号
- 平成24(あ)23 傷害,強盗,建造物侵入,窃盗被告事件
- 裁判
- 決定・棄却
- 判例集
- 刑集 第66巻11号1281頁
- 参照法条
- 刑法60条,刑法204条
判示事項・裁判要旨
裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)
判示事項
共謀加担後の暴行が共謀加担前に他の者が既に生じさせていた傷害を相当程度重篤化させた場合の傷害罪の共同正犯の成立範囲
裁判要旨
他の者が被害者に暴行を加えて傷害を負わせた後に,被告人が共謀加担した上,更に暴行を加えて被害者の傷害を相当程度重篤化させた場合,被告人は,被告人の共謀及びそれに基づく行為と因果関係を有しない共謀加担前に既に生じていた傷害結果については,傷害罪の共同正犯としての責任を負うことはなく,共謀加担後の傷害を引き起こすに足りる暴行によって傷害の発生に寄与したことについてのみ,傷害罪の共同正犯としての責任を負う。
解説
事案
AとBは、CとDを呼び出し、殴打や足蹴りのほか、のぼり旗の支柱、ドライバー、石を用いた暴行を加えた。その後2人を車で別の駐車場(本件現場)に連行し、金属製はしごや角材を投げつけるなどの暴行をさらに加えた。この時点でCらは既に流血し、負傷していた。
Bから連絡を受けた被告人は現場に到着した。被告人は、CらがAらの暴行で逃走や抵抗が困難な状態にあると認識したうえでAらと共謀し、角材や金属製はしごで背中・足・頭などを多数回殴打するなどの暴行を約1時間加えた。加担後の被告人の暴行は、それ以前のAらの暴行より激しかった。
一連の暴行の結果、Dは約3週間、Cは約6週間の安静加療を要する傷害を負った。原判決は、被告人がAらの行為と結果を制裁目的の暴行の手段として積極的に利用したとして、加担前の傷害を含む全体について承継的共同正犯の成立を認めた。
争点
- 傷害罪の途中から共謀加担した者は、加担前に先行者が生じさせていた傷害結果について共同正犯の責任を負うか(承継的共同正犯の成否)
- 先行者の暴行で生じた被害者の状態を認識・利用する意思があることは、承継を基礎づけるか
判旨
被告人は、共謀加担前にAらが既に生じさせていた傷害結果について傷害罪の共同正犯の責任を負わない。被告人の共謀およびそれに基づく行為は、その結果と因果関係を有しないからである。
被告人が責任を負うのは、共謀加担後の傷害を引き起こすに足りる暴行によって傷害の発生に寄与したことについてのみである。
被害者が負傷し、逃亡・抵抗が困難な状態にあることを利用して暴行に及んだという事実は、加担後の暴行の動機ないし契機にすぎず、加担前の傷害結果について刑事責任を問う理由とはならない。
したがって、加担前の傷害を含めて共同正犯の成立を認めた原判決には、刑法60条・204条の解釈適用の誤りがある。ただし、この誤りは一罪内の成立範囲にとどまり、罪数・処断刑に影響しない。量刑も不当ではないため、刑訴法411条は適用されず、上告は棄却された。
判決文から
「被告人は,共謀加担前にAらが既に生じさせていた傷害結果については,被告人の共謀及びそれに基づく行為がこれと因果関係を有することはないから,傷害罪の共同正犯としての責任を負うことはなく」
加担前の結果を因果関係の欠如で否定する核心部分
「共謀加担後の傷害を引き起こすに足りる暴行によってCらの傷害の発生に寄与したことについてのみ,傷害罪の共同正犯としての責任を負うと解するのが相当である。」
責任範囲の規範。答案にそのまま使える
「それは,被告人が共謀加担後に更に暴行を行った動機ないし契機にすぎず,共謀加担前の傷害結果について刑事責任を問い得る理由とはいえないものであって」
積極的利用意思による承継を否定した部分
「少なくとも傷害罪については,このような因果関係は認め難いので」
補足意見。傷害罪では承継の余地はほぼないとする
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