最決平成24年1月26日
相続分指定の減殺は遺留分超過割合に応じて修正される。持戻し免除は遺留分侵害の限度で失効し、遺留分権利者に加算される(旧法下)
出題:司法H29・予備H29
- 裁判所
- 最高裁判所第一小法廷
- 事件番号
- 平成23(許)25 遺産分割審判に対する抗告審の変更決定に対する許可抗告事件
- 裁判
- 決定・破棄差戻
- 判例集
- 集民 第239号635頁
- 参照法条
- (1,2につき)民法1031条 (1につき)民法902条 (2につき)民法903条
判示事項・裁判要旨
裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)
判示事項
1 相続分の指定が遺留分減殺請求により減殺された場合の効果 2 特別受益に当たる贈与についてされたいわゆる持戻し免除の意思表示が遺留分減殺請求により減殺された場合における具体的相続分の算定方法
裁判要旨
1 遺留分減殺請求により相続分の指定が減殺された場合には,遺留分割合を超える相続分を指定された相続人の指定相続分が,その遺留分割合を超える部分の割合に応じて修正される。 2 特別受益に当たる贈与についてされた当該贈与に係る財産の価額を相続財産に算入することを要しない旨の被相続人の意思表示が遺留分減殺請求により減殺された場合,当該贈与に係る財産の価額は,上記意思表示が遺留分を侵害する限度で,遺留分権利者である相続人の相続分に加算され,当該贈与を受けた相続人の相続分から控除される。
解説
事案
Aが平成17年12月23日に死亡した。相続人は、妻Y1、Y1との間の子Y2・Y3、先妻との間の子X1〜X3の6名である。遺産分割の対象は、現金3020万円、株式および宝飾品であった。
Aは生前、Y2に対し、生計の資本として株式・現金・預貯金等を贈与し、その価額を相続財産に算入することを要しない旨の意思表示(持戻し免除の意思表示)をしていた。さらに公正証書遺言で、相続分を次のとおり指定した。
- Y1:2分の1
- Y2・Y3:各4分の1
- Xら:零
XらはYらに対し遺留分減殺請求をした。
原審は次のとおり判断した。
- 相続分の指定は、法定相続分を超える部分の割合に応じて修正される。その結果、Y1は2分の1、Y2・Y3は各40分の7、Xらは各20分の1となる。
- 持戻し免除は、Xらの遺留分を侵害する合計20分の3の限度で失効する。
- その限度の贈与額を遺産に加算して「みなし相続財産」とし、修正相続分を乗じ、Y2の相続分から贈与額を控除して具体的相続分を算定した。
Xらが許可抗告した。
争点
- 遺留分減殺請求により相続分の指定が減殺された場合、指定相続分はどのように修正されるか
- 持戻し免除の意思表示がされた特別受益たる贈与の価額は、遺留分算定の基礎財産に算入されるか
- 持戻し免除の意思表示が減殺された場合、具体的相続分をどう算定するか
判旨
原決定を破棄し、差し戻した。
- 相続分指定の減殺:遺留分割合を超える相続分を指定された相続人の指定相続分が、その遺留分割合を超える部分の割合に応じて修正される。原審のように法定相続分を基準とするのではない。
- 基礎財産への算入:持戻し免除の意思表示があっても、特別受益たる贈与の価額は遺留分算定の基礎となる財産額に算入される。
- 持戻し免除の減殺:持戻し免除の意思表示は遺留分を侵害する限度で失効する。当該贈与の価額は、その限度で遺留分権利者である相続人の相続分に加算され、贈与を受けた相続人の相続分から控除される。
- 本件への当てはめ:修正後の指定相続分は、Y1が52分の23、Y2・Y3が各260分の53、Xらが各20分の1となる。これに上記の加算・控除を行って具体的相続分を算定する。
判決文から
「遺留分減殺請求により相続分の指定が減殺された場合には,遺留分割合を超える相続分を指定された相続人の指定相続分が,その遺留分割合を超える部分の割合に応じて修正されるものと解するのが相当である」
修正基準は法定相続分ではなく遺留分割合
「上記価額は遺留分算定の基礎となる財産額に算入されるものと解される」
持戻し免除があっても基礎財産に算入
「持戻し免除の意思表示は,遺留分を侵害する限度で失効し,当該贈与に係る財産の価額は,上記の限度で,遺留分権利者である相続人の相続分に加算され,当該贈与を受けた相続人の相続分から控除されるものと解するのが相当である」
持戻し免除減殺の効果=権利者に加算・受贈者から控除
「上記価額が共同相続人全員に配分され,遺留分権利者において遺留分相当額の財産を確保し得ないこととなり,上記の遺留分制度の趣旨に反する結果となることは明らかである」
原審のみなし相続財産方式を否定した理由
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