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起立斉唱事件(国歌斉唱職務命令事件)

最判平成23年5月30日

卒業式での起立斉唱を命じる職務命令は思想・良心の自由の間接的制約にとどまり、必要性・合理性があるため憲法19条に違反しない

憲法思想・良心の自由その他の抗告訴訟(義務付け・差止め)本試験で 13 問(短答 13・論文 0)

出題:司法H28・司法H29・司法R3・司法R7・予備H29・予備R2・予備R6

裁判所
最高裁判所第二小法廷
事件番号
平成22(行ツ)54 再雇用拒否処分取消等請求事件
裁判
判決・棄却
判例集
民集 第65巻4号1780頁
参照法条
憲法15条2項,憲法19条,地方公務員法30条,地方公務員法32条,学校教育法(平成19年法律第96号による改正前のもの)18条2号,学校教育法(平成19年法律第96号による改正前のもの)28条3項,学校教育法(平成19年法律第96号による改正前のもの)36条1号,学校教育法(平成19年法律第96号による改正前のもの)42条1号,学校教育法(平成19年法律第96号による改正前のもの)51条,国旗及び国歌に関する法律1条1項,国旗及び国歌に関する法律2条1項,高等学校学習指導要領(平成11年文部省告示第58号。平成21年文部科学省告示第38号による特例の適用前のもの)第4章第2C(1),高等学校学習指導要領(平成11年文部省告示第58号。平成21年文部科学省告示第38号による特例の適用前のもの)第4章第3の3

判示事項・裁判要旨

裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)

判示事項

公立高等学校の校長が教諭に対し卒業式における国歌斉唱の際に国旗に向かって起立し国歌を斉唱することを命じた職務命令が憲法19条に違反しないとされた事例

裁判要旨

公立高等学校の校長が教諭に対し卒業式における国歌斉唱の際に国旗に向かって起立し国歌を斉唱することを命じた職務命令は,次の(1)〜(3)など判示の事情の下では,当該教諭の思想及び良心の自由を侵すものとして憲法19条に違反するということはできない。 (1) 上記の起立斉唱行為は,学校の儀式的行事における慣例上の儀礼的な所作としての性質を有するものであり,「日の丸」や「君が代」が戦前の軍国主義等との関係で一定の役割を果たしたとする当該教諭の歴史観ないし世界観を否定することと不可分に結び付くものではなく,上記職務命令は,その歴史観ないし世界観それ自体を否定するものとはいえない。 (2) 上記の起立斉唱行為は,学校の儀式的行事における慣例上の儀礼的な所作として外部からも認識されるものであって,特定の思想又はこれに反する思想の表明として外部から認識されるものと評価することは困難であり,上記職務命令は,当該教諭に特定の思想を持つことを強制したり,これに反する思想を持つことを禁止したりするものではなく,特定の思想の有無について告白することを強要するものともいえない。 (3) 上記の起立斉唱行為は,国旗及び国歌に対する敬意の表明の要素を含む行為であり,上記(1)の歴史観ないし世界観を有する者がこれを求められることはその歴史観ないし世界観に由来する行動と異なる外部的行為を求められることとなる面があるところ,他方,上記職務命令は,高等学校教育の目標や卒業式等の儀式的行事の意義,在り方等を定めた関係法令等の諸規定の趣旨に沿い,かつ,地方公務員の地位の性質及びその職務の公共性を踏まえた上で,生徒等への配慮を含め,教育上の行事にふさわしい秩序の確保とともに当該式典の円滑な進行を図るものである。 (補足意見がある。)

判決全文(裁判所ウェブサイト)

解説

事案

都立高校の教諭Xは、平成16年3月、校長から卒業式の国歌斉唱の際に国旗に向かって起立し国歌を斉唱する(起立斉唱行為)よう命じる職務命令を受けた。この命令は、学習指導要領の国旗国歌条項を受けて都教委教育長が発した通達を踏まえたものである。Xはこれに従わず起立しなかったため、戒告処分を受けた。その後Xは、定年退職に先立って非常勤嘱託員・再任用の採用選考に申し込んだが、都教委は上記の不起立が職務命令違反等の非違行為に当たることを理由に、いずれも不合格とした。Xは、本件職務命令は憲法19条に違反し、不合格としたことは違法であるとして、都に対し国家賠償法1条1項に基づく損害賠償等を求めた。Xは、日本の侵略戦争の歴史を学ぶ在日朝鮮人・在日中国人の生徒に「日の丸」「君が代」を強制することは教師としての良心が許さない、と主張していた。

争点

  • 起立斉唱を命じる職務命令は、思想・良心の自由(憲法19条)を直接制約するか
  • 直接の制約に当たらないとしても、間接的な制約となるか。なるとすれば、どのような基準で許容性を判断するか
  • 「式典で一律の行動を強制されるべきでない」という信条への制約を、別途検討する必要があるか

判旨

結論:本件職務命令は憲法19条に違反しない(上告棄却。全員一致)。

  • 直接的制約の否定:起立斉唱行為は、一般的・客観的に見て、式典における慣例上の儀礼的な所作であり、外部からもそう認識される。したがって、Xの歴史観・世界観の否定と不可分に結び付くものではない。また、特定の思想の強制・禁止や、思想の有無の告白の強要にも当たらない。よって、思想・良心の自由を直ちに制約するものではない。
  • 間接的制約の肯定:起立斉唱行為は、国旗・国歌への敬意の表明の要素を含む。そのため、歴史観・世界観に由来する行動(敬意の表明の拒否)と異なる外部的行為を求めることになり、その限りで間接的な制約となる面がある。
  • 規範:間接的制約が許容されるか否かは、職務命令の目的および内容、ならびに制限を介して生ずる制約の態様等を総合的に較量し、当該職務命令に、制約を許容しうる程度の必要性および合理性が認められるか否かという観点から判断する。
  • あてはめ:本件職務命令は、関係法令の趣旨に沿い、地方公務員の地位の性質・職務の公共性を踏まえたものである。そして、教育上の行事にふさわしい秩序の確保と式典の円滑な進行を図るものであるから、必要性・合理性が認められる。

判決文から

「学校の儀式的行事である卒業式等の式典における国歌斉唱の際の起立斉唱行為は,一般的,客観的に見て,これらの式典における慣例上の儀礼的な所作としての性質を有するものであり」

直接的制約を否定する前提となる行為の性質決定

「個人の思想及び良心の自由を直ちに制約するものと認めることはできないというべきである。」

直接的制約の否定という第1段階の結論

「その限りにおいて,その者の思想及び良心の自由についての間接的な制約となる面があることは否定し難い。」

敬意表明の要素を根拠に間接的制約を肯定

「職務命令の目的及び内容並びに上記の制限を介して生ずる制約の態様等を総合的に較量して,当該職務命令に上記の制約を許容し得る程度の必要性及び合理性が認められるか否かという観点から判断するのが相当である。」

間接的制約の許容性の判断基準(答案用規範)

この解説は AI が作成しています。判決全文に基づいて書き、別の AI が全文と照合して確認していますが、誤りが残っている可能性があります。 判決文の引用は全文と一字一句照合したものだけを載せています。大事な点は判決全文で確かめてください。