SaySayLaw

大阪母子殺害事件

最判平成22年4月27日

情況証拠で有罪とするには、間接事実中に被告人が犯人でないとしたら合理的に説明できない事実関係が含まれることを要するとした判決

刑事訴訟法証拠能力総論・違法収集証拠裁判・一事不再理本試験で 5 問(短答 5・論文 0)

出題:予備H28・予備R6

裁判所
最高裁判所第三小法廷
事件番号
平成19(あ)80 殺人,現住建造物等放火被告事件
裁判
判決・破棄差戻
判例集
刑集 第64巻3号233頁
参照法条
刑法108条,刑法199条,刑訴法317条,刑訴法411条1号,刑訴法411条3号,刑訴法413条本文

判示事項・裁判要旨

裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)

判示事項

殺人,現住建造物等放火の公訴事実について間接事実を総合して被告人を有罪とした第1審判決及びその事実認定を是認した原判決に,審理不尽の違法,事実誤認の疑いがあるとされた事例

裁判要旨

殺人,現住建造物等放火の公訴事実について,間接事実を総合して被告人が犯人であるとした第1審判決及びその事実認定を是認した原判決は,認定された間接事実中に被告人が犯人でないとしたならば合理的に説明することができない(あるいは,少なくとも説明が極めて困難である)事実関係が含まれているとは認められないなど,間接事実に関する審理不尽の違法,事実誤認の疑いがあり,刑訴法411条1号,3号により破棄を免れない。 (補足意見,意見,反対意見がある。)

判決全文(裁判所ウェブサイト)

解説

事案

被告人は、養子Bの妻C(当時28歳)とその長男D(当時1歳)を大阪市内のマンション306号室で殺害し、同室に放火したとして起訴された。被告人は犯行を全面的に否認し、事件当日まで現場マンションの場所を知らなかったと主張した。争点は犯人性であり、直接証拠はなかった。

第1審は、次のような間接事実を総合して有罪と認定し、無期懲役とした。

  • 現場マンションの階段踊り場の灰皿にあった吸い殻1本のDNA型が被告人と一致した。
  • 被告人の車と同種・同色の車が付近に駐車されていた。
  • 付近で被告人によく似た人物が目撃された。
  • 被告人がCに怒りを爆発させてもおかしくない状況があった。
  • 犯行時刻ころ被告人が携帯電話の電源を切っていた。
  • 当日の行動についての被告人の供述があいまいだった。

原審は、被告人がマンションに立ち入ったと認める司法警察員面前調書(乙14)について任意性を否定し、第1審の採用は刑訴法322条1項違反とした。もっとも、この違反は判決に影響を及ぼさないとして事実認定を維持した。そのうえで検察官の量刑不当の控訴を容れ、被告人を死刑に処した。

争点

  • 情況証拠のみによる有罪認定において、合理的な疑いを差し挟む余地のない程度の立証があったといえるための判断基準
  • 吸い殻のDNA型一致から、被告人が事件当日に現場マンションに赴いたと推認できるか(携帯灰皿経由で捨てられた可能性の排斥の当否)
  • 第1審判決と原判決に、刑訴法411条1号の審理不尽の違法、同条3号の事実誤認の疑いがあるか

判旨

原判決と第1審判決をともに破棄し、大阪地裁に差し戻した(刑訴法411条1号・3号、413条本文)。

規範

  • 有罪認定には、合理的な疑いを差し挟む余地のない程度の立証が必要である。
  • 情況証拠によって事実認定をする場合も、直接証拠による場合と立証の程度に差はない。
  • ただし直接証拠がない以上、情況証拠によって認められる間接事実中に、被告人が犯人でないとしたならば合理的に説明することができない(あるいは、少なくとも説明が極めて困難である)事実関係が含まれていることを要する。

あてはめ

  • 本件吸い殻が携帯灰皿を経由してCにより捨てられた可能性は否定できない。したがって、被告人が当日マンションに赴いた事実は認定できない。
  • 仮にその事実が認められても、他の間接事実を加えて上記の事実関係が存在するといえるかには疑問がある。
  • 第1審・原審は、この観点からの審理を尽くしておらず、事実を誤認した疑いがある。これは判決に影響を及ぼすことが明らかであり、著しく正義に反する。

判決文から

「刑事裁判における有罪の認定に当たっては,合理的な疑いを差し挟む余地のない程度の立証が必要であるところ,情況証拠によって事実認定をすべき場合であっても,直接証拠によって事実認定をする場合と比べて立証の程度に差があるわけではないが」

情況証拠でも証明の程度は同じという前提

「直接証拠がないのであるから,情況証拠によって認められる間接事実中に,被告人が犯人でないとしたならば合理的に説明することができない(あるいは,少なくとも説明が極めて困難である)事実関係が含まれていることを要するものというべきである。」

本判決の中核となる規範

「本件事案の重大性からすれば,そのような観点に立った上で,第1審が有罪認定に用いなかったものを含め,他の間接事実についても更に検察官の立証を許し,これらを総合的に検討することが必要である。」

自判でなく第1審差戻しとした理由

「「仮説」を「真実」というためには,本来,それ以外の説明はできないことが明らかにされなければならないのであって」

藤田補足意見による規範の理論的根拠

「この説示部分は,法令の解釈適用ではなく,経験則を示すものである。」

反対意見による規範の性質づけ

この解説は AI が作成しています。判決全文に基づいて書き、別の AI が全文と照合して確認していますが、誤りが残っている可能性があります。 判決文の引用は全文と一字一句照合したものだけを載せています。大事な点は判決全文で確かめてください。