街頭募金詐欺事件
不特定多数の通行人から金をだまし取った街頭募金詐欺を包括一罪とし、総額などの摘示で罪となるべき事実の特定を認めた決定
出題:司法R6・予備R6
- 裁判所
- 最高裁判所第二小法廷
- 事件番号
- 平成21(あ)178 職業安定法違反,詐欺,組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律違反
- 裁判
- 決定・棄却
- 判例集
- 刑集 第64巻2号111頁
- 参照法条
- (1,2につき)刑法246条1項 (2につき)刑訴法335条1項
判示事項・裁判要旨
裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)
判示事項
1 街頭募金詐欺について包括一罪と解することができるとされた事例 2 包括一罪を構成する街頭募金詐欺について,その罪となるべき事実の特定に欠けるところはないとされた事例
裁判要旨
1 街頭募金の名の下に通行人から現金をだまし取ろうと企てた者が,約2か月間にわたり,事情を知らない多数の募金活動員を通行人の多い複数の場所に配置し,募金の趣旨を立看板で掲示させるとともに,募金箱を持たせて寄付を勧誘する発言を連呼させ,これに応じた通行人から現金をだまし取ったという本件街頭募金詐欺については,(1)不特定多数の通行人一般に対し一括して同一内容の定型的な働き掛けを行って寄付を募るという態様のものであること,(2)1個の意思,企図に基づき継続して行われた活動であること,(3)被害者が投入する寄付金を個々に区別して受領するものではないことなどの特徴(判文参照)にかんがみると,これを一体のものと評価して包括一罪と解することができる。 2 包括一罪を構成する判示のような街頭募金詐欺の罪となるべき事実については,募金に応じた多数人を被害者とした上,被告人の行った募金の方法,その方法により募金を行った期間,場所及びこれにより得た総金額を摘示することをもってその特定に欠けるところはない。
解説
事案
被告人は、難病の子供たちの支援活動を装い、街頭募金の名目で通行人から金をだまし取ろうと企てた。実際には、集めた金から経費や人件費等を差し引いた残りの大半を自分のために使うつもりであった。被告人は、虚偽広告等で事情を知らないアルバイトの募金活動員を雇った。そして平成16年10月21日ころから12月22日ころまでの約2か月間、大阪・堺・京都・神戸・奈良の各市内とその周辺の路上に活動員を配置した。活動員には「幼い命を救おう!」「特定非営利団体NPO緊急支援グループ」などと大書した立看板を立てさせ、募金箱を持たせて「難病の子供たちを救うために募金に協力をお願いします。」などと連呼させた。これを見聞きした多数の通行人は、寄付金が難病の子供たちへの支援に充てられると誤信し、1人あたり1円から1万円の現金を寄付した。被告人はこうして総額約2480万円を得た。個々の被害者と被害額は特定できなかった。原審(大阪高裁)は全体を包括一罪とし、弁護人が上告した。
争点
- 多数の被害者に対する街頭募金詐欺は、被害者ごとの併合罪か、包括一罪か
- 包括一罪とした場合、罪となるべき事実(刑訴法335条1項)をどう特定すればよいか
- 被害者・被害額が特定できず、募金に応じた動機もさまざまな場合に、錯誤と交付の関係(詐欺罪の成立)を認められるか
判旨
上告棄却。最高裁は職権で次のように判断した。
- 詐欺罪の成立:個々の被害者・被害額が特定できなくても、現に募金に応じた多数の者との関係で詐欺罪(刑法246条1項)は成立する。応じた動機がさまざまでも、被告人の真意を知っていれば応じなかったと推認されるから、錯誤に基づく交付にあたる。
- 罪数:本件には次の特徴がある。これらを考えると、全体を一体のものと評価して包括一罪と解することができる。
- 不特定多数の通行人一般に対し、一括して同一内容の定型的な働き掛けを行って寄付を募る態様であること
- 被告人の1個の意思・企図に基づき継続して行われた活動であること
- 被害者が投入した現金はすぐに混ざり合って特定性を失い、個々に区別して受領するものではないこと
- 事実の特定:罪となるべき事実は、次の事項を摘示すれば特定に欠けるところはない。
- 募金に応じた多数人を被害者とすること
- 募金の方法
- その方法で募金を行った期間・場所
- これにより得た総金額
判決文から
「個々の被害者ごとに区別して個別に欺もう行為を行うものではなく,不特定多数の通行人一般に対し,一括して,適宜の日,場所において,連日のように,同一内容の定型的な働き掛けを行って寄付を募るという態様のものであり」
包括一罪を基礎づける第1の特徴(行為態様の一体性)
「被告人の1個の意思,企図に基づき継続して行われた活動であったと認められる。」
第2の特徴(犯意の単一性・継続性)
「募金箱に投入された現金は直ちに他の被害者が投入したものと混和して特定性を失うものであって,個々に区別して受領するものではない。」
第3の特徴(被害の没個性性・混和)
「募金に応じた多数人を被害者とした上,被告人の行った募金の方法,その方法により募金を行った期間,場所及びこれにより得た総金額を摘示することをもってその特定に欠けるところはないというべきである。」
包括一罪の場合の罪となるべき事実の特定方法
「被告人の真意を知っていれば募金に応じることはなかったものと推認されるのであり」
動機が多様でも錯誤を肯定した理由
この解説は AI が作成しています。判決全文に基づいて書き、別の AI が全文と照合して確認していますが、誤りが残っている可能性があります。 判決文の引用は全文と一字一句照合したものだけを載せています。大事な点は判決全文で確かめてください。
