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空知太神社事件

最大判平成22年1月20日

市有地を神社施設の敷地として無償で提供する行為を、総合判断により憲法89条・20条1項後段違反とした判決

憲法信教の自由・政教分離当事者訴訟・民衆訴訟財政・地方自治本試験で 18 問(短答 17・論文 1)

出題:司法H23・司法H24・司法H29・司法R2・司法R4・司法R6・予備H27・予備R4

裁判所
最高裁判所大法廷
事件番号
平成19(行ツ)260 財産管理を怠る事実の違法確認請求事件
裁判
判決・破棄差戻
判例集
民集 第64巻1号1頁
参照法条
(1について)憲法20条1項,憲法89条 (2について)民訴法149条1項,民訴法149条2項,地方自治法242条の2第1項3号

判示事項・裁判要旨

裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)

判示事項

1 市が連合町内会に対し市有地を無償で神社施設の敷地としての利用に供している行為が憲法89条,20条1項後段に違反するとされた事例 2 市が連合町内会に対し市有地を無償で神社施設の敷地としての利用に供している行為が憲法の定める政教分離原則に違反し,市長において同施設の撤去及び土地明渡しを請求しないことが違法に財産の管理を怠るものであるとして,市の住民が怠る事実の違法確認を求めている住民訴訟において,上記行為が違憲と判断される場合に,その違憲性を解消するための他の合理的で現実的な手段が存在するか否かについて審理判断せず,当事者に対し釈明権を行使しないまま,上記怠る事実を違法とした原審の判断に違法があるとされた事例

裁判要旨

1 市が連合町内会に対し市有地を無償で建物(地域の集会場等であるが,その内部に祠が設置され,外壁に神社の表示が設けられている。),鳥居及び地神宮の敷地としての利用に供している行為は,次の(1),(2)など判示の事情の下では,上記行為がもともとは小学校敷地の拡張に協力した地元住民に報いるという世俗的,公共的な目的から始まったものであるとしても,一般人の目から見て,市が特定の宗教に対して特別の便益を提供し,これを援助していると評価されてもやむを得ないものであって,憲法89条,20条1項後段に違反する。 (1) 鳥居,地神宮,神社と表示された建物入口から祠に至る上記各物件は,一体として神道の神社施設に当たるもので,そこで行われている諸行事も,このような施設の性格に沿って宗教的行事として行われている。 (2) 上記各物件を管理し,祭事を行っている氏子集団は,祭事に伴う建物使用の対価を連合町内会に支払うほかは,上記各物件の設置に通常必要とされる対価を支払うことなく,その設置に伴う便益を長期間にわたり継続的に享受しており,前記行為は,その直接の効果として,宗教団体である氏子集団が神社を利用した宗教的活動を行うことを容易にするものである。 2 市が連合町内会に対し市有地を無償で神社施設の敷地としての利用に供している行為が憲法の定める政教分離原則に違反し,市長において同施設の撤去及び土地明渡しを請求しないことが違法に財産の管理を怠るものであるとして,市の住民が怠る事実の違法確認を求めている住民訴訟において,上記行為が違憲と判断される場合に,次の(1)〜(3)など判示の事情の下では,その違憲性を解消するための他の合理的で現実的な手段が存在するか否かについて審理判断せず,当事者に対し釈明権を行使しないまま,上記怠る事実を違法とした原審の判断には,違法がある。 (1) 上記神社施設を直ちに撤去させるべきものとすることは,氏子集団の同施設を利用した宗教的活動を著しく困難なものにし,その構成員の信教の自由に重大な不利益を及ぼすものとなる。 (2) 神社施設の撤去及び土地明渡請求以外に,例えば土地の譲与,有償譲渡又は適正な対価による貸付け等,上記行為の違憲性を解消するための他の手段があり得ることは,当事者の主張の有無にかかわらず明らかである。 (3) 原審は,当事者がほぼ共通する他の住民訴訟の審理を通じて,上記行為の違憲性を解消するための他の手段が存在する可能性があり,市長がこうした手段を講ずる場合があることを職務上知っていた。 (1,2につき補足意見,意見及び反対意見がある。)

判決全文(裁判所ウェブサイト)

解説

事案

砂川市は、その所有する土地を、S連合町内会に対し、地域の集会場であるS会館、鳥居および地神宮の敷地として無償で使わせていた。会館の一角には天照大神が宿るとされる鏡を置いた祠があり、外壁には「神社」の表示がある。鳥居、神社入口および祠は一直線上に配置されていた。神社は付近住民の氏子集団が管理運営し、初詣で・春祭り・秋祭りの年3回、祭事を行っていた(宮司の派遣やのぼりの掲示を伴う)。氏子集団は、祭事の際の建物使用料として年6万円を町内会に支払うほかは、対価を払っていなかった。

経緯は次のとおりである。昭和23年ころ、小学校の拡張に伴って神社を移転する必要が生じ、住民Dが自己の土地を移転先として提供した。Dは昭和28年、固定資産税の負担を解消するため、この土地を町に寄附した。町議会は、採納と、祠等のために無償で使用させることを議決した。その後、会館の新築や隣地の買受けを経て、敷地はすべて市有地となった。

市の住民が、市長が使用貸借契約を解除せず、施設の撤去と土地明渡しを請求しないことは違法に財産の管理を怠るものだとして、地方自治法242条の2第1項3号に基づき、怠る事実の違法確認を求めた。原審は、撤去請求を怠る事実の違法確認の限度で請求を認容した。

争点

  • 市有地を神社施設の敷地として無償で提供する行為は、憲法89条・20条1項後段に違反するか(判断枠組みを含む)
  • 氏子集団は憲法89条の「宗教上の組織若しくは団体」に当たるか
  • 利用提供行為が違憲の場合、市長が撤去・土地明渡しを請求しないことは直ちに財産管理を怠る違法となるか
  • 違憲状態を解消する他の手段の有無について、原審に審理判断・釈明権行使の義務があったか

判旨

原判決を破棄し、札幌高裁に差し戻した。

  • 憲法89条の解釈:同条も、国家と宗教との一切の関係を禁ずるものではない。公の財産の利用提供等における宗教とのかかわり合いが、我が国の社会的、文化的諸条件に照らし、信教の自由の保障の確保という制度の根本目的との関係で相当とされる限度を超える場合に、これを許さないものである。
  • 判断基準:国公有地を無償で宗教的施設の敷地として提供する行為が89条に違反するかは、①当該宗教的施設の性格、②無償提供に至った経緯、③無償提供の態様、④これらに対する一般人の評価等、諸般の事情を考慮し、社会通念に照らして総合的に判断する。
  • 本件の結論:本件利用提供行為は、一般人の目から見て、市が特定の宗教に特別の便益を提供し援助していると評価されてもやむを得ない。したがって憲法89条に違反し、ひいては20条1項後段にも違反する。
  • 怠る事実の違法性:撤去以外に、違憲性を解消する合理的で現実的な手段(譲与、有償譲渡、適正な対価での貸付け等)がある場合には、撤去・明渡しを請求しないことは直ちに違法とはならない。違法となるのは、他の手段の存在を考慮してもなお、請求しないことが財産管理上の裁量権の逸脱・濫用と評価される場合に限られる。原審は、この点を審理せず、釈明権も行使しなかったから違法である。

判決文から

「当該宗教的施設の性格,当該土地が無償で当該施設の敷地としての用に供されるに至った経緯,当該無償提供の態様,これらに対する一般人の評価等,諸般の事情を考慮し,社会通念に照らして総合的に判断すべきものと解するのが相当である。」

本判決の判断基準。目的効果基準の文言がない点が重要

「この氏子集団は,宗教的行事等を行うことを主たる目的としている宗教団体であって,寄附を集めて本件神社の祭事を行っており,憲法89条にいう「宗教上の組織若しくは団体」に当たるものと解される。」

89条の「宗教上の組織若しくは団体」該当性のあてはめ

「一般人の目から見て,市が特定の宗教に対して特別の便益を提供し,これを援助していると評価されてもやむを得ないものである。」

違憲判断の核心となる一般人の評価

「本件において,当初の動機,目的は上記評価を左右するものではない。」

世俗的な当初目的があっても違憲とした点

「それが違法とされるのは,上記のような他の手段の存在を考慮しても,なお上告人において上記撤去及び土地明渡請求をしないことが上告人の財産管理上の裁量権を逸脱又は濫用するものと評価される場合に限られるものと解するのが相当である。」

怠る事実の違法性を裁量の逸脱・濫用で判断する規範

この解説は AI が作成しています。判決全文に基づいて書き、別の AI が全文と照合して確認していますが、誤りが残っている可能性があります。 判決文の引用は全文と一字一句照合したものだけを載せています。大事な点は判決全文で確かめてください。