最決平成21年6月30日
強盗の着手前に現場から離脱しても、一方的に告げて立ち去っただけでは共謀関係は解消せず、強盗致傷の共同正犯となる。
出題:司法H24・司法R4・司法R6・予備R6
- 裁判所
- 最高裁判所第三小法廷
- 事件番号
- 平成19(あ)1580 住居侵入,強盗致傷被告事件
- 裁判
- 決定・棄却
- 判例集
- 刑集 第63巻5号475頁
- 参照法条
- 刑法60条,刑法130条前段,刑法236条1項
判示事項・裁判要旨
裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)
判示事項
共犯者が住居に侵入した後強盗に着手する前に現場から離脱した場合において共謀関係の解消が否定された事例
裁判要旨
共犯者数名と住居に侵入して強盗に及ぶことを共謀した被告人が,共犯者の一部が住居に侵入した後強盗に着手する前に,見張り役の共犯者において住居内に侵入していた共犯者に電話で「犯行をやめた方がよい,先に帰る」などと一方的に伝えただけで,被告人において格別それ以後の犯行を防止する措置を講ずることなく,待機していた現場から上記見張り役らと共に離脱したなどの本件事実関係の下では,当初の共謀関係が解消したとはいえない。
解説
事案
被告人は、以前にも共犯者らと民家に侵入して強盗を行ったことがあった。本件では誘われて自動車で現場に赴き、下見をしたうえ、共犯者7名と次のように共謀した。被害者方の明かりが消えたら共犯者2名が屋内に侵入し、内側から鍵を開けて侵入口を確保する。そのうえで被告人を含む他の共犯者らも侵入して強盗に及ぶ。
午前2時ころ、共犯者2名は住居に侵入し、ドアの施錠を外して侵入口を確保した。強盗に着手する前、見張り役は現場付近に人が集まってきたのを見て発覚をおそれ、屋内の共犯者に電話した。「早くやめて出てきた方がいい」と言ったが「もう少し待って」と言われたため、「危ないから待てない。先に帰る。」と一方的に伝えて電話を切った。見張り役は、被告人ともう1名が強盗に及ぶべく待機していた自動車に乗り込み、3名は話し合って被告人の運転で立ち去った。
屋内の2名はいったん外に出て、被告人らが立ち去ったことを知った。それでも、残っていた共犯者3名と共にそのまま強盗を実行し、その際の暴行で被害者2名を負傷させた。
争点
- 強盗の実行の着手前に現場から離脱した共謀者について、当初の共謀関係が解消したといえるか
- 離脱後に残余の共犯者が行った強盗致傷について、離脱者も共同正犯の責任を負うか
判旨
結論:共謀関係の解消を否定し、被告人に住居侵入罪のみならず強盗致傷罪の共同正犯の成立を認めた原判断を正当とした。
考慮された事情
- 共犯者の一部が既に住居に侵入していた。
- その後、見張り役が屋内の共犯者に電話で「犯行をやめた方がよい、先に帰る」などと一方的に伝えただけだった。
- 被告人は、格別それ以後の犯行を防止する措置を講ずることなく、見張り役らと共に離脱したにすぎない。
- 残された共犯者らはそのまま強盗に及んだ。
判断:以上の事実関係の下では、離脱が強盗の着手前であっても当初の共謀関係は解消していない。その後の強盗も当初の共謀に基づくものとされた。次の事情があっても、この結論は変わらないとした。
- 被告人が見張り役の電話内容を認識したうえで離脱したこと
- 残された共犯者らが被告人の離脱を後に知ったこと
答案用の規範:共謀者が離脱した場合、着手前であっても、それ以後の犯行を防止する措置を講ずることなく一方的に離脱したにすぎないときは、当初の共謀関係は解消しない。その後の他の共犯者の犯行は当初の共謀に基づくものとして、離脱者も共同正犯の責任を負う。
判決文から
「被告人において格別それ以後の犯行を防止する措置を講ずることなく待機していた場所から見張り役らと共に離脱したにすぎず,残された共犯者らがそのまま強盗に及んだものと認められる。」
防止措置の欠如が解消否定の決め手
「被告人が離脱したのは強盗行為に着手する前であり,たとえ被告人も見張り役の上記電話内容を認識した上で離脱し,残された共犯者らが被告人の離脱をその後知るに至ったという事情があったとしても,当初の共謀関係が解消したということはできず」
着手前・離脱の認識があっても解消否定
「その後の共犯者らの強盗も当初の共謀に基づいて行われたものと認めるのが相当である。」
残余者の犯行を当初の共謀に帰属させる
「被告人が住居侵入のみならず強盗致傷についても共同正犯の責任を負うとした原判断は正当である。」
結論:強盗致傷まで共同正犯
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