横浜市保育所廃止条例事件
特定の市立保育所を廃止する条例の制定行為に処分性を認めた。ただし保育の実施期間の満了により訴えの利益は失われたとした
出題:予備H24・予備H29・予備R4
- 裁判所
- 最高裁判所第一小法廷
- 事件番号
- 平成21(行ヒ)75 横浜市立保育園廃止処分取消請求事件
- 裁判
- 判決・棄却
- 判例集
- 民集 第63巻9号2124頁
- 参照法条
- 横浜市保育所条例(昭和26年横浜市条例第7号)1条,横浜市保育所条例の一部を改正する条例(平成15年横浜市条例第62号),児童福祉法24条1項,児童福祉法24条2項,児童福祉法24条3項,地方自治法149条7号,地方自治法244条の2第1項,行政事件訴訟法3条1項,行政事件訴訟法3条2項
判示事項・裁判要旨
裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)
判示事項
市の設置する特定の保育所を廃止する条例の制定行為が抗告訴訟の対象となる行政処分に当たるとされた事例
裁判要旨
市の設置する特定の保育所を廃止する条例の制定行為は,当該保育所の利用関係が保護者の選択に基づき保育所及び保育の実施期間を定めて設定されるものであり,現に保育を受けている児童及びその保護者は当該保育所において保育の実施期間が満了するまでの間保育を受けることを期待し得る法的地位を有すること,同条例が,他に行政庁の処分を待つことなくその施行により当該保育所廃止の効果を発生させ,入所中の児童及びその保護者という限られた特定の者らに対して,直接,上記法的地位を奪う結果を生じさせるものであることなど判示の事情の下では,抗告訴訟の対象となる行政処分に当たる。
解説
事案
横浜市(被上告人)は4つの保育所(本件各保育所)を設置・運営していたが、これらを民営化の対象とした。平成15年12月18日の市議会の議決を経て、保育所の名称・位置を定める横浜市保育所条例の別表から本件各保育所の部分を削除する改正条例(本件改正条例)を制定し、同月25日に公布した。同条例は平成16年4月1日に施行され、これにより本件各保育所は廃止された。
上告人らは、本件各保育所で保育を受けていた児童またはその保護者である。入所承諾時に、それぞれ終期を定めた保育の実施期間の指定を受けていた(市の規則上、入所申込書・入所承諾書に保育の実施期間を記載する)。上告人らは、条例の制定行為が、自ら選択した保育所で保育を受ける権利を違法に侵害すると主張し、その取消し等を求めた。
原審は、公の施設の設置・廃止に関する条例は一般的規範の性質を有し、処分と同視できる事情もないとして、処分性を否定し、本件訴えのうち条例制定行為の取消しを求める部分を却下すべきものとした。
争点
- 特定の保育所を廃止する条例の制定行為は、抗告訴訟の対象となる「行政庁の処分」(行政事件訴訟法3条2項)に当たるか
- 保育の実施期間が満了した場合、条例制定行為の取消しを求める訴えの利益は存続するか
判旨
結論:本件改正条例の制定行為は、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たる。原審の処分性否定は法令の解釈適用を誤ったものである。もっとも、上告人らに係る保育の実施期間はすべて満了しているから、訴えの利益は失われた。したがって却下の結論は是認でき、上告棄却とした。
規範:
- 条例の制定は議会の立法作用に属するから、一般的には処分に当たらない。
- しかし、次の条件を満たす条例の制定行為は、行政庁の処分と実質的に同視し得る。
- 条例が他に行政庁の処分を待つことなく、その施行により直接に効果を発生させること
- その効果が、限られた特定の者らに対して、直接、法的地位を奪う結果を生じさせるものであること
- さらに、取消判決・執行停止決定に第三者効(行政事件訴訟法32条)がある取消訴訟で争わせることに合理性があることも、処分性を肯定する根拠となる。
判決文から
「特定の保育所で現に保育を受けている児童及びその保護者は,保育の実施期間が満了するまでの間は当該保育所における保育を受けることを期待し得る法的地位を有するものということができる。」
侵害される「法的地位」を法の仕組みから導いた部分
「条例の制定は,普通地方公共団体の議会が行う立法作用に属するから,一般的には,抗告訴訟の対象となる行政処分に当たるものでないことはいうまでもないが」
原則は処分性否定であることの確認
「その施行により各保育所廃止の効果を発生させ,当該保育所に現に入所中の児童及びその保護者という限られた特定の者らに対して,直接,当該保育所において保育を受けることを期待し得る上記の法的地位を奪う結果を生じさせるものであるから」
直接性・特定性という処分性肯定の核心
「その制定行為は,行政庁の処分と実質的に同視し得るものということができる。」
条例制定行為の処分性を認めた結論部分
「処分の取消判決や執行停止の決定に第三者効(行政事件訴訟法32条)が認められている取消訴訟において当該条例の制定行為の適法性を争い得るとすることには合理性がある。」
紛争解決の合理性・実効的救済の観点
「現時点においては,上告人らに係る保育の実施期間がすべて満了していることが明らかであるから,本件改正条例の制定行為の取消しを求める訴えの利益は失われたものというべきである。」
処分性肯定でも訴えの利益消滅で棄却
この解説は AI が作成しています。判決全文に基づいて書き、別の AI が全文と照合して確認していますが、誤りが残っている可能性があります。 判決文の引用は全文と一字一句照合したものだけを載せています。大事な点は判決全文で確かめてください。
